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グローバル/グループ経営フォーラム2017 開催レポート

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グローバル/グループ経営フォーラム2017 開催レポート

 

 

2017年5月24日(水)、東京・品川のTHE GRAND HALLにて『グローバル/グループ経営フォーラム2017』を開催しました(主催:株式会社ビジネス・フォーラム事務局)。5回目の開催となる本年は「世界で戦う“マネジメントと組織”」をメインテーマにプログラムを構成。複数の市場・製品・技術・地域などが複雑に絡み合う現代のグローバル経営において、経営層、およびグローバルマネジメント担当者には、よりスピーディーで質の高い意思決定が求められております。当日の各講演やパネルディスカッションの模様についてご紹介します。

特別講演Ⅰ

株式会社村田製作所
代表取締役副社長
藤田 能孝
特別協賛セッション

Genpact Japan株式会社
バイスプレジデント
黄 衛新
ショートセッション

インテグラート株式会社
代表取締役社長

小川 康

事例講演1

株式会社三菱ケミカルホールディングス
取締役執行役専務 経営戦略部門長

吉村 修七

特別講演2

ブラザー工業株式会社
代表取締役社長

小池 利和

事例講演2

日本板硝子株式会社
執行役員 グループファンクション部門
人事部 アジア統括部長
兼 グローバル人事特命プロジェクト担当部長

梯 慶太

パネルディスカッション

YKK株式会社
執行役員 財務・経理部長

宮村 久夫

日本板硝子株式会社
執行役員 グループファンクション部門
人事部 アジア統括部長
兼 グローバル人事特命プロジェクト担当部長

梯 慶太

Genpact Japan株式会社
代表取締役社長

杉浦 英夫

ビジネスモデル学会会長
早稲田大学ビジネススクール教授

平野 正雄

創業以来大切にしている
理念と戦略に基づいた企業価値向上の取り組み

株式会社村田製作所 代表取締役副社長 藤田 能孝

 

 

 セラミック材料を中心に総合電子部品メーカーとして事業を展開する株式会社村田製作所は、ここ数年で業績を大きく伸ばし、連結での売上高は1兆円超。その売上高の90%以上は海外が占め、主力商品の大半が世界でシェア1位か2位という、グローバル市場で高い信頼を得ています。しかしながら、経営の重要機能は日本に置き、国内生産比率が70%と高い水準を維持。CS(顧客への価値提供)とES(従業員のやりがいと成長)を重視した経営風土を保ち、商品トレンドに素早く対応できる商品開発と設備投資を行っています。「ムラタグループの企業価値向上への取り組み」と題し、村田製作所の強さの鍵を握る、創業以来大切にしている理念と戦略と、それに基づいた企業価値向上の取り組みを藤田氏に講演いただきました。



理念と戦略に基づいた企業価値向上の取り組み

 

 村田製作所は、ここ数年で売上を倍に伸ばす急成長をみせています。特にスマートフォンなどの通信分野での伸びが大きく、カーエレクトロニクス分野でも着実な売上成長を維持しています。地域別売り上げでは、80年代には5割程度を占めていた日本での売り上げが2016年の数字で7%程度。93%が海外売上となっています。また、汎用的な部品からカスタム的な部品に製品ポートフォリオを広げ、売上の85%はグローバル市場で1位か2位という、非常にシェアの高い商品を多く売っているのも特徴。事業から産み出した現金の多くを研究開発投資と設備投資、M&Aなど成長投資につぎ込み、市場のニーズに合った独自の製品を早いタイミングで投入できる体制を維持しています。

 

 「企業価値を高めるための企業運営には理念と戦略が重要である。ともすると戦略ばかりになるが、やはり企業の立ち位置。企業が何を大切にして、何を価値観として運営していくか。これが非常に当社にとっては大事だ。それをベースに色々な戦略を組み立てている。当然理念だけでは立ち行かないので戦略というものがいる」と藤田氏は述べられました。村田製作所では、企業理念として創業者である村田昭氏が1954年に制定した社是を今も大切に守り、理念を社員で共有し、戦略、中期計画の基盤として事業を展開しています。村田製作所の社是にはこうあります。「技術を練磨し、科学的管理を実践し、独自の製品を供給して文化の発展に貢献し、信用の蓄積につとめ、会社の発展と協力者の共栄をはかり、これをよろこび感謝する人びととともに運営する」。

