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Innovation Management Seminar 2013

Innovation Management Seminar 2013
世界で戦う日本企業の競争力(組織・モノ・コトづくり)

 

 

2013年2月4日、都内で「イノベーション・マネジメント」をテーマにセミナーを実施しました(主催:株式会社ビジネス・フォーラム事務局、後援:アーサー・D・リトル(ジャパン)株式会社)。

 

グローバル化が進み、アジアを始めとする新興国での市場が急拡大する中、日本企業は生き残りをかけ、新しい市場を創造するための組織・モノ・コトづくりの視点による「新しい価値づくり」について、世界を舞台に一線で活躍される識者、先進企業のリーダーに“熱く”語っていただきました。

最初に、登壇したアーサー・D・リトル(以下、ADL)でアソシエート・ディレクターを務める川口盛之助氏は、「価値とイノベーションとテクノロジーの未来」というテーマで、技術的な視点から価値がどのように変容していくのか、そして日本の産業はどこへ進むべきか、独自の知見を披露した。

Innovation Management Seminar 2013

商品の価値をマッピングし、
進化の方向性を探る


製品、サービス、市場価値観で成熟化を迎えた今、日本の技術・産業は大きな岐路に立たされている。ADLの川口氏は、それぞれの領域を、萌芽、拡大、成熟というライフサイクルの視点で、価値の変化に注目すれば、イノベーションとテクノロジーの未来を見出せると話す。

川口氏が挙げたのは、「取扱い製品の成熟化」「サービス領域の成熟化」「市場価値の成熟化」という3つのポイント。いずれも、萌芽・拡大期・成熟期の段階を踏む。まず、製品で考えた場合、日本がこれまで築いてきた製品技術は、「メカトロニクス(車産業や総合電機メーカーなどの製造業)による価値の創造」だという。ただ、こうした製品は成熟化に伴い、次第に競争力を失いつつある。

 

また川口氏は、製品という人工物を、“価値マッピング”すると分かりやすいと説明する。日本のメカトロニクス技術は、部品やセット品という縦軸と、設計構造的やプログラム的という横軸がクロスする中間領域にマッピングできるが、この領域が成熟化した今、それぞれの軸が進化する方向を模索するしか発展の可能性はないと言う。「左下へ行くならより基礎的な研究へ、左上へ行くならより感性を取り入れた世界へ、右下へ行くならインフラへ、右上に行くなら情報サービスへ向かいます」。具体的には、左下ならiPS細胞や青色LED技術、左上なら1粒1万円のいちご、右下ならば植物工場や上下水道ビジネスのようなインフラ、右上ならGoogleやFacebookのような世界だ。

 

日本は、こうした4つの方向性を意識して踏み出すことが重要であり、そのためには、先立って同じような価値創造を行ってきたドイツや、後に続く韓国や台湾、そして日本自体の構造も、さらに研究する必要があるという。また、TwitterやFacebookなどの成功例があるように、アベイラブル(誰でも利用可能)な技術を利用して、何を実現するかが問われている時期だとも指摘する。

Innovation Management Seminar 2013

新たな価値を創造する“弱気を救う機能”

 

次に、「サービス領域の成熟化」という視点で考えた場合、時代の流れは、人やモノ、端末といったアトム性の高いものから、情報やインフラといったビット性の高いものへ向かっているという。例えば、水処理技術に強い日本企業より、上下水道や貯水システムを握るフランス企業のほうが多くの富を握ることができる。ネットの世界でも、根元を押さえたGoogleやYahoo!が富を握ることができた。この点でも決定的に遅れをとる日本。

 

その一方で、日本企業が進んでいるものもある。例えば、実際に商品を販売するだけではなく、コミュニティ機能も持たせたヤクルトの事業モデルのような“ニア・フィールビジネス”は、サービスの成熟から抜き出るためのヒントになるという。

 

最後に、「市場価値観の成熟化」から捉えた場合、欧米に比べ急速に高度成長して財産を築きながらも少子高齢化社会に突入した日本こそ、幼児や高齢者などの“弱きを救う機能”に着目すべきで、「価値の変化にしっかり目を向けることで、新たな創造を生み出すイノベーションとテクノロジーの未来が見えてくる」と締めくくった。

Innovation Management Seminar 2013

世界にはばだくカルビー

~しくみを変えろ!

