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CVC Interview vol.2 前編



CVCインタビュー:YJキャピタル株式会社 代表取締役社長 堀新一郎氏 <前編>


・選ばれるCVCでなければならない

・重要なのは、スタートアップと“一緒に事業を作っていく”スタンス

・ヤフー本体の事業部とどう提携するべきか
 ―シナジー創出の強化へ―

 

YJキャピタル株式会社
代表取締役社長 堀 新一郎 氏

圧倒的なパフォーマンスで30億規模の1号ファンドを成功させ、2号ファンドでは200億円という国内トップクラスの規模で運用を行うYJキャピタル株式会社。3月には、インドネシア最大級の財閥シナルマス・グループと連携し、東南アジアを中心に投資する新ファンド「EV Growth Fund」の組成を発表し、その活動の場を世界へと広げています。https://about.yahoo.co.jp/pr/release/2018/03/22a/

今回は、同社の代表取締役社長、堀新一郎氏に、YJキャピタルの投資戦略やコーポレート・ベンチャー・キャピタルのあるべき姿、求められる視点や今後の挑戦を伺いました。今回はその前編です。

 

 

 

樋原:まずは、YJ キャピタル株式会社設立の経緯をお聞かせいただけますか。

 

樋原:YJキャピタルが設立されたのは2012年です。2011年からヤフーが新体制に変わり、そのタイミングから投資戦略を見直そうという動きが出てきました。それまではベンチャー投資を本格的には行っていなかったのです。理由の1つとして、ベンチャー投資をするために必要なケイパビリティやソーシングを含め、起業家とのネットワークを持っている人が少なかったことがあります。

 

もう1つの理由が、ヤフーが日本国内でジャイアントになったことで、ベンチャー投資をすることイコール若い会社、新しい会社の技術やアイデアを丸ごと奪い、ベンチャーを潰しに行く、そのように見られてしまうことでした。そこで起ち上げたのがYJキャピタルです。ヤフー本体ではなく、YJキャピタルというコーポレート・ベンチャー・キャピタルから投資することによって、「技術を盗むわけじゃない。一緒にスタートアップを育てていく」というスタンスを明確にしようということです。「インターネット業界の起業家を支えていくコーポレート・ベンチャー・キャピタルです」という打ち出し方で始めたのが設立の背景です。

 

樋原:CVCを初めても、スタートアップとの関係を上手く構築出来ていない企業が多いようですが、貴社はスタートアップとの関係はどのように構築していったのでしょうか?

 

樋原:1つは、将来的に事業シナジーが生まれる場合には、ヤフー本体とのサービス提携をサポートしていくことを謳っています。ヤフーが持っているトラフィックやビッグデータは、資産を持っていないスタートアップから見ると魅力でしょう。2つ目は、スタートアップのコミュニティに入り込み、スタートアップに選ばれる存在であることが非常に重要で、その意味では、自身も起業家で個人投資家でもあり、スタートアップとも深い交流を持つ小澤 隆生(前代表取締役)が重要な役割を担っていたと感じます。3つ目は結果です。起業家から見ると、どこのファンドに投資をしてもらったらいいのかと考えた時に、しっかりとexitさせてもらえるところとなるわけですから、1号ファンドでしっかりパフォーマンスを出せたことが寄与しています。

 

YJキャピタルは、キャピタルゲインだけを追いかけているファンドではありません。起業家と付き合う上で重要なのは、儲けだけを追求して早くexitしろということではなく、一緒に事業を作っていこうというスタンスです。成長ステージを問わず、インターネット関連のスタートアップ企業に対して広く投資を行っていて、「投資から数年後、あなたの会社のサービスが成長した時に、ヤフーと一緒に何かできそうなところを、グループとして積極的に応援していきます」というスタンスです。

例えばYJキャピタルのメンバーは出資先のスタートアップに対し、1つは株主として、もう1つはヤフーの社員としての立場でアドバイスができます。「ヤフーのショッピングカンパニーの人たちはスタートアップとこういう提携を望んでいる」「スタートアップの人にトラフィックを提供する代わりにこういうリターンが欲しい」ということが分かる。そして、「あなたがこれからヤフーに提案しに行く提案書の中身に、そういう要素はきちんと入っているか?」「あなたが提案している相手はキーパーソンか? ライトパーソンか?」とアドバイスができるのです。そういうアドバイスができるのは、双方にとって大きなメリットです。


 

樋原:投資先について、「ここだったらこういうシナジーが出そうだ」といった相談は、各事業部門との間で、あるのでしょうか?

