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CIO Forum 2017

 

 

2017年3月2日、東京・コングレスクエア日本橋にて、株式会社ビジネス・フォーラム事務局主催「CIO Forum 2017」を開催しました。AIやIoTなどをはじめとした近年のテクノロジーの急速な進化に伴い、企業における情報システム・IT部門には従来の役割の枠を超えて、“ITでビジネスにイノベーションを起こす”という経営戦略に紐づくミッションが求められています。そのような中で、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)を含むITリーダーは、いかにしてビジネスに新たな付加価値を生み出し、企業競争力の向上につなげているのでしょうか。当日の講演やパネルディスカッションの様子をご紹介します。

特別講演Ⅰ

株式会社ローソン
執行役員 業務システム統括本部 副本部長 兼
株式会社ローソンデジタルイノベーション 代表取締役社長
白石 卓也
基調講演

日本アイ・ビー・エム株式会社
取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長
三澤 智光
特別講演Ⅱ

コニカミノルタ株式会社
執行役 IT企画部長
田井 昭
特別講演Ⅲ

パナソニック株式会社
全社CTO室 ソフトウェア戦略担当 理事

梶本 一夫

パネルディスカッション
  • ヤンマー株式会社
    執行役員 経営企画ユニット ビジネスシステム部
    部長

    矢島 孝應

  • アサヒビール株式会社
    経営企画本部 デジタル戦略部
    部長

    松浦 端

  • 大和ハウス工業株式会社
    執行役員 情報システム部長

    加藤 恭滋

  • 日本アイ・ビー・エム株式会社
    取締役専務執行役員
    IBMクラウド事業本部長

    三澤 智光

  • ジャーナリスト

    松岡 功

お客様にとって、なくてはならない存在を目指して

株式会社ローソン 執行役員 業務システム統括本部 副本部長 兼
株式会社ローソンデジタルイノベーション 代表取締役社長 白石 卓也

 

 

 2015年にIT子会社「ローソンデジタルイノベーション」を設立した株式会社ローソンは、様々な社会環境の変化に直面しています。深刻な人手不足、働き方・働き手の多様化、他業種との競合激化、お客様ニーズの細分化。「社会変化対応業」であるコンビニエンスストアは、なくてはならない社会インフラとして存在していくために、地域の需要に対応したきめ細かいサービスの提供を様々なパートナーと連携しながら進めています。「次世代コンビニの実現に向けたローソンのIT戦略」と題し、ITを用いたビジネス戦略や具体的な取り組み事例、ITリーダーに求められる役割を白石氏に講演いただきました。



最新のITテクノロジー導入で進める
“小商圏型製造小売業”化と オープンプラットフォーム化

 

 白石氏は、株式会社ローソンの掲げる2つの大きなビジネス戦略テーマを紹介しました。1つ目が小商圏型製造小売業。2つ目がオープンプラットフォームです。この戦略に対して白石氏は「我々テクノロジー部隊は、最新テクノロジーを導入していくのが1つ。もう1つ重要なのが、データの活用分析によるアプローチ。さんざん言われてきているが、ここにきてデータをどう使ってビジネスを作り上げていくのか、業務改善していくのかが、益々重要になってきている。変化することを前提としたシステム基盤を作り上げていくことが、ITの戦略として重要だ」と言います。

 

 今までローソンは、最初の商品企画開発と、最後の販売を中心にやってきました。現在では、原材料調達の会社を作り、さらに製造や物流も含め、パートナー企業と密に連携していく方向にシフトしています。これにより、企画から販売まで、一気通貫でサプライチェーン全体の流れを把握できます。コンビニエンスを目指してきたが、今後はよりエッセンシャルな存在を目指す。他の店とは違う体験、サービスで、お客様が「どうしてローソンでなくてはいけないのか」を考え、なくてはならない社会インフラとして、存在していくことを目指しています。

 

 これに対し、白石氏は具体的な取り組み事例として3つ挙げています。まず「インストア分析」。カメラ、センサーを用いてお客様の動線、商品陳列状況の把握を行い、お客様の購買行動の原因解析を行う実験を実施しました。お客様にもう1品をどう買ってもらうか、どうやってもう1人に店に入ってもらうかを、ITによりアプローチする取り組みです。次に「レジロボットやRFIDの活用」。2016年9月に行われた無人コンビニの導入実験を紹介しています。コストの削減だけでなく、個品のトレースアビリティも明確にするRFIDのプラットフォームをオープンに構築していくことで、社会インフラとしての世界初の個品管理プラットフォームが実現できます。もう1つが「AIチャットボットマーケティング」。AIチャットボットはLINE株式会社と共同で行っている、AIを使ったコミュニケーションサービスです。POSやポイントカードからは得られない幅広い情報を取得できる、SNSを中心としたお客様とのコミュニケーションは、今後更に重要になると白石氏は予測しています。

 

ITリーダーに求められる役割は、「2020年をイメージする」
「全体俯瞰と一点突破」「推進する組織体系づくり」

 

