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CIO Forum 2018 開催レポート

 

 

 

開催日:2018年 3月 7日(水)

主催:株式会社ビジネス・フォーラム事務局
特別協賛:日本アイ・ビー・エム株式会社


 

 2018年 3月7日、東京・赤坂インターシティコンファレンスにて、「CIO Forum 2018」(株式会社ビジネス・フォーラム事務局主催)を開催致しました。今年で2回目の開催となる本フォーラム。IT部門主導の企業変革を実現する人財、組織、そして先端IT活用の勘所について、先進企業のCIO、ITリーダーの方々による講演とディスカッション、そして交流会を通じて、活発な議論が展開されました。当日は日本企業のIT部門の経営層、管理職の方々を中心に、定員を上回る多くのお客様にご来場をいただきました。

オープニング
株式会社ビジネス・フォーラム事務局
プロデューサー 

北村 将 (企画担当者)

特別ゲスト講演Ⅰ

ダイキン工業株式会社
IT戦略専任部長
大西 一彦
基調講演

日本アイ・ビー・エム株式会社
執行役員 戦略コンサルティング リーダー
池田 和明
特別ゲスト講演Ⅱ

大和ハウス工業株式会社
上席執行役員 情報システム部長
加藤 恭滋
特別ゲスト講演Ⅲ

全日本空輸株式会社
業務プロセス改革室 イノベーション推進部 部長
野村 泰一
パネルディスカッション

【パネリスト】
株式会社リコー
執行役員 デジタル推進本部長
石野 普之

 

【パネリスト】
株式会社ストライプインターナショナル
執行役員兼最高情報責任者(CIO) ITシステム部 部長
佐藤 光広

 

【パネリスト】
味の素株式会社
情報企画部長
古川 昌幸

 

【パネリスト】
日本アイ・ビー・エム株式会社
パートナー 技術戦略コンサルティング
森 祐之

 

【モデレーター】
株式会社ディー・エヌ・エー
経営企画本部 IT戦略部 部長
成田 敏博

 

※ご登壇者のご所属、お役職は2018年3月時点のものです。

オープニング
【IT部門主導の企業変革を実現する人財、組織、 そして先端IT活用の勘所】

 

IT部門こそ、経営に資するイノベーション集団へ


株式会社ビジネス・フォーラム事務局 プロデューサー  北村 将

 

 

 オープニングでは、本フォーラム企画担当の北村より、開催背景について説明が行われました。

 IoT、AI(人工知能)、ロボットをはじめとしたIT技術の進化が著しい昨今、デジタルテクノロジーを武器に産業の垣根を越えてマーケットシェアを奪う企業も出現しており、ITによる企業変革はまさに待ったなしの状況です。
 しかしその重要性を認識しつつも、IT部門による企業変革が決して容易ではないことも、参加者の皆様にご協力いただいた事前のアンケート結果から明らかになっています。その結果は、IT部門主導の企業変革が「非常に進んでいる」もしくは「進んでいる」との回答した人は全体の約3割にとどまり、7割近くが「全く進んでいない」もしくは「進んでいない」というものでした。
 IT部門主導の企業変革を実現するためには、「IT部門こそが自らの存在をイノベーションの創出を担う組織と再定義し、必要であれば自己否定も辞さない覚悟でIT部門自身の変革に挑む必要があるのではないでしょうか」と述べ、問題提起がされた。
 今回のフォーラムはIT部門主導による企業変革を実現するために必要な「人財」、「組織」、そして「先端IT活用」の3つの視点から、先進企業のCIO、ITリーダーの方々の講演やパネルディスカッションを通じて議論していくものです。「日本企業のIT部門が経営に資するイノベーション集団になるための一助に本フォーラムがなれれば幸いです。」と企画への思いを述べてオープニングの挨拶を締めくくりました。

特別ゲスト講演1【「デジタル経営」を先導するIT部門の新たな役割】

 

ダイキン工業における
IT部門改革と実行力のある組織づくり
~「攻め」と「守り」のバランスの中で~


ダイキン工業株式会社  IT戦略専任部長  大西 一彦

 

 

  「真のグローバルエクセレント企業」の実現を目指して変革を続けるダイキン工業では、IT部門の立ち位置を大きく変革する「IT機能改革」を進めています。これまではシステム化による業務効率化を主務としていた「守り」だけのITを、主導的、能動的に動き、経営に価値を生む「攻め」のITとしても機能させるにはどうしたらいいのか。「ダイキン工業におけるIT部門改革と実行力のある組織づくり」と題し、マインドチェンジも含めた6つの施策を軸にしたIT機能改革の全容や、グローバル製造業として「デジタル経営」を先導するIT部門の新たな役割についてご講演いただきました。

IT部門主導による新たなビジネスモデル創出を目指して

 

