お客様にとって、なくてはならない存在を目指して
株式会社ローソン 執行役員 業務システム統括本部 副本部長 兼
株式会社ローソンデジタルイノベーション 代表取締役社長 白石 卓也 氏
2015年にIT子会社「ローソンデジタルイノベーション」を設立した株式会社ローソンは、様々な社会環境の変化に直面しています。深刻な人手不足、働き方・働き手の多様化、他業種との競合激化、お客様ニーズの細分化。「社会変化対応業」であるコンビニエンスストアは、なくてはならない社会インフラとして存在していくために、地域の需要に対応したきめ細かいサービスの提供を様々なパートナーと連携しながら進めています。「次世代コンビニの実現に向けたローソンのIT戦略」と題し、ITを用いたビジネス戦略や具体的な取り組み事例、ITリーダーに求められる役割を白石氏に講演いただきました。
最新のITテクノロジー導入で進める
“小商圏型製造小売業”化と オープンプラットフォーム化
白石氏は、株式会社ローソンの掲げる2つの大きなビジネス戦略テーマを紹介しました。1つ目が小商圏型製造小売業。2つ目がオープンプラットフォームです。この戦略に対して白石氏は「我々テクノロジー部隊は、最新テクノロジーを導入していくのが1つ。もう1つ重要なのが、データの活用分析によるアプローチ。さんざん言われてきているが、ここにきてデータをどう使ってビジネスを作り上げていくのか、業務改善していくのかが、益々重要になってきている。変化することを前提としたシステム基盤を作り上げていくことが、ITの戦略として重要だ」と言います。
今までローソンは、最初の商品企画開発と、最後の販売を中心にやってきました。現在では、原材料調達の会社を作り、さらに製造や物流も含め、パートナー企業と密に連携していく方向にシフトしています。これにより、企画から販売まで、一気通貫でサプライチェーン全体の流れを把握できます。コンビニエンスを目指してきたが、今後はよりエッセンシャルな存在を目指す。他の店とは違う体験、サービスで、お客様が「どうしてローソンでなくてはいけないのか」を考え、なくてはならない社会インフラとして、存在していくことを目指しています。
これに対し、白石氏は具体的な取り組み事例として3つ挙げています。まず「インストア分析」。カメラ、センサーを用いてお客様の動線、商品陳列状況の把握を行い、お客様の購買行動の原因解析を行う実験を実施しました。お客様にもう1品をどう買ってもらうか、どうやってもう1人に店に入ってもらうかを、ITによりアプローチする取り組みです。次に「レジロボットやRFIDの活用」。2016年9月に行われた無人コンビニの導入実験を紹介しています。コストの削減だけでなく、個品のトレースアビリティも明確にするRFIDのプラットフォームをオープンに構築していくことで、社会インフラとしての世界初の個品管理プラットフォームが実現できます。もう1つが「AIチャットボットマーケティング」。AIチャットボットはLINE株式会社と共同で行っている、AIを使ったコミュニケーションサービスです。POSやポイントカードからは得られない幅広い情報を取得できる、SNSを中心としたお客様とのコミュニケーションは、今後更に重要になると白石氏は予測しています。
ITリーダーに求められる役割は、「2020年をイメージする」
「全体俯瞰と一点突破」「推進する組織体系づくり」
最後に白石氏はITリーダーに求められる役割として「2020年をイメージする」「全体俯瞰と一点突破」「推進する組織体系づくり」の3つを挙げています。2020年をイメージするとは、IT・テクノロジーをベースとして、2年後、3年後にはどのような世界になっているか。その時お客様はどのようなことを望んでいるのかをイメージすること。ニーズが多様化するなか、コミュニケーションのあり方を考える必要があります。全体俯瞰と一点突破とは、全体の整合性を合わせながらシステムを変更していくとともに、特定の領域で大きく成果を出すこと。最後に、推進する組織体系づくりとは、推進体制をどうしていくか。これがないと、いくら戦略をたてても絵に描いた餅となってしまう、と白石氏は言います。
そして、白石氏はローソンの掲げるデジタル戦略を進めるために必要なこととして2つを挙げています。1つは「テクノロジーの活用ノウハウの蓄積と内製化」。2つ目が「オープンイノベーション推進強化」。ノウハウの蓄積と内製化という点は、ローソンデジタルイノベーションを設立した背景でもあります。オープンイノベーション推進強化という点では、様々なパートナー企業との協力を進めています。チェーン全体のあらゆる分野にテクノロジーを活用し、ローソンがコミュニケーションインフラとしてなくてはならない存在となるべく、白石氏は日々第一線で奮闘されています。