 最後に白石氏はITリーダーに求められる役割として「2020年をイメージする」「全体俯瞰と一点突破」「推進する組織体系づくり」の3つを挙げています。2020年をイメージするとは、IT・テクノロジーをベースとして、2年後、3年後にはどのような世界になっているか。その時お客様はどのようなことを望んでいるのかをイメージすること。ニーズが多様化するなか、コミュニケーションのあり方を考える必要があります。全体俯瞰と一点突破とは、全体の整合性を合わせながらシステムを変更していくとともに、特定の領域で大きく成果を出すこと。最後に、推進する組織体系づくりとは、推進体制をどうしていくか。これがないと、いくら戦略をたてても絵に描いた餅となってしまう、と白石氏は言います。

 

 そして、白石氏はローソンの掲げるデジタル戦略を進めるために必要なこととして2つを挙げています。1つは「テクノロジーの活用ノウハウの蓄積と内製化」。2つ目が「オープンイノベーション推進強化」。ノウハウの蓄積と内製化という点は、ローソンデジタルイノベーションを設立した背景でもあります。オープンイノベーション推進強化という点では、様々なパートナー企業との協力を進めています。チェーン全体のあらゆる分野にテクノロジーを活用し、ローソンがコミュニケーションインフラとしてなくてはならない存在となるべく、白石氏は日々第一線で奮闘されています。

 

 

株式会社ローソン
執行役員 業務システム統括本部 副本部長 兼
株式会社ローソンデジタルイノベーション 代表取締役社長

白石 卓也


東京大学大学院卒業後、1996年フューチャーアーキテクト入社、その後プルデンシャル生命保険、IBM、ベイカレントコンサルティングを経て、2015年4月ローソン入社。ローソンが推し進めている次世代システムの責任者を務める。2016年2月に設立したローソンデジタルイノベーション 代表取締役社長を兼務。

 

 

イノベーションのためのプラットフォームを提供する
コグニティブ、クラウドソリューション

日本アイ・ビー・エム株式会社 取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長 三澤 智光

 

 

 「今やコグニティブソリューションとクラウドプラットフォームの会社である」と宣言し、クラウドやAI、データサービスやアナリティクスの新規研究開発投資を活発に行う日本アイ・ビー・エム株式会社。IBMのクラウド戦略や、企業が自社に合ったハイブリッドなシステム環境をどのように構築運用していくのかについて、「ITでイノベーションをリードし、新たな競争優位性を獲得する」と題し、様々な取り組み事例とともに、三澤氏に講演いただきました。





オンプレミスとクラウド
まったく異なるアプリケーション特性にどう応えるか

 

 三澤氏は最初に、オンプレミスで稼働している従来型アプリケーションと、クラウドで使われるアプリケーションの特性の違いについて解説しています。現在、クラウドコンピューティングは、アマゾンやグーグルに代表される「クラウドネイティブ」な企業が使うのに大変便利なものとなっています。このようなクラウドネイティブな会社が求めるアプリケーション特性と、一般企業が求める旧来型のアプリケーションでは求める特性が大きく異なります。

 

 例えば財務会計や生産管理など、旧来型のアプリケーションはSOR(System of Record)。特定の人が特定の人数で使用し、365日安定的に動き続けることを求められます。それに対し、クラウドで求められるものは、今日の時点では同時100ユーザーで動いていたものが、1年後には同時10億ユーザーで動く可能性もあるという、とてつもなく大きいスケーラビリティが要求されます。さらに、このようなお客様との接点をささえるSOE(Systems of Engagement)アプリケーションは、お客様の満足を維持するために頻繁に変更が行われます。三澤氏は「クラウドに実装されている変化の大きいアプリと、365日安定的に動くアプリとをどのようにマネジメントするかが今後の課題である」と言います。

 

 IBMではこの点に力を入れ、アプリケーションの構築、管理、実行するためのクラウド基盤、IBM Bluemixを提供しています。オープンソース のPaaS (Platform as a Service) であるCloud Foundryをベースに、オンプレミスの環境もクラウドの環境も選択できるハイブリッドなデザインを実現可能にしています。

 

 

 

エコシステムを作りやすく
インターオペラビリティの高いクラウドを提供

 

 三澤氏は、IBMがクラウドプラットフォームをつくるにあたり一番大切にした考え方は、「オープンスタンダードテクノロジーとオープンソースで作り上げていくこと」だと言います。オープンスタンダードテクノロジーとオープンソースでオンプレミスのアプリがつくられていれば、IBMクラウドとのインターオペラビリティは高くなります。また、いくつかのクラウドの間でも、オープンソースで作られていればクラウド間のインターオペラビリティも高まります。

 

 三澤氏は「オープンテクノロジーを選んだ理由は、ベンダーロックインで自由にアプリ基盤を動かせなくなることを避けるという理由だけでなく、様々なアプリ開発者やサービス事業者とのエコシステムを作りやすくしている。一緒にビジネスをできるようになるということ」と言います。加えてこのようにも述べています。「今後クラウドプラットフォームに求められることは、この素晴らしいプラットフォームの上で“どんなビジネスバリューを作り出すのか”ということ。オープンスタンダードテクノロジーをベースに、ハイブリッドなデザインをしやすくする。Watsonなどのコグニティブの機能を取り入れやすくする。プラットフォームの上に数多くのバリューを載せて皆様方のデジタライゼーションをお手伝いする」、これがIBMのクラウドの考え方です。