 

 2014年2月。ダイキン工業の経営会議の場でIT部門に対して、経営側からある要請がありました。それは、「経営的視点に踏み込んだITのビジネスモデルは事業部門からは出てこない。そこで、最先端のIT技術を知るIT部門が能動的に変革を推進してほしい」といったものでした。具体的に取り組むべきアジェンダとしては、「ITをいかに利用して経営の効率化をしていくか」「ITにより顧客・利益をどう創出していくか」「事業を拡大するのにITの“最先端技術”をいかに駆使していくのか」の3つが挙がりました。

 

 しかしながら、従来のIT 部門は事業部門のニーズを本当の意味でキャッチアップできていないところがあったと大西氏は振り返ります。IT部門は事業部門からの要請に基づいて、システム作りをしていればいいというくらいの考え方でした。そこで、このままではいけないと、経営側からの要請に応えるためにも、現在のIT機能のどの部分にギャップがあるのかを、紐解いていきました。

 

そして、同社におけるIT機能の課題として以下の項目が挙がりました。

 

・「事業の競争力を強化するような“攻め”のITテーマを生み出せていない」

・「中期でのIT推進に向けた戦略立案機能、テーマに対する投資実行のコントロール機能、

  さらには ITのリスク、コスト、人材のマネジメント機能等、ITの戦略企画機能が弱い」

・「今後生み出していく中間ITテーマをやりきる為の体制(構え)ができていない」

・「自律的にITテーマを推進できない海外域があり、実行スピードが遅い」

 

 このように具体的に課題を挙げ、解決に向けた議論を進めた結果、IT部門が自律的に動き、経営に確かな価値提供ができる組織へと変革するための方向性を見出しました。そして、ITの業務プロセス中のコア業務を中心に6つのポイントで強化を行う「IT機能改革(強化)」を進めることになります。

6つの施策によるIT機能改革で、経営のバリュークリエイターに

 

 

IT機能の改革のために挙げられた施策は以下の6つです。

 

1.IT創発機能の強化

2.IT戦略企画機能の強化

3.部門の業務改革力強化

4.地域ITとの連携強化

5.IT実装のスピードアップ&コストダウン

6.IT人材の強化

 

1.「IT創発機能の強化」:最新のテクノロジーを武器としたビジネス改革の構想、企画を創出することです。IT部門がどこへ向かうのか、自分たちの立ち位置はどこにあるのか、自分自身のマインドチェンジも含め、新たなことを生み出す組織への改革を推進することで、コーポレートIT機能の強化を図ります。

 

2.「IT戦略企画機能の強化」:中期経営計画を支えるIT戦略の立案とIT創発機能で生み出されたテーマ推進に向けた投資のコントロールやグローバルでのヒト・モノ・カネのマネジメント機能を強化することです。

 

3.「部門の業務改革力強化」:事業部門のITグループ要員を意味します。IT部門から事業部門の企画部門へ、マインド形成した人材を送り、事業部門が自分たちの変わりゆく姿を見据えて業務改革創出に専念するため、IT実装をIT部門に任せます。

 

4.「地域ITとの連携強化」:コーポレートITと地域ITの基本的な役割を明確にした上で、各地域ITのレベルに合わせてコーポレートITとの連携強化を推進します。

 

5.「IT実装のスピードアップ&コストダウン」:IT部門がテーマ実行のスピードアップと確実なテーマ実行(品質確保等)を行うとともに、コストダウンを図ります。

 

6.「IT人材の強化」:先の5つの強化や今後生み出されるテーマをやり切るため、IT実装の内製化を高めて行くため、IT人材の大幅な補強および育成を行います。

 

約3年間に及ぶこれら取り組みの結果、新設したIT創発部隊がSIer企業との協業で63テーマを創出するなど、徐々に効果を上げています。大西氏は最後にこのように締めくくりました。「従来、我々はシステムビルダーと言っていました。今は、もう少しサービスプロバイダーになっていこうと言っています。最後には、バリュークリエイターという形で、経営においての価値をいかに創出していくか。そのようなことが自分たちの役割と考え、これからも日々努力を重ねていきます」。

ダイキン工業株式会社
IT戦略専任部長

大西 一彦


1982年ダイキン工業入社、国内生産管理システム構築に従事。1986年より海外生産拠点の立ち上げでタイ、欧州等に3年半駐在(販売・物流、生産、会計の管理業務やインフラ構築まで何でも行う)。1998年情報戦略企画部隊の課長となり「IT戦略企画」の苦悩に突入するも、IT戦略企画やグローバルITガバナンスを牽引。2006年よりIT推進室長としてIT改革プロジェクトを次々と繰り出し、「次世代IT」ビジョンを模索、先取実施。2012年よりIT推進部長として「二流の戦略と一流の実行力」に磨きをかける。2017年12月より現職。