 

 電子部品業界では、同じ物を作り続けていると同じ物を作る企業が現れ、価格競争により収益が悪化することになります。村田製作所は、社是を具体的な形で経営に落とし込み、研究開発投資と設備投資を積極的に行い、新製品を供給していくことで、常に革新を図り、グローバル市場での高いシェアを維持。CSとESの実践を通じて社会・文化の発展に貢献しています。

 

 

経営で大切にしている7つのこと

 

 続いて、藤田氏は戦略の基盤として経営で大切にしている7つのことを挙げています。

 

  • グローバルな販売ネットワークによる顧客層の厚み
  • 継続的な技術開発投資(材料、プロセス、設計、製造、ソフト)による新商品開発力
  • 強い工場に支えられた製造力
  • 連結経営の強化
  • 事業を支援する経営管理システム(オールムラタで統一)
  • ガバナンスを整備して権限委譲
  • スピード経営

 

 独立系の部品メーカーである村田製作所は、どこのお客様とも取引が可能であって、直接販売比率も85%と高い数字を維持。バランスよく研究開発投資を行い、コア・コンピタンスとなる商品により高いシェアが保たれ、お客様の情報がたくさん入ってくる好循環を作り上げています。また、経営資源のほとんどを国内に持ち、自社開発のITシステムで、強い経営基盤が作つくられました。

 

 さらに、2003年から進める組織風土改革では、CS とESとを社是と並ぶ最上位の価値観とし、経営トップと管理職のマネジメントスタイルも改革。ガバナンスを整備した大胆な権限委譲で、開発力と事業運営の強化を進めています。これにより、量産化までのスピード向上や新商品比率、生産性の向上が実現されただけでなく、「言われたことをやる会社から自ら行動してやる人が増えた」と藤田氏は述べられました。

株式会社村田製作所
代表取締役副社長

藤田 能孝


昭和50年3月 一橋大学商学部 卒業、昭和50年4月 当社入社、平成4年7月 ムラタ・エレクトロニクス・ノースアメリカ経理部長、平成7年12月 経理部長、平成10年6月 取締役 経理・財務グループ統括部長、平成15年6月 取締役 上席常務執行役員、平成17年6月 取締役 専務執行役員、平成20年6月 代表取締役 副社長(現在)、著書『「利益」が見えれば会社が見える』(2001年 日本経済新聞社)執筆

 

 

迅速に対応できる柔軟性を保持し、
グローバルな事業拡大や改革に貢献できる
組織モデル、GBS

Genpact Japan株式会社 バイスプレジデント 黄 衛新

 

 

 GEの間接業務を改革する部門として、GEのグローバルビジネス成長をサポートしてきた、Genpact。独立後もグローバル企業のパートナーとして、お客様の業務改革、各種業務のアウトソーシング、シェアードサービス最適化、GBS(グローバル・ビジネス・サービス)の導入・構築プロジェクトをサポートしてきました。グローバル経営と業務効率化の最適化を目指して、グローバル先進企業が実現しているGBSの特徴、またGBSの進化について黄氏にご講演いただきました。




GBS=グローバル・ビジネス・サービスとは

 

 グローバル化が進む現代の企業経営では、製品、サービスだけではなく、ビジネスの成長を支えているオペレーションの業務効率化が求められます。また、素早いグローバル経営体制の変革も求められています。このような状況に対し、従来のシェアードサービスやアウトソーシングだけではこの要求に応えることは困難と言えます。そこで登場したのが、生み出されたGBSというモデルです。

 