日本アイ・ビー・エム株式会社
取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長

三澤 智光


1987年4月に富士通株式会社入社。1995年5月に日本オラクル株式会社へ入社し、2000年に執行役員 パートナー営業本部長 兼 ソリューション統括部長を務める。その後、2011年に専務執行役員 テクノロジー製品事業統括本部長、2014年に副社長執行役員 データベース事業統括、2015年12月に執行役 副社長 クラウド・テクノロジー事業統括を歴任。2016年7月より日本アイ・ビー・エム株式会社 取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長へ就任し、現在に至る。

 

 

既存のIT技術と新しいIT技術の両立
ITビジネスに必要な「攻め」と「守り」のバランス

コニカミノルタ株式会社 執行役 IT企画部長 田井 昭

 

 

 海外での売上高が8割を占めるコニカミノルタ株式会社は、グローバルITガバナンスの強化を進めるとともに、「攻め」と「守り」を意識したIT施策により大きな効果を上げています。「コニカミノルタにおけるグローバルIT戦略~ビジネスに貢献するITマネジメント~」と題し、グローバルガバナンスの現状や課題、攻めのIT、守りのITとは何かを、田井氏に講演いただきました。





現地尊重型からスタンダード準拠型へ
グローバルITガバナンスの現状と課題

 

 田井氏はグローバルITガバナンスの形態として統制力の強さの順に4つを挙げています。グループ・グローバルでのITリソース全体像の把握を行わない、一番統制力の少ない「無秩序型」。それぞれの地域の特性に合わせ事業部門ごとに処理をする「現地尊重型」。準拠すべきスタンダードを定めることで最低限のラインを確保しつつ、違いを吸収するためのローカライゼーションを許容する「スタンダード準拠型」。そして一番統制力が強い、統一された戦略、方針に従う「ベストプラクティス展開型」。コニカミノルタでは、以前はITセキュリティポリシーや主要会社の基幹システム方針を配信するにとどまり、後は現地に任せる現地尊重型のガバナンスをとっていました。ITのグローバル化を進める為にどうするかを考えた結果、現在では、バラバラだった国際ネットワークの統合やマスターデータの標準化など、グローバルでのIT部門の協力を強化。スタンダード準拠型へ移行しています。これにより、グローバルでのIT費用の見える化と、プロジェクトの可視化によるIT投資の最適化が達成されました。

 

 しかし課題もあります。田井氏は課題として、ITの技術がバックオフィスに留まらずフロントのビジネスに影響するようになり、IT部門の役割の変化が生じている点を挙げています。また、EUのGDPR(EU一般データ保護規制)により、EU内のデータを簡単に持ち出せなくなる事への対応も急ピッチで進めなくてはならない現状も挙げていました。環境の大きな変動に対応する為、新たなガバナンスフレームが必要になっています。

 

ITの「攻め」と「守り」
ビジネスに貢献できるIT部門になるには

 

 続いて、田井氏はビジネスにおけるITの「攻め」と「守り」について、新しいものに挑む「攻め」の時こそ「守り」が必要であると強調します。IT部門としてビジネスに貢献するには、IT部門のみでは効果がなく、トップのコミットメントと事業部門とどう連携していくかが重要です。その際、既存の課題を残して新しいビジネス「攻め」を行うことはできず、既存のIT基盤「守り」を強化することは、「攻め」を行う為にも必要となります。守りと攻めのバランスが大切です。事業部門との連携では、IT部門が担う領域を明確化し、自部門の得意領域、強化領域を活かすことで、ビジネスへの貢献の効果が増加します。これを実現するためには、新規技術の習得と、人材育成強化は必須であって、IT部門の進化をメンバーが意識できることが重要です。

 

 そして田井氏はIT部門のビジネスへの貢献について、このように締めくくられました。「人材強化は大変。従来のメンバーを強化するのは年単位でかかる。しかし、一緒に働いているメンバーがこういう環境を理解して新しい事にチャレンジして、そこで何か面白い事をぶつけられて楽しめるなと思ってくれればその組織は活性化するし、進化する事が出来る。これからITは裏方ですまない部分が出てくる。責任は大きくなるが、その分エキサイトな部分がある。同じ業界で働いているIT企業のメンバーの方もそう思っていただければ、エコシステムではないが、日本企業のITがこれからもさらに成長できる領域になっていければいい」

コニカミノルタ株式会社
執行役 IT企画部長

田井 昭


1981年小西六写真工業株式会社(現コニカミノルタ株式会社)入社、2007年にKonica Minolta Business Solutions U.S.A., Inc. 上級副社長へ就任。2009年にコニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 開発本部 ソリューション開発センター システムソリューション部長、2011年にコニカミノルタホールディングス株式会社 IT業務改革部長、2013年にコニカミノルタ株式会社 IT業務改革部長、2014年に同社 執行役 IT業務改革部長を歴任。2015年4月に同社 執行役 IT企画部長へ就任し、現在に至る。

 

 

大好評につき、今年も開催

 

 

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