基調講演【最新テクノロジーと自律型組織】

 

グローバル経営層スタディからの示唆


日本アイ・ビー・エム株式会社 執行役員 戦略コンサルティング リーダー

池田 和明 氏

 

 

 

 IBMは14年間にわたり、“グローバル経営層スタディ”という取り組みを実施。世界中の経営者にインタビュー調査を行い、そこから得られる洞察を発表しています。2017年は対面で2047人、電話で1万807人にインタビューを実施し、ブロックチェーン、AI、 IoTなどのテーマでレポートを発表しました。本講演では「グローバル経営層スタディからの示唆」と題し、これからのCIO、ITリーダーがもつべき視点、データの重要性、既存企業が行うべきことなどについて、ご講演いただきました。

「守成からの反攻」、業界のリーダー企業が主導する創造的破壊

 

 

 講演の冒頭、池田氏は2017年の“グローバル経営層スタディ”から得られた、いくつかのデータが示しました。「外部的経済要因の中において、御社に最も大きな影響を与えるものは何か」。結果の上位3つを見ると、1番は「市場の変化」、2番目には「自社に影響を与えるテクノロジーの動向」、そして3番目には「人材スキル」という結果でした。注目すべきは、人材スキルの項目が急速に上がってきたことです。変化が激しいこの時代に適応していくための人材が自社内で不足しているとともに、外部から見つけることも難しいというコメントが相当数増えているとのことです。

 

 次は、「業界の中で創造的破壊を主導している企業はどこか」に対する回答です。2015年の回答では、Apple 、Googleといったデジタルジャイアントといわれる企業がトップで、2番目はスタートアップでした。それが2017年になると状況が大きく変わります。トップは業界のリーダー企業で、2番目がデジタルジャイアント、3番目が他業界からの参入企業、その次がスタートアップという結果になりました。

 

 では、この2年の間に何が起きたのか。池田氏は、「それは既存企業が反攻に転じているため」と述べます。最近の目立った傾向として、魅力的なビジネスモデルや、自社に脅威となるビジネスモデルを持つ新規参入者が出てきたら、その企業を買収することが当たり前のように行われるようになりました。自社が展開している物理世界のビジネスモデルとデジタル世界のビジネスモデルを融合させる動きがあります。物的資産にセンサーが搭載され、動作の状況や周辺の環境情報をデジタルデータに変換してインターネットで送り、コンピューターが処理して返ってきたデータで機械が動くIoTの時代です。このIoT という新たな刺激によって、デジタルだけではなく、デジタルとフィジカル(物理)の両方の世界にまたがる、もしくはそれらをつないで活動できる企業に、主導権が移りつつあります。また、これまでのビジネスで蓄積してきた顧客基盤や顧客データは新規参入企業にはなかなか手に入りません。業界のリーダーはそれに気づき、反撃を始めているといえるのではないでしょうか。

反攻のための4つのポイント

 

 

 池田氏は、既存企業が反攻に転ずるために必要なポイントについて、こう提案します。

 

・「創造的破壊を自社に包含するために、デジタルテクノロジーの活用し、

  必要に応じてスタートアップ企業を取り込でいく。

  そして既存の顧客基盤と顧客データを保有する強みを活かすこと」

・「物的資産とデジタルサービスとを連動させる価値を探る。そして顧客接点をおさえたうえで、

  他プラットフォーマーを活用すること」

・「事業のあらゆる局面で顧客と共創する。そのためにデータ分析によるアプローチと、
  デザイン思考によるハイタッチなアプローチを両立させること」

 

そして、最後にこのように締めくくりました。「デジタル文化の下での新しい仕事の進め方を、経営者の方々が体験し、身をもって理解する。そして、この環境下で戦力になる社員を特定し、更なる能力開発に投資するとともに、徹底的に任せていくことが必要だと考えます」。

日本アイ・ビー・エム株式会社
執行役員
戦略コンサルティング リーダー

池田 和明


事業戦略策定、組織改革を専門領域とし、同分野で20年以上のコンサルティング経験を持つ。大手企業に対し責任者として同コンサルティングを多数実施してきた。近年は、成長戦略策定、新規事業戦略策定、先端アナリティクスによる競争優位性の構築、 ソリューション事業戦略、更なるグローバル展開のための戦略・組織・オペレーションをテーマにしたプロジェクトを手がけている。 1996年にPwCコンサルティングに参画、2001年に同社のパートナーに登用。2002年のIBMによるPwCコンサルティング買収によりIBMコンサルティング事業部門に参画。 早稲田大学大学院創造理工学研究科の非常勤講師 として、『企業戦略論』を担当。

特別ゲスト講演2【IT経営と組織づくり】

 

