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CDO Interview vol.4



・CDOがデジタルトランスフォーメーションを進め、

 グループ全体を変えていく
・デジタルの力を活用し「安心・安全・健康」をテーマとする

 真のサービス産業へと会社を変革する
・トランスフォーメーションにより
「昔、SOMPOは保険会社だったらしいよ」と言われるようになる

 

SOMPOホールディングス株式会社

グループCDO 常務執行役員 楢﨑 浩一 氏

デジタルトランスフォーメーションを推し進める、SOMPOホールディングスは、三菱商事出身でシリコンバレーにおいて、いくつものスタートアップに関わってきた楢﨑氏を2016年5月にCDOとして選任。東京とシリコンバレーに「SOMPO Digital Lab」を新設するなど、未来に向けたデジタル戦略の強化を行っています。今回は、神岡太郎教授による楢﨑氏へのインタビューです。

 



これまでのご経歴と、それがCDOという役職と、どのようにつながっているのかをお聞かせください。

 

楢﨑:大学卒業後、三菱商事に入社して情報産業の事業開発に関わりました。97年から3年間、シリコンバレーに駐在したときに自分でもスタートアップをやってみたいと思い、2000年に転職をしてスタートアップを4、5社やってきました。その後、ご縁がありまして、2016年5月にSOMPOホールディングスに入社して今に至ります。

この経歴でCDOと決定的につながっているのは、シリコンバレー経験ですね。仕事上、スタートアップの人と多く会いますが、経験があるので、彼らの考えていることが1から10までわかります。彼らとの、さまざまな交渉、取引がスムーズにできるんです。もう一つは、大企業を経験したことで、大企業でのものの考え方、ものの動かし方を一から学んだことでしょうか。日本の企業は素晴らしいものをたくさん持っているのですが、大企業はスタートアップのものの考え方、やり方では決して動かない。両方を知っていることは大切なことだと改めて思っています。


 

会社におけるCDOの役割として、どのようなことが期待されているのかをお聞かせください。

 

楢﨑:ひとことで言って、デジタルトランスフォーメーション。デジタル変革をグループ全体で行うことです。SOMPOホールディングスに入社する前に幹部たちに会ったとき、どの幹部も同じことを言っていました。「保険業だけではなく、金融業、あるいは産業全体がデジタルディスラプションの波にのみ込まれていくだろう。コンペディターは同じ保険業ではなくて、GAFA(「Google」「Apple」「Facebook」「Amazon」)のようなシリコンバレーを中心としたプラットフォーマーのジャイアントたちである。このまま壊されるぐらいだったら、むしろこっちから壊しにいき、自分たちがトランスフォームしたい。ただ、正直に言って社内にそういう人材がいない。君にそれをやってほしい。」そう言われて入社した経緯がありました。

プラットフォーマーのジャイアントたちに対応するには、対抗プラットフォームを作ることはやめたほうがいい。既に負けています。むしろ、プラットフォームをどうレバレッジするかということを必死に考えるべきです。やはり彼らにも弱いところや全方位ではできないところがあるので、お互いに補完する関係が絶対にできるはずです。プラットフォームというからには、上にものが乗っていなければ価値が無い。堂々と上に乗っかって、何かそこで新しい価値を造ろうという発想が私は正しいと思います。考え方、発想の転換が必要です。

そして、トランスフォームの結果としてSOMPOホールディングスが目指すものは、お客様の「安心・安全・健康」に資する最高品質のサービスを提供することです。お客様が我々と一緒にいらっしゃったら、安心で安全で健康になります。そういうサービス産業になろうと思っています。要するに、保険は後追い。事故が起こってから、亡くなられてから保険金を支払います。これに対し、デジタルの技術を駆使することで、事故を無くし、健康で長生きできるようにします。そうなれば、お客様も我々も社会にとってもより良い環境となる。そのためにできることは何かということを徹底的に追及しています。いつの日か「昔、SOMPOって保険会社だったらしいよ」「へぇ」と言われたいですね。

ご自身で活躍されていると同時に、いいチームを作って活動されていると思います。楢﨑様のチームについてお聞かせください。

 

楢﨑:今は50数名います。社外からの採用が10数名。いいチームだと思います。でももっと増やしたい。特に社外からの採用を増やしたい。理想はやはり100名くらいだと思います。それと、今はほとんどが日本人ですが、外国人が働くことを定常化したいと思っています。11月には東京とシリコンバレーに続き、イスラエルにもラボを開いたのですが、最終的には10個くらいのラボを全世界に作りたいと思っています。そこには日本人に限らず、目も力もある現地の素晴らしい人材を当てます。あの場所のSOMPO Digital Labは外国人のあの人がやっているというのを作りたい。それが私のチームの理想です。



これからCDOを目指す方、なりたい方に向けて、コメントをお願いします。

 

楢﨑:まず、なるべく多くの方にCDOを目指してほしい。二つめは、シリコンバレーがオールマイティだとは全く思っていませんが、一つの典型なので、シリコンバレーに触れてほしい。他の地域も盛り上がってきていますから、シリコンバレーなんか目じゃないぜというCDOが出てきてほしいとも思います。しかし、今はとりあえずシリコンバレーに人や物など全部が揃っているので、そこを体感してほしい。そういうものがないとCDOとして足りない部分があることになってしまうと思います。もう一つは、失敗をどんどんしてほしいし、失敗を許容する企業、組織を、経営のトップがつくってほしいと思います。失敗しても問題無しというような、そういう環境をつくらないとイノベーションは起こりません。失敗を恐れないということは、逆に言うと新しいものにどんどんチャレンジする。常に新しいところを求めていくような、そこに楽しみを感じるような。そういう人がCDOに向いているという気がします。

 

参考になるお話をありがとうございました。

 

インタビューアーからのコメント

 

シリコンバレーにおけるスタートアップの経験をもった方が、日本の大企業のCDOにスカウトされるというのは、センセーショナルのような気もしましたが、よく考えてみると、分かりやすい。 大企業が、自社がもつ何かを破壊し、今までにないものを求められるとすると、そこで有効なのは、スタートアップでの経験だと。しかし、日本の大企業におけるデジタルトランスフォーメーションを実現するには、それだけは不十分だということです。大企業を変えるには、大企業のこともよく理解できている人でないとならないわけですね。これが唯一の答えではないかもしれませんが、示唆に富んだ考え方だと思います。 インタビューをしていて、楢﨑氏の表情がいくつかわかるところがあったのですが、その一つは、本当に大変な仕事なんですとおっしゃりながら、一方で、その変化にチャレンジすることを楽しんでいる様子がうかがえた時です。時には失敗して落ち込んでも、またそれをバネにして、次をやり始めるという、その繰り返しがやめられない、そういう印象を受けました。新しいことにチャレンジすることを楽しいと思えるということが、CDOになるための重要な素質だと、感じました。

 

一橋大学商学研究科 教授 / CDO Club Japan顧問
神岡太郎