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CDO Interview vol.3 前編



テクノロジーと思想による
デジタルトランスフォーメーションへの水先案内人

 

株式会社三菱ケミカルホールディングス

執行役員 先端技術・事業開発室 CDO 岩野 和生 氏

株式会社三菱ケミカルホールディングスでは、IoTやAI を含む最新・先端技術の探索および、それら技術の活用や外部機関との連携による事業競争力強化、新規事業の創出を推進するため、2017年4月、新たに「先端技術・事業開発室」を設置。デジタル技術に関する研究をリードしてきた岩野氏をCDOとして選任しました。神岡教授から岩野氏へ、CDOにつき、質問をしていきます。

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岩野様のこれまでのご経歴とCDOになるまでのいきさつをお聞かせください。

 

岩野:日本アイ・ビー・エム株式会社で研究開発に携わっていました。元々はアルゴリズムや組み合わせ最適化の研究者です。1995年にIBM Researchの東京基礎研究所の所長になり、日本の基礎研究所のグローバルな貢献に注力しました。丁度、インターネットが普及しはじめ、モノからサービスへとビジネスが変化するなかで、会社も業態を大きく変える時期でした。幸い私たちのいくつかの研究はグローバルにも大きな影響を与えることができました。Java Just In Timeコンパイラー、XMLパーサー、ThinkPadの低消費電力技術、Digital Watermark、擬似乱数生成、デジタルライブラリーなどはそれらの一部です。その後、IBM T. J. ワトソン研究所で、オートノミックコンピューティングという、インフラやシステムの分散協調による自律的なコンピューティングを担当しました。当時これは新しい考えで、世界的に企業、大学、政府を巻き込んだ大掛かりなイニシアティブの立ち上げに関わっていました。次に、IBM Corporationが、社会に根本的なインパクトを与える目的でEBO (Emerging Business Opportunity)という新規事業を始め、その活動に参加しました。EBOは、テクノロジーをベースにした新しい価値を提供するというもので、現在のCDOの活動に近いものでした。グリッドコンピューティング、クラウドコンピューティング、スマーターシティなどを展開しました。

 

その後、日本アイ・ビー・エムを卒業することになり、社会に影響を与える仕事をしたいなと思っていた矢先、ITを使った新規事業を起こす手伝いができないかとの誘いがあり、三菱商事に入りました。それと同時期に国立研究開発法人 科学技術振興機構の研究開発戦略センターでITに関する政策提言にも携わりました。

 

そして去年、三菱ケミカルホールディングスからCDOを設置するということで、声がかかりました。ITがデジタルトランスフォーメーションを通して、会社、業界、社会に影響を与えていくという意味で、弊社だけでなく、いろいろなユーザー企業にとっても大事な先例になり、やりがいのある仕事だと思い、引き受けました。


 

テクノロジーを単にテクノロジーで終わらせるのではなく、会社の価値や、競争力に結び付けることを所長自らされたのは面白いと思いました。最近は、お客様に近い川下のCMOからCDOになる人以外に、テクノロジー出身で川上のCTOからCDOになる方が増えています。岩野さんは、研究組織のリーダーを超えて、研究をどう会社の強みに変えていくか、その会社の舵取り、トランスフォーメーションに関わってこられたのですね。単にテクノロジーをやっていた、R&Dをやっていたということだけではない、プラスアルファなことが結構あると思いました。

 

岩野:IT投資が、どのように国やビジネスに影響を与えるかということは、1990年代に米国を中心にかなり研究されました。そこで分かったことは、IT投資を単に増やすだけではダメだということでした。風土や制度を変えて初めて大きな効果が得られるというものです。そして、その頃からもう一つ議論されてきたことが企業や個人のアカウンタビリティーということです。つまり、企業や個人は社会から受け入れられ社会的責任を果たさなければ成り立っていかないのです。企業、個人、専門家の社会との関係が問われています。そういう意味でCDOも企業や社会との関係においてそのような責任があるのだと思います。

CDOとしてのこの会社での役割をお聞かせください。

 

岩野:基本的には、この会社にデジタルテクノロジーやその考え方によってデジタルトランスフォーメーションを起こす。それが使命です。現在起きているテクノロジーの革新的な進歩は、ビジネスや社会に大きな影響を及ぼす可能性があると考えます。しかし、それらの変革はまだイメージできていません。私たちは、会社の水先案内人になって、私たちだけではなく、会社全体でデジタルトランスフォーメーションを起こすようにしていきます。そのためには、会社の風土の変革も大事です。デジタルネイティブな組織風土を目指します。そのためには人事制度や様々な仕組みが必要となります。例えば、デジタルトランスフォーメーションに関わる人たちが、切磋琢磨し、キャリアパスもきちんとして、安心して働けるような。そういう場作りもCDOの役割だと思います。

 

 

後編では、岩野氏の考えるCDOとして特に重視されていること、CDOの会社の中での位置づけ、CDOとして求められる能力などについて、引き続きお聞きします。