 黄氏は、GBSとは「ビジネス戦略や顧客ニーズに合わせてEnd to Endで変革された業務プロセスや、M&Aによる企業統合などに迅速に対応可能な柔軟性を保持し、グローバルな事業拡大や、改革に貢献できる組織モデルです」と述べられました。GBSは、グローバル経営を意識しながら、間接業務オペレーションのコストダウンだけでなく、ガバナンスの強化やグローバル業務サービスレベルの向上、事業展開のスピードアップへの貢献が出来るオペレーティングモデルなのです。日本では実際にGBSモデルを導入した事例はまだ少ないのですが、Genpactでは50以上の世界の優良企業でGBSプロジェクトのサポートを実施。独自のフレームワークに基づき、オペレーショナルエクセレンスと融合し、設計から実行まで、お客様が目指している最適なGBSの構築をサポートしています。

 

 

GBSの4つのレベル

 

 黄氏は「新しいニーズに応えるため、GBSも徐々に進化しつつあります。」と述べられ、GBSの各段階を4つに分けて説明されました。それが、「センター・オブ・ワーク」「センター・オブ・スケール」「センター・オブ・エクセレンス」「センター・オブ・デザイン」の4段階です。センター・オブ・ワークは、機能部門別の業務シェアードサービスセンター導入の段階。センター・オブ・スケールは、地域単位で複数の部署が連携し、End to End業務を対象とするGBSになります。センター・オブ・エクセレンスは、グローバル企業が現段階で目指しているGBSのモデル。会社の経営目標に合わせて業務を統括する、拡張性が高いGBSのプラットフォームです。最後がセンター・オブ・デザインで、これは次世代のGBSモデルと考えられています。デザインシンキング方式により、あらゆる効率的なテクノロジーを導入して各機能部門が協力。ビジネスの最大目標の達成を支え、常にビジネスインパクトの成果に貢献するエコシステムとなります。

 

 今までは経理、人事、購買業務がGBSのスコープとして考えられていました。しかし、センター・オブ・エクセレンス、センター・オブ・デザインの段階になると、横断的に業務をEnd to Endで改善、設計。これにより、カスタマーサービス、マーケティング、ビジネスサービス、営業などミドルあるいはフロント業務までスコープが拡張。さらにセンター・オブ・デザインの段階にまでなれば、生産、品質、販売、業務計画のコア業務までスコープが広がります。

 

最後に黄氏は「時代に合わせてグローバルのオペレーティングモデルも変化しています。単なるコスト削減だけではなく、GBSの付加価値を充分発揮するため、ビジネスの改革方向性に従って、伝統を破壊する覚悟を持って、常にベストインクラスを超える目標にチャレンジしていきましょう」と述べられて講演を締めくくりました。

Genpact Japan株式会社
バイスプレジデント

黄 衛新


2000年中国・大連でGE Capital Internal Service(Genpactの前身)に入社。オペレーション担当、プロジェクト・マネジメント担当トランジションマネージャーを経て、金融、化学業界の顧客向けに、BPOおよびBPRプロジェクトの企画、構築、実行に携わる。東京スター銀行、日本GE株式会社を経て、2005年Genpact Japan株式会社に入社。自動車、重工業など、グローバルに事業展開する大手製造業のビジネス・プロセス・マネジメントを数多く手掛ける。人事、財務経理、購買、SCMなどの専門領域のプロセス改革に加え、多機能、多地域にまたがる組織全体の効率化を支援。近年は、ロボティック・プロセス・オートメーションをはじめとするデジタル、自動化分野のプロジェクトにも携わる。

 

 

不確実な環境での事業投資の
業務プロセスの改善と効率化を支援する

インテグラート株式会社 代表取締役社長 小川 康

 

 

 事業投資は企業の成長を達成するために不可欠の業務です。しかし、事業投資はその重要性が認識されていながら、多くの人が関わることで意思決定が難しくなり、経験の蓄積も簡単にはできません。1993年の創業以来、不確実な事業環境での事業投資業務支援に一貫して取り組むインテグラート株式会社は、事業現場における実務の理解と、複雑な事業投資の業務プロセスの改善、効率化を、コンサルティングとソフトウエアで支援しています。小川氏には、事業投資業務の指針として役立つ、仮説指向計画法(DDP)のポイントを解説いただくと共に、投資リターン向上を目指す事業投資マネジメントシステムをご紹介いただきました。



