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New Business Creation Forum 2018 3rd 開催レポート

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New Business Creation Forum 2018 3rd 開催レポート

 

 

 

開催日:2018年 3月 20日(火)

主催:株式会社ビジネス・フォーラム事務局


 

 2018年3月20日、東京・赤坂インターシティ コンファレンスにて『New Business Creation Forum 2018 3rd』を開催しました。シリーズ3回目となる今回は、社内外の"つながり方"と"組織“の観点から、戦略的な新事業創出のあり方を考察していくものです。業種やライバルなどの垣根を越え、自前から連携への動きが加速する時代。今や形式的な連携活動も一巡し、その先の結果が問われています。ほぼ全ての日本企業があらゆる戦術を駆使し生き残りを掛けた新事業創出に挑む “闘争状態”の現在、いかに地に足のついた戦略的活動から、実際の成功へと導くか。この日に行われた講演やパネルディスカッション、そしてテーマにちなんで行われた参加者同士の様々な交流の模様を紹介します。

特別ゲスト講演Ⅰ

パナソニック株式会社
ビジネスイノベーション本部長
コーポレートイノベーション担当
パナソニック ノースアメリカ株式会社 副社長

馬場 渉

特別協賛講演

VALUENEX株式会社
代表取締役CEO

中村 達生

特別対談セッション

三井化学株式会社
常務執行役員 研究開発本部長

福田 伸

 

株式会社rimOnO
代表取締役社長 (元経済産業省 官僚)

伊藤 慎介

特別ゲスト講演Ⅱ

横河電機株式会社
常務執行役員 兼 マーケティング本部長

阿部 剛士

協賛講演

株式会社インヴィニオ
代表取締役

土井 哲

特別パネルディスカッション

Yamaha Motor Ventures & Laboratory
Silicon Valley Inc.
CEO and Managing Director
(ヤマハ発動機株式会社)

西城 洋志

 

Honda R&D Innovations, Inc.
CEO
株式会社本田技術研究所 執行役員

杉本 直樹

 

株式会社ジャパンディスプレイ
執行役員 CSO 兼 CMO
伊藤 嘉明

 

VALUENEX株式会社
代表取締役CEO

中村 達生

 

 

特別ゲスト講演1【変革する組織の新事業戦略】

 

パナソニックにおける「大改革」
 ~ イノベーションを“量産”し続ける組織へ ~

パナソニック株式会社 ビジネスイノベーション本部長 コーポレートイノベーション担当

パナソニック ノースアメリカ株式会社 副社長   馬場 渉

 

 

  創業100年を迎えるパナソニックは、2017年4月より、「タテパナ」から「ヨコパナ」への大規模な組織改革とともに、IoT・AI技術を柱とした新事業創出や、外部企業との積極的な連携強化を進めるなど、まさに常識破壊の「大改革」を進めている。シリコンバレーに活動拠点を置き、パナソニック全社のイノベーションを牽引するビジネスイノベーション本部長の馬場氏が、イノベーションを生み出し続けるための仕組みと組織づくりについて語った。

タテパナで最適化された組織や風土をヨコパナで通す、
クロスバリューイノベーション

 

 

 パナソニックは、創業100周年の今年、世界一の奪還を目指しています。これは、競争に勝つか負けるかということではありません。この20年の日米逆転の流れを非常に感じる中で、創業者・松下幸之助の考え方を実現するためには、とにかく世界一を目指さなくては駄目だと、入社後に覚悟したからです。

 

私がパナソニックに入って一番驚いたことは、競合の話を多くすることです。常に誰かと比べて自分を表現している。これではいけないと思いました。1位であることは、自分に責任がかかってきます。もちろん2位、3位の会社も同様です。そのように既に自立している会社はたくさんありますが、この会社はまず世界一を奪還しないと、創業者が考えてきたことに目が向かないだろうと思いました。つまり、競争に勝ちたいのではなく、そもそもパナソニックが生まれてきた形を取り戻すために、世界一にならなければいけないということです。

 

 まず社内で「世界一を奪還するぞ」と話して、その方向性を議論しました。その結論が「タテパナ」から「ヨコパナ」だったということです。まず、タテパナは従来の形です。当社の場合は、テレビ事業部、ビデオ事業部のように製品ごとで区分した縦割りの事業部があります。これはモノを作るための全体のプロセスを最適化しようとすると、その括り方が一番適していたからだと思います。そして、これからはヨコパナです。世界一奪還の条件は、縦をより良くするために頑張るのではなく、横を通すということです。つまり、タテパナで最適化された組織や風土をヨコパナで通す、「クロスバリューイノベーション」です。戦略的な内製化を進めて、まずパナソニックが変わることを目指しています。外から見ると、多岐に亘る技術、業界向けソリューション、個人向けサービスなどさまざまなものを持っているのに、中に入ってみると、ほとんど縦割りで前進しないということは、どの会社にもよくあることだと思います。しかしまずそれらを横に通すことで、一枚岩となり、どこからアクセスしようがオールパナソニックになる、ということを我々は目指します。

 

スローでリスクを取らない従来型のプロセスではなく、スタートアップよりスピーディーでシンプルなプロセスという組織能力を持てば、外の企業やオープンイノベーションのパートナー企業にも魅力的に見せることができます。これが非常に大切で、当たり前のことだと思います。オープンイノベーションを成功させるためにも、まず自分たちが魅力的でなければなりません。

役職を捨てて役割を見つけるようになった、
スピード重視のプロトタイピング

 

 