 

続いての特別講演では、約10年間に亘り優良企業ジョンソン&ジョンソンを社長として率いてきたマネジメント経験を生かし、現在は世界に目を向けたビジネスを着実に展開するカルビーの代表取締役会長CEO松本晃氏が登壇し、世界で勝つための経営者の知見を披露し、満員(150名)の聴講者を魅了した。

 

成熟した世の中で、企業が生き残るためには、仕組みを変えることが必要だと話す。ポイントは大きく2つ。「足元の業績を上げること」と、「会社としての夢を持つこと」だ。「特に後者は重要で、会社の未来がなければ社員のモチベーションが上がりません。『DREAMS COME TRUE』という気持ちを持って経営を進めることは非常に大事」。

 

そこで、同社は、時間と労力がかかる中期計画の作成を止め、毎年5月に約50人の幹部を集め、7年後の夢を語る方法に変えた。「例えば、昨年の売り上げは2,000億円だったが、7年後は5,000億円の売り上げ目標を立てる。差額である3,000億円というホワイトスペースを、どのように埋めるのかという思考に切り替えました。この方法は夢を抱かせてくれるし、経験から言っても達成率は高い」と松本氏。

Innovation Management Seminar 2013

同社は6つの成長戦略を掲げる。

 

① 海外戦略
② 画期的新商品の開発
③ 主力商品(ポテトチップス)のシェアを57%から70%に拡大
④ ペプシコとの提携拡大
⑤ M&A
⑥ 新規ビジネス

 

だ。特に海外展開は、同社が生き残る上で必須だと松本氏。その理由を、「スナック市場は緩やかな下降線を描き、残念ながらこれ以上拡大しません。理由の1つは、食品業界のデフレは簡単に収まらないこと。2つ目は、少子化により、一番の顧客がこれ以上増えないこと。だが、失望する必要はありません。海外に目を向ければ大きな市場があります」と語る。現在、同社が海外市場に占める割合は全体の売り上げの3%だが、2020年には30%まで拡大させることを目指す。

Innovation Management Seminar 2013

海外のニーズを読み取り、

従来の仕組みに囚われない

 

では、日本企業が海外で成功するための秘訣とは何か。松本氏は、日本のビジネススタイルをそのまま輸出しても成功しないと前置きし、

 

① 「コスト」の考え方
② 外国の企業に負けない「スピード」
③ 徹底した「ローカリゼーション」
④ 提携することで力が発揮できる「パートナー」

 

という4つのキーワードを挙げた。

 

「例えば、日本で商品化する場合、コストと利益を計算して売価を決める。しかし、海外で商売する際は、まず、「この国の国民は、いくらのお金を支払ってくれるのか」という売値からリサーチしなければいけない。そこから利益を引いたコストを出し、初めて生産可能か否かを考える。そこで、利益が出ないものはやりません」と松本氏。

 

海外に市場を広げるために、走り出したばかりの同社だが、今後、乗り越えるべき壁はたくさんあると話す。そのためにも、多様性を松本氏は意識する。早速、女性の役員を増やし、新入社員の3分の1を外国人にするなど、松本氏がジョンソン・エンド・ジョンソン時代に培った経験とノウハウを生かして、優れた実行力を発揮する明確なビジョンを述べて特別講演を終了した。

Innovation Management Seminar 2013

そしてプログラムの最後では、アーサー・D・リトル(ジャパン)ディレクターの森洋之進氏が、富士フイルムとGEヘルスケア・ジャパンのイノベーション戦略の勝ちパターンを検証し、「コア技術の再定義」「グローバル市場を意識した製品開発」「新たなバリューチェーンを生むためのビジネスモデルの開拓」の3つにあると定義した。

 

そのうえで、富士フイルム取締役常務執行役員の戸田雄三氏、GEヘルスケア・ジャパン執行役員技術本部長の星野和哉氏のディスカッション。日本企業の競争力を高めるために、モノづくり、コトづくり、組織づくりをどう進めるかをテーマに、白熱した議論が繰り広げられた。

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