
小野: 最後に、今日参加されているみなさんにメッセージなどがあればお願いします。
木村(西友): じつは、弊社ではカスタマー・エクスペリエンスという言葉は浸透していません。とはいえ、お客様に関わる文脈であればみんなが話を聞きます。今後いろいろと施策を考えていく際にも、全員でやろうという雰囲気になっています。そんなことから、カスタマー・エクスペリエンスの専門部署を作るという体制にはならない会社です。基本的には店舗ごとに大きな権限があるので、そこをどう「見える化」してマネジメントしていくかが、本社の役割ではないかと思っています。
佐々木: カスタマー・エクスペリエンスについては、大上段に振りかぶらなくても小さいことからスタートすれば良いと思います。我々の中でも、定量的に効果が出ているところとそうではないところがあるのですが、一歩ずつ地道に積み上げて取り組んで行くことが大事だと思います。それと、経営陣にカスタマー・エクスペリエンスの重要性を理解してもらう為に、小さなことでも経営にインプットして効果を理解してもらうことが重要だと思っています。
木村(KDDI): コンシューマエクスペリエンス推進部というかっこいい名前ですが、実際にやっていることを見ると、みんな社内を駆けずり回っています。汗をかいているところを社内に見せることも、我々の重要性を認識してもらう方法の1つかなと思っています。それと、なぜ我々はカスタマー・エクスペリエンスを向上させようとしているのかを、部内で定期的に確認するようにしています。私は「みながハッピーになることだから」と言っています。会社もパートナーもお客様もハッピーになることを、私たちがやっているんだということです。
松田: 保険会社は以前からブランド投資を長年行ってきています。今の保険会社は、ブランド投資一辺倒だったのを少しずつカスタマー・エクスペリエンスの投資にシフトさせています。私たちはブランドとカスタマー・エクスペリエンスをバランシングさせながら投資を行うようにしています。カスタマー・エクスペリエンスはやはり長期的な投資だと思います。すぐに結果には結びつかないけれど、長期的に考えたらすべて経営の結果に反映します。システム開発のように、ある程度の予算をそこに割かない企業は多分選ばれなくなると思っています。
小野: 今日のディスカッションでは触れませんでしたが、お客様の経験を別の角度から見ると、人間はときに非合理的で、感情を伴っている生き物であり、そうした規則立ててとらえるのが難しい生身の人間を相手にするのがカスタマー・エクスペリエンスであり、だからこそ、企業がエクスペリエンスをマネジメントできるかどうかは難しい課題です。本日のお話では、各社それぞれの立場で取り組みをされていました。しかし、手当たり次第に経験ということで追求し始めると泥沼にはまり、つかみどころのないままに終わってしまいかねません。また、よくあるように、5年後には「カスタマー・エクスペリエンス」というビジネス用語がそれほど言われなくなっているかもしれません。しかしながら、言葉は変わるかもしれませんが、今日、皆さんと議論した課題の本質は、変わらぬまま対処し続けなくてはならないと思います。各社各様で一つの答えを出すことは難しいのですが、結局のところ、自分たちに何ができて、何をやりたいのかを明確にしていくことが重要といえるのではないでしょうか。