2018/09/19 (  水 )

マーケティング担当者インタビュー vol.1

マーケティング担当者インタビュー vol.1

 

アドビ システムズ 株式会社
マーケティング本部
エンタープライズマーケティング
シニアマネージャー Experience Cloud

大湯 道徳 氏

 

B2Bのビジネスにおいて、今後はデジタルマーケティングの活用を外すことはできません。

 

今回、日本オラクル、PTCジャパンなど複数の企業で20年以上に渡りB2Bマーケティングに関わり、第一線で活躍されてきた大湯道徳様に、デジタルマーケティングやマーケティングにおけるイベントの効果的な活用方法、営業とマーケティングの連携などについてお話を伺いました。

大湯様は、早くからアカウントベースドマーケティングの手法を取り入れるなど、革新的なマーケティングを実践。一貫して、営業の生産性をより高め、より質の高いマーケティングリード、オポチュニティをつくる活動をされています。 ビジネス・フォーラム事務局のサービスを利用したマーケティング施策も多数実施され、大きな成果を上げていただいています。

 

 


今、B2Bのビジネスに関わるどの企業も、デジタルマーケティングの活用を考えています。デジタルマーケティングの活用について、大湯様のお考えをお聞かせください。

 

大湯:デジタルマーケティングはマーケティング活動を行う上で市場カバレッジや効率性を考えると今後益々重要になると思います。デジタルおよびデジタル以外のマーケティング活動を今まで行ってきましたが、やはりOffline to Online、Online to Offlineというものをきちんと考えた上で、デジタルマーケティングを行っていくことが一番良いと思っています。そして、デジタルマーケティングを行っていく上で欠かせないのが、ナーチャリングです。資料をダウンロードしても、そのままではリードとはいえません。リードになったとしてもオポチュニティにはならない。その人たちをどうナーチャリングしていくのかが重要になってきます。Online to Offline の考えも取り入れてナーチャリングを行っていく事も1つだと思います。“ナーチャリング”イコール“マーケティングオートメーション”かもしれません。マーケティングオートメーションを使ってしっかりナーチャリングをしていかないと、デジタルマーケティングを活用できないと思います。

 

そうは言っても日本はまだまだというところがあります。ヨーロッパやアメリカでは都市が分散しているので、デジタルマーケティングやオンラインを積極的に活用した方が生産性が高まります。一方、日本の場合は多くの企業が基本的に東京に集中していますし、エグゼクティブの決済が必要な商材に対してはデジタルマーケティングだけでは契約成立が難しいので、face to faceであるイベントも、効率よく使うと良いと思います。

 

大湯様の考える、より良いB2Bマーケティングのあり方や、キーポイントとなる点をお聞かせください。

 

大湯:どのようにお客様にリーチするか。キーポイントとなるのはペルソナです。ターゲットオーディエンスにより手法も変わります。また、「事例が聞けるイベントがあるなら行ってみよう」となるかもしれないし、忙しくて会社から出られない人にはWebかもしれない。それらをどう駆使していくかだと思います。

エグゼクティブにリーチする上でも、今後、Webを含むデジタルマーケティングは外せません。しかし、エグゼクティブの方々はどちらかというと部下に任せて直接触れる機会が少ない。エグゼクティブにリーチしたい場合「こういうソリューションだからこの部門に」「こういう課題を持っているエグゼクティブに」など、ターゲットを決めてビジネス・フォーラム事務局にイベントを依頼し、エグゼクティブの方々に興味をもってもらう機会も用意して、効果を上げていました。

B2Bマーケティングの投資対効果や、マーケティングと営業との連携などについては、どのようにお考えでしょうか?

 

大湯:B2Bマーケティングでの投資対効果は、システムとプロセスが確立しないと見えません。ですから、まずシステムが重要です。例えば、リードトラッキング管理のマーケティングオートメーションと営業支援システムのSFA。マーケティングでつくったものが、最終的に契約成立したのかというシステムと、システムと連携してマーケティングリードをフォローするプロセスがないと、当然、投資対効果は計れません。そのために、マーケティングと営業との連携が必要だと思います。

 

マーケティングと営業との連携で大切なことは2つあります。
1つはマーケティングと営業が会話していくこと。マーケティングアナリティクスによるフィードバックもそうですし、「こういうイベントをやってこうやって活動したけれど、実際のリードはどうだったの?」という会話かもしれません。 もう1つはトップダウンです。営業のトップ、カントリーマネージャー、社長、そういう人達にマーケティングのバリューをきちんと理解してもらい、営業の人たちに落としてもらう事が重要だと思います。

最後にビジネス・フォーラム事務局のサービスを利用したイベントの良さなどあれば、お聞かせください。

 

大湯:やはりエグゼクティブを集客できることが一番の良さです。インダストリーや、部署などのリクエストを伝えて集客してもらえるというのは、1つのバリューだと思います。イベントを開催する時、自社のリストも使って集客するのですが、どちらかと言うと既存のお客様になってしまう。しかしマーケティングとしては、1社でも多くの新しい見込み客をつくることを重視したい。ですから、今まで接点の無いお客様、接点の無い企業を呼んでもらえるのは、大変有り難い。他社でも企画はしてもらえるのですが、集客手法がありません。エグゼクティブに注力して集客できるところは他には無いので、大きく差別化できていると思います。結果として営業の満足度の高いイベントを多数開催できました。

 

B2Bにおけるデジタルマーケティングとイベントの効果的な活用方法について、 長年のご経験から、示唆に富んだ貴重なご意見をいただきました。


大湯様、貴重なご意見をありがとうございました。

インタビューアーからのコメント

 

(長瀬CDOが今回のインタビューで最も強調されたことは、教育でした。CDOと言うと、まずはデジタルトランスフォメーションを担うリーダーとよく言われます。しかし、CDOが一人、掛け声をかけても、それは実現しません。それに対応して組織や社員の能力が求められます。長瀬CDOは、組織としてのデジタルケイパビリティをいかに高めるのかということに、CDOとして意識されているのだと強く感じました。CDOとして必要な能力として、ネットワーキング力を持ち出されたのも、自らデジタルの時代にどのように生きて行くべきかという見本を、社員に提示されているのかもしれませんね。

 

一橋大学商学研究科 教授 / CDO Club Japan顧問
神岡太郎