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CDO Interview vol.3 後編

◆テクノロジーを会社の価値や競争力に結び付ける

◆デジタルテクノロジーを使って、
 会社の変革やビジネスの変革を起こす

◆デジタルトランスフォーメーションを起こす水先案内人

 

株式会社三菱ケミカルホールディングス

執行役員 先端技術・事業開発室 CDO 岩野 和生 氏

前編に続き、株式会社三菱ケミカルホールディングス CDO岩野氏へ、神岡教授からCDOに関しての質問が続きます。

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CDOとして特に重視されていることはございますか?

 

岩野:従来のITのユーザー系の企業でよく勘違いされやすいのが、イノベーションやデジタルトランスフォーメーションを技術だと思ってしまうことです。技術をどう使うかという考えなのですが、それは違います。それは短期的な話です。本当にデジタルテクノロジーで会社をどこまでもっていくかを考えるには、ビジョンとロードマップがあって、マイルストーンがあって、テクノロジーとそのソリューションのポジショニングができていないと、それで終わってしまいます。その経験が伝搬しないのです。我々が水先案内人として意識を変えないといけません。

 得てして、画像解析だったらあそこに、ディープラーニングだったらあそこに、という発想になりがちです。そうやってベンダーを見つければいいのではなく、この技術と考え方でどういうふうに会社をもっていくか。社会に対するどういう新しい見方、流れをつくるのかというところが重要です。これが会社全体にどう影響を及ぼすのか、全体で考えないといけない。そういう意味の、コンピューテーショナル・シンキングがすごく重要です。コンポーネント化とインテグレーション、仮想化やアーキテクチャ的にどう考えるかといったことですね。

 会社の中でのCDOの位置づけはどのようになっているのでしょうか?

 

岩野:ガバナンス上は先端技術・事業開発室に属していて、そこにCIO(Chief “Innovation” Officer)がいる。その下にCMOとCTOとCDOがいるという形です。そしてホールディングスとして、全体的なイノベーションとデジタルトランスフォーメーションを、どう起こすかということをやっています。

 横串的には、我々自身が動いていろいろなところとブレインストーミングを何回もやっています。AI、IoT推進会議を作ってディレクションを議論したり、テクノロジーとか、考え方などのホットトピックスを議論しています。経営者会議でこういうふうにやりたいと発表もしました。今年度前半は事業部の信頼感を勝ち取ることに比率を置いています。できるだけ事業部とかプラントに行って、エンジニアなど、いろいろな人と話すことを強く意識しています。我々が会社のプロジェクト全てに顔を出すわけにはいきません。そこは持続可能な形に持っていかないといけない。それをやるための仕組みを必死になって考えているところです。


 

CDOのチームはどのようになっているのでしょうか?

 

岩野:必要な人材はストラテジーとか、デジタルビジネスコンサルタントとか、データサイエンティストなどです。他にもさまざまな人材が必要です。社内にいる人と、外部から専門家を入れることで、こういった人員を確保しようと動いています。専任と兼任という混成チームで、まだ三分の一ぐらいです。外部採用は結構順調ですが、内部はすごく難しい。いい人は必ずいいプロジェクトをやっているので異動が難しい。そこが苦労の種です。

 

今までCDOとしてチャレンジしていたことは。

 

岩野:今、特にチャレンジしているのは、信頼関係をつくるということです。現場と密着して動こうとしています。ある意味、エグゼクティブの人たちも、いろいろな思いを持っていると思うのです。我々の援護者、サポーターのような人が、どんどん増えていって同志になることが重要だと思っています。
そして、何のために我々はここにいるのかですね。今までの事業部や今までの人でできることをやっていたのでは意味がありません。やはり、会社全体、社会に新しい流れをつくることが使命のはずです。そこをしっかり考えて手を打っていくこと、どう我々の行動パターンの中で整理して。頭も切り替えて議論していくか。そしてネットワークを作っていくのはチャレンジですね。



CDOとしての能力や人材に関してご意見をお聞かせください。

 

岩野:テクノロジーはものすごい勢いで動いています。それを常に分かっている、これはこういう方向に行っているという肌感覚を常に持っている、これはどこを押さえておかないといけないのか、そういうことを分かっている必要があります。感性みたいなもの、テクノロジー自体をある程度深みをもって分かっていて、それがどういうインパクトをもたらすか。インプリケーションを考えていくということを常にやっていかないといけません。

テクノロジーに関して、あまり日本人は得意ではありません。しかも、ベンダーの力もだいぶ落ちてきているので、ベンダーが言っているだけだと分かりません。自分で考えないといけないのです。その世界で一番すごいという人をアイデンティファイして、彼らが、彼女たちが言うことをきちんと押さえたうえで、自分で考えていくことが、すごく重要です。

そして、デジタルテクノロジーが社会、会社の関係、個人の関係に、どういう影響を与えるべきかを考えていかなければなりません。どういう価値観でプロジェクトを選んでいくか。周りの会社も私たちの活動に影響を受けてやっていくことが、ある意味、日本の底上げになっていくだろうと信じています。

デジタルトランスフォーメーションが何を意味して、日本の社会で何をしないといけないのか。そのためにはどこを掘り下げるべきなのか。そういう方向に議論を進化させることを、我々自身が意識しないといけないと思っています。一過性のファッションにならないようにと戒めています。

 

参考になるお話をありがとうございました。

インタビューアーからのコメント

 

CDOは業種や企業によって、その役割やスタイルが異なると言われていますが、このインタビューシリーズでもそういった側面が垣間見られるかもしれません。前回はB2C企業であるロレアルのCDO、長瀬氏にインタビューさせていただきましたが、今回の対象はB2B企業である三菱ケミカルのCDOである、岩野氏です。お二人とも、デジタルに対応した組織にトランスフォーメーションすることを課題としていることは共通していますが、それぞれの企業の特長からでしょうか、CDOとして強調するポイントには差も見られます。長瀬氏は、デジタルチャネルとテクノロジーをうまく活用し、顧客の変化に機敏に対応して価値を創造するのかということにフォーカスされていました。岩野氏の場合、そういう側面もありますが、より長期的な視野で、企業におけるデジタルのビジョンや体制をしっかりつくること、深いレベルでテクノロジーのトレンドを理解することを重視しています。しかも、それがテクノロジーを利用するということに終わるべきでなく、企業や社会をいかに変えるのかにつなげることを強調されていました。岩野氏は、実直で、物事を論理的にとらえるだけでなく、その深い洞察を、うまく他の人に伝えることに長けた方だという印象を受けました。

 

一橋大学商学研究科 教授 / CDO Club Japan顧問
神岡太郎