 

樋原:ヤフーの各事業部、各サービスユニット、各マネジメントレイヤーが何をやりたいと思っていて、どういう意思決定構造であるかといったことを、投資担当者としてしっかりと理解、把握していることが必要です。社内人脈や社内政治も含めて理解しておくことが非常に重要と思います。そのようなことを踏まえ、相談するケースもありますし、相談しないないケースもあります。

 

今後についてですが、2018年4月にヤフー本体が新体制に変わるタイミングで、YJキャピタルの投資戦略を見直そうとヤフー経営陣と話し合いを進めています。これまでは2号ファンドが立ち上がったタイミングで、キャピタルゲインを第1プライオリティにおき、本体との事業シナジーは第2プライオリティでした。今後は両方だと。より具体的に言うと、事業シナジーの面をもっと強化してほしい。YJキャピタルの投資先とヤフー本体との提携が、きちんと成功するように最後まで責任をもってサポートしていこう、と言われています。これはけっこう難易度が高いと思います。事業部側は担当が3年程度、早いと1年ほどでローテーションしてしまいます。本社の事業戦略や、世の中のトレンドをしっかり押さえて、提携の内容を詰めていかないといけません。その事業自体が中長期的に成長していく事業かどうか。この事業は本当に取り込んでいく必要があるのかどうか。そのようなところを踏まえてやっていかなくてはいけません。

 


ヤフーも儲かるし、スタートアップも儲かるというスキームを、双方で出し合って作っていく。今までは基本的に事業部とスタートアップだけでやっていたことに対して、きちんとYJキャピタルが中に入ってサポートしていくことを期待されています。そこまでやっているコーポレート・ベンチャー・キャピタルは国内には無いのではないでしょうか。私個人としてはチャレンジングなことではありますが、もっともっとスタートアップに対して、いいValue が与えられるようになっていくと思います。

 

後編へ続きます。

 

 

 

YJキャピタル株式会社 代表取締役社長 堀 新一郎 氏

慶應義塾大学(SFC)卒業後、フューチャーシステムコンサルティング株式会社(現フューチャーアーキテクト株式会社)を経て、 株式会社ドリームインキュベータ(DI)にて経営コンサルティング及び投資活動に従事。 2007年よりDIのベトナム法人立ち上げのため、ホーチミン市に赴任。 ベトナム現地企業向け投資を行う50億円のファンドのソーシング及びバリューアップに携わり、 5年半に亘るベトナム駐在を終え2012年に帰国。 2013年よりヤフー株式会社に入社しM&A業務に従事。2013年7月よりYJキャピタルへ参画。 2015年1月COO就任、2016年11月より現職。アクセラレータープログラムCode Republic共同代表及び、ソフトバンクのグループ内新規事業開発・投資会社である SBイノベンチャー株式会社取締役兼務。

 


 

 

 


インタビューアー:
樋原 伸彦 氏

1988年東京大学教養学部教養学科(国際関係論)卒業、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。世界銀行コンサルタント、通商産業省通商産業研究所(現・経済産業省経済産業研究所)客員研究員、米コロンビア大学ビジネススクール日本経済経営研究所助手、カナダ・サスカチュワン大学ビジネススクール助教授、立命館大学経営学部准教授を経て、2011年から現職。米コロンビア大学大学院でPh.D.(経済学)を取得。専門はファイナンスとイノベーション、特にベンチャーキャピタル、コーポレート・ベンチャー・キャピタル、エコシステムなど。


担当:ビジネス・フォーラム事務局 プロデューサー 山本 沙紀

立命館大学にてベンチャーファイナンスを専攻。サービス系ベンチャー企業を経て2013年ビジネス・フォーラム事務局に入社。New Business Creation Forum企画考案・企画者。他、人事系・製造業など幅広く企画を担当。