大和ハウス工業における
攻めのIT経営を推進するための体制と人財


大和ハウス工業株式会社 上席執行役員 情報システム部長  加藤 恭滋 氏

 

 

 

 「無いものは自分たちで作り出さねばならない」という企業アイデンティティのもと、強みである住宅をはじめ、商業施設、医療・介護施設、農業、ロボットなど、さまざまな事業にチャレンジし続ける大和ハウス工業。業績を着実に伸ばし、10兆円規模の売上という大目標達成に向けて突き進んでいます。そのような中で、IT部門がイノベーションを創出する組織になるために必要なことは何か、そのために同社ではどのような改革を進めてきたのか等、「大和ハウス工業における攻めのIT経営を推進するための体制と人財」と題し、ご講演いただきました。

経営に資するIT部門に向けた構造改革の実践

 

 

 

 大和ハウス工業では、2012年に完了したERP導入プロジェクト後、IT部門において様々な問題が表面化しました。まず、「攻めのIT」と「守りのIT」の対立構造が浮き彫りになったことが挙げられます。IT部門は全体最適化を考えますが、各事業部にはそれぞれが要望する事案があり、それを実行していると部分的な最適化となってしまいます。この問題を解決するため、「全体最適化とマルチタスク解消を目指す改革」、「プロジェクトマネジメントの改革」という2つの改革にチャレンジし、全体最適化と部分的な最適化の両方を獲得する方法を実行することになりました。

 

 まず、開発の専任化に取り組みました。企画を専任化する発想はよくありますが、我々が着手したのは開発を専任化することです。運用しなければ企画はできないという考えのもと、運用した上で企画し、作りたいものがあったら開発プロジェクトとして管理をするところに引き継ぐという組織改革を行いました。また、新たに情報企画室という組織を作り、プロジェクトが正しく進んでいるかを管理、全体最適化とマルチタスク解消を目指した改革を進めました。ITの開発プロジェクトは不確実性が高く、思うように進捗しないことがよくあります。それを解消するため、優先順位を明確に決め、日数にバッファを持ち、それを“見える化”するなど、プロジェクトマネジメント改革を行いました。これらの改革を実施した結果、以前は大小合わせて350件程度の処理件数だったものが900件程度にまで向上し、約2.5倍という効果を上げています。納期においても、納期遵守率が50%程度から97%程度にまで上昇しています。

予測困難な時代の中で企業成長に寄与するIT組織を目指して

 

 

 加藤氏はこれからの時代におけるIT組織のあるべき姿についても言及します。未来を支える最も重要な要素の一つは「技術革新」です。そこで、IT部門が組織として技術革新を実現するためにも、自らシステム開発を主導するような「IT技術者」に回帰すべきではないでしょうか。昨今、ITはどちらかというとスマートな仕事となり、IT部門もコンサルティング業務に近づいています。しかしながら、加速するIT技術の進化をキャッチし、自社の競争力へ変換するには、このコンサル的な仕事やスキルだけではどうにもなりません。次に重要と考えていることは、「マネジメント」です。部門を率いるリーダーは、短期的な成果を求めず、高い目標に挑戦し、常に学習を求め続けること。挑戦に対し完璧を求めず、失敗を許容する風土づくりを主導していくべきと考えています。また、チャレンジできる場所として「砂場環境」を作ることも効果的です。これからの成長を担う若手・中堅に、様々なチャレンジをして着実に成果を出してもらい、新たな技術を取得して成長してほしいと願っています。

 

 加藤氏は最後にITリーダーの役割についても触れました。「新たな時代に対応できる技術集団を作っておかないと、おそらく取り残されます。予測ができない時代に会社が継続的に成長し続けるため、明確なビジョンをみんなに示さなくてはいけません。我々はどこに向かうのか、こういうことをやるぞ、こういうことをやりなさいと、明確に示すことが必要です」。そして最後に、人財育成や組織づくりへの強い思いも含めてこのように講演を締めくくりました。「失敗を許容する。トライアンドエラー。どんどんやらせていく。その回転を高速化していくことです。その結果として、若手にはマルチタレントになってほしい。いろいろなことに対応できる人財になってほしい。もちろん中堅が学び直し、キラキラした若手の時代を思い出してほしいということもあります。過去の成功にとらわれず、危機感をもってチャレンジする組織を作り上げていきます」。

大和ハウス工業株式会社
上席執行役員 情報システム部長

加藤 恭滋


1978年3月に香川大学経済学部を卒業、同年4月に大和ハウス工業入社。経理部門に配属され、2000年問題の対応のため会計システム刷新のプロジェクトマネージャーを担当。2008年J-SOX推進室長としてERP導入プロジェクトの責任者を務め、2010年情報システム部長に就任。2011年執行役員、2017年上席執行役員に就任。現在に至る。1954年7月31日生まれ。