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CDO Interview vol.6



・金融事業に留まらず、
 社会全体をデジタル技術でイノベーションしていく

・デジタルトランスフォーメーションでお客様の体験を大きく変える

・数年後にはデジタルフィナンシャルサービスプロバイダを目指す

 

株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ デジタル企画部
部長 相原 寛史 氏

株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループでは、数年をかけてグループ会社全体をデジタルトランスフォーメーションしていこうという計画が進んでいます。計画は大きく2つの軸からなり、1つは現行の金融事業を徹底的にデジタル化していくこと。もう1つは、次々と出てくる最新のデジタル技術を取り入れて、新しいビジネスモデルを作っていくこと。これに伴い、2017年5月にはデジタルイノベーション推進部をデジタル企画部に変えて組織を強化。CDTO(Chief Digital Transformation Officer)という新たなポジションを作り、デジタルトランスフォーメーションを加速させています。今回は、デジタル企画部部長の相原氏への神岡太郎教授によるインタビューです。

 



相原様のグループについてと、社内での役割をお聞かせください。

 

相原:5月に組織の大きな位置づけを変えるという組織改正を行い、そのタイミングでCDTOという新しいポジションが作られました。その下のスタッフとして私がいます。グループとしては100人ぐらいです。以前はデジタルイノベーション推進部という部があり、主にイノベーション、どちらかというと非連続なものの要素を探してインキュベーションすることが主なミッションでした。これがデジタル企画部となって大きく変わり、全社的なデジタルトランスフォーメーションの推進を行っています。既存事業のデジタル化やイノベーションの種を事業化するといったことを、インキュベーションだけではなく全般的にやっていく組織になっています。具体的には、各事業部門と協力してプロジェクトチームを作ったり、ITの企画部門と協力したりする体制で、新しいサービスを作りながら銀行自体をどう変えていくか考えています。


 

今までチャレンジしてきたことについてお聞かせください。

 

相原:アクセラレータプログラムということをやっています。これはスタートアップ企業を4か月支援させていただいて、商品とか、ビジネスモデルを一緒に創造し、一緒にやらせていただくというものです。基本的には金融関係が多いのですが、金融に縛られず、ブロックチェーンの要素技術ですとか、IoT関係など、幅広く取り組んでいます。当然、事業としてアライアンスすることも具体的に進んでいますし、実際に新たなサービスが生まれているというケースもあります。また、今までは日本の企業が中心だったのですが、これからはグローバルなスタートアップ企業も視野に入れています。今の我々の体制では、サンフランシスコに6名。ニューヨークに1名。シンガポールに4名。ロンドンに最近1人行き、グローバルでいろいろなシーズを探しています。

CDOをされる方に求められる能力、人材に関してどのようにお考えですか?

 

相原:ベースとしてはテクノロジーが理解できないといけないと思いますが、それをちゃんとビジネスに置き換えることができるか、それが大変重要だと思っています。加えて好奇心がないと新しいことについていけません。とにかくやってみようという気でやらないと、イノベーションは進みません。最終的には社内でそれをドライブできるように、どのように他の事業部門のヘッドの人とコラボレーションしていけるか。これには非常に高いコミュニケーション力が必要です。あとはある程度好きにやれというようなところがあるので、リスクをとってやってみないと分からないことは、信じてやらせるということが必要です。

このことはCDOに限りません。これからのデジタルタレントに求められる能力はキュリオシティ。そしてコミュニケーションとイマジネーション。10年後、20年後が想像できるかが勝負です。私がいつも言っているのは「銀行がこんなことをやるの? ということをやろうよ」ということ。世の中のお客さんから、「エッ!?」と言われたいと思っています。



これからCDOを目指す方、デジタルトランスフォーメーションをやろうとする方に対して、コメントをお願いします。

 

相原:CDOはリーダーなので、部下に安心できるフィールドを与えることが大切だと思います。いかに失敗をさせてあげるか。「これは失敗でいいのではないか」ということをちゃんと言ってあげられるかだと思います。そうしないと実際に施策を進めているチームは責任感が強いのでズルズルとやり続けてしまう。ただし、失敗させた場合にはその失敗から学びを得て積み重ねていくことが重要です。失敗から学びを引っ張り出すことはみんな慣れていないので、ある程度リーダーが引っ張り出してあげないといけない。特に大企業ですと失敗していない人が多い。失敗から学びを引き出す経験値を高めて欲しいと思っています。

 

そしてポジティブに考えないといけない。失敗をどう評価するか。アイデアが出た時に、どう反応するかがCDOのリーダーシップの鍵ではないかと思います。よくあるのが、クリティサイズしてしまうこと。そんなのやってもしょうがないと言ってしまう。一度はポジティブにやらせてあげたほうがいいと思います。そういう思考を訓練されたほうがいい。

 

あとは、本当にイコールリスペクトを持って人の話を聞くことが大切です。相手がどのような立場の人であっても、相手の話をリスペクトして聞く。そういうことをやっていかないとうまくいかない。そういう感覚を持つことは非常に大切です。それから、最後はネットワークだと思います。いろいろな人から意見をもらえるようなネットワークをどれだけ広げられるか。デジタルは人のネットワークが勝負です。

 

参考になるお話をありがとうございました。

 

インタビューアーからのコメント

 

 相原氏の話を聞いていると、(スペースの都合でカットされている部分も含めて)ここは金融業か?と思うような話の連続でした。デジタル企画部のヘッドであるCDTOというタイトルは、CDOに求められている最も重要な役割、T=Transformationを強調した形の名称になっています。金融業という最も伝統的な業種でも、デジタルトランスフォーメーションが起こっていることを実感しました。少し大げさに言えば、金融業自体の存在意義を、金融業自体が問うているということでしょうか。

 

 そして、興味深いのは、小さな連続的な変化とドラスティックで非連続的な変化の両方を、一つの部門で扱うようにしたことです。現業をインクリメンタルに変化させることと、現業との関係を無視してでも新しいものを生み出すということですが、この2つはしばしば矛盾することがあります。相原氏のグループでは、トランスフォーメーションは一つ一つシーケンシャルに行うのではなく、複数のトランスフォーメーションを進行形で扱うというスタイルです。どのトランスフォーメーションが有効なのかは、やってみないと分かりません。トランスフォーメーション間、あるいは現業との間で起こる矛盾をすべてなくすことに固執すると、本当のトランスフォーメーションは実現できない、という覚悟をされたのでしょう。ただ、デジタル企画部が、どこかでうまくシンクロナイズさせる、あるいは全体的視野で調整できるようにされているのだと思います。

 

 金融業がこれまで経験したことのない世界に入るには、やはり組織内のマインドセットやカルチャーを変える必要があると思います。相原氏の話は、上手にリスクを取る環境や、文化を醸成することに触れられていますが、私も大賛成です。これがなければ、戦略だけで終わってしまいます。金融業は、ある意味リスクを扱うビジネスだったと思うのですが、組織内でそのリスクとの付き合い方に変化が必要なのだと思います。組織内で、誰かがそのマインドセットやカルチャーのトランスフォーメーションをリードしなければなりません。そのためにCDOのようなリーダーの存在が欠かせないということだと思います。

一橋大学商学研究科 教授 / CDO Club Japan顧問
神岡太郎