不確実な事業の企画・管理の理論「仮説指向計画法(DDP)」

 

 小川氏は「今まで以上に持続的な成長、中長期の目標数値に関する説明責任が問われるようになっている。しかし、まず社内における情報共有ができていないと、経営陣、投資家、関係者への説明もできない。社内における適切な情報共有が基礎となり適切な情報開示が可能になる」と述べられました。例えば、意思決定までは多くの関係者で議論されるのに、実行後は現場任せで担当者や責任者の所在も曖昧。一時的に乗り切るための根拠のない数字を提示するようになり、忘れた頃に同じような失敗を繰り返す。事業投資の課題は、認識されているにもかかわらず、解決、改善されていないものが多い傾向にあります。

 

 このような、不確実な問題の多い事業投資の企画、管理の理論としてDDPが有効に働きます。DDPは、大きな失敗を防ぐリスクマネジメントを目的として、ペンシルバニア大学ウォートンスクール教授イアン・マクミランとコロンビアビジネススクール教授リタ・マグラスが、アメリカ企業にUSD 50 million以上の損失をもたらした失敗例の研究に基づいて開発されたものです。GE、メルク、デュポンなどの大手企業、コンサルティング会社イノサイト等がこれを採用しています。

 

 DDPでは、事業計画は仮説(成功に必要な条件)で構成されているとし、詳細な計画よりも、どのように考えたのかという仮説を明確にすることを重視しています。立てた仮説を継続的に確認し、外れていく仮説に対応して事業計画を柔軟に修正することが求められます。目標数値だけを合意していると、事業環境への変化に対応しにくくなるので、意思決定では数値だけでなく、必ず成功のために必要な条件(仮説)を合意することが大切です。「我々は、何に賭けているのか」という思考を組織的に共有し、仮説は外れてくるものという前提の元、「その仮説は、まだ生きているのか?」を問いかけ、継続的なプロセスを行うことが価値最大化の鍵となります。

 

 

事業投資マネジメントシステムとコンサルティングの概要

 

 続いて小川氏は、価値最大化を目的とした事業投資業務支援システムRadMapの製品シリーズを紹介されました。RadMapは大手企業を中心に、既に43社への導入実績があります。プロジェクト評価システムRadMap/projectは、事業やプロジェクトの個別バリュエーション、各事業・プロジェクトの価値の最大化を図ります。ポートフォリオ評価システムRadMap/portfolioは、複数事業や複数プロジェクトのバリュエーション、プロジェクトミックス、製品ミックス、戦略の組合せ等の最適化を行います。不確実な事業投資の仮説を明確にすると共に、定期的なアップデートを継続することによって評価の信頼性が向上。企画業務を支援する専用システムとして、記録を残し、以前の検討内容に基づく事業性とどこが違うかの比較や、他プロジェクト・過去プロジェクトとの比較を容易に行えます。さらに関係者との情報共有を促進する可視化機能も備え、長期間一貫した業務の継続性を支援していきます。

 

 小川氏は「従来のマネジメントの仕組みは、結果の管理に重点を置いていた。新しいマネジメントの仕組みは、常にゴールに注目する」と述べて、講演を締めくくりました。

インテグラート株式会社
代表取締役社長

小川 康


不確実性下のビジネスプランニング理論研究の第一人者、ペンシルバニア大学ウォートンスクールのイアン・マクミラン教授の研究センターに2年間勤務し、直接指導を受ける。R&D投資・新事業・設備投資・M&A等の不確実な事業投資に関し、製造業・製薬会社・電力・ガス・総合商社等に対するコンサルティング・研修・事業投資マネジメントシステム導入の実績を豊富に持つ。著書に『不確実性分析 実践講座』(ネクスプレス、共著)がある。

 

 

 

 

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