 事業部のヨコパナ化は、社内カンパニーで進めています。まず、パナソニックβという組織をシリコンバレーに作りました。この新しい空間では、全く新しい人の交わり方や仕事のプロセスにより、事業部のヨコパナ化に加え、職能のヨコパナ化も進めています。主に30歳前後の若い世代が90日間ここに来て、同様のプロジェクトに取り組むのです。さまざまな職種、職能の者たちが、事業部の所属を越えて一つの会社のように働く場とプロセスを提供しています。

 

 パナソニックβで実現しようとしていることは、過剰な完璧主義からの脱却です。完璧にやるよりもすぐにやってしまうほうが、より完璧に近づきます。要するに、過剰なパーフェクション文化から、不完全を寛容する多試行の文化に変えているというわけです。形や仕組み先行の場合、有効性がどうかと言われる問題があるので、まずはやってしまい、パナソニックでも全く違うやり方でできるのだということを見せます。

 

「90日でできないことは2年かけてもできない」という表現がシリコンバレーではよく使われますが、90日というのは、一つの仕事を行うスピード感のパッケージとしてちょうどいいのです。30日でもなく60日でもなく180日でもなく、90日なのです。パナソニックβでは、全てのカンパニーからさまざまな職種の人が来て実際にモノを作りますが、ここではとにかく頭を動かす前に手を動かし、フェイルファースト(fail first)で、人間が触ったり見たりして感じられるモノをどんどん作っています。この方法で実際に出てくるモノの数も増え、スピードも従来の5倍から10倍ぐらい早まっています。

 

また、社員からも「これまで上司ファースト、関連部署ファーストだったが、ユーザーファーストになった」、「所属部門ごとの商品やサービスに限定された狭い思考回路から解放された」「最速で物事を進めるためのプロセスを考えるようになった」「職能や部門を超えたコラボであるヨコパナは、事前調整が大変だと思っていたが、ここではどんどん行える」という声をもらっています。そしてこれは結構大切なことなのですが、「役職を捨てて役割を見つけるようになった」という声もありました。要するに、「何々事業部でエンジニアをやっています」と言っても実際は意味を持ちません。自分が何者かを自問自答しながら、そのチームの中で貢献できる領域を見つけるようになったようで、これは非常に大きな成果だと思っています。

 

昔は、考えて仕様を説明して承認されてから作ったものが、ここでは、「まずは作ってみる」、「とにかく作って考える」ということを行っています。我々のような堅い大企業で、かつ今まで社内で横の繋がりもなかったような会社でも、さまざまな部署から人が集まって、きちんとしたコミットメントのもとで行えば、こういったことも3カ月くらいでできあがるのだと思っていただけばいいと思います。

 

 我々のHomeXプロジェクトの取り組みも然りですが、とにかく作って考えることから始め、まずはモノを見て、走りながらそれをモデル化、汎用化し、抽象化していきました。その抽象化されたヨコパナの仕組みが、パナソニックβというわけです。但し、これが傍から見て「シリコンバレーで何か楽しそうにやっているらしいよ」というだけでは、会社全体は変わりません。イノベーションを量産化するために、これを全社に適用してバックするということを、今後もこのようなプロセスを通して進めていきます。

パナソニック株式会社
ビジネスイノベーション本部長 コーポレートイノベーション担当
パナソニック ノースアメリカ株式会社 副社長

馬場 渉


2017年4⽉パナソニック株式会社⼊社。ビジネスイノベーション本部副本部⻑コーポレートイノベーション担当として全社イノベーション推進を担う。2018年4月よりビジネスイノベーション本部本部長に就任。⽶シリコンバレーに拠点を置き、パナソニックノースアメリカ株式会社副社⻑を兼務。パナソニック⼊社前はSAP本社カスタマーエクスペリエンス担当バイスプレジデントとしてシリコンバレー・パロアルトに籍を置き、外部の⼤規模組織に対しデザインシンキングと最新テクノロジーによりイノベーション⽂化と実⾏能⼒を経営戦略として取り込むハンズオン型アドバイザリーに従事。公益社団法⼈⽇本プロサッカーリーグ(Jリーグ)特任理事。

特別協賛講演【新事業創出のための俯瞰解析】

 

俯瞰解析による未来予測×新事業戦略
~ 技術、市場、社会を分野横断的につなぐには? ~

VALUENEX株式会社 代表取締役CEO    中村 達生

 

 

 あらゆる情報が横断的につながる今、必要な情報をいかに適切につなぎ読み解くかが、異業種間の激しい競争を勝ち抜く鍵となる。自社のポジションを知り、次のビジネスチャンスとなる空白領域や適切なアライアンス先を発掘することは、まさに戦略的な事業創出を可能とするが― その未来予測は果たして可能か。代表取締役CEOの中村氏が、情報の俯瞰解析手法を紹介しながら、その実現に向けたポイントを語った。

高精度の俯瞰解析で、情報の関係性や重要度を正確にビジュアルで表現する

 

 

 VALUENEX株式会社は、シリコンバレー、ヨーロッパ、そして日本に拠点を置きグローバルに活動しています。我々は、ビッグデータ解析によるPredictive Analysis(未来予測)をお客様へご提供しています。特許・知的財産をはじめとする大量のデータを可視化するのですが、これはあくまでスタートポイントであり、可視化した俯瞰図から顧客の課題解決に資する知見を得ることに重きを置いています。次に我々のツールで可視化した俯瞰図について説明します。新聞や論文など様々な文献情報1つ1つのデータをそれぞれ1つの「点」で表します。点と点の間の距離は類似性を表し、個々のデータがどれくらい近いか相対的な関係を視覚的にみることができます。類似するデータ同士の点は密集し、情報が異なるものは隔てるように配置します。各点の関係をいかに正確に表現するかということに注力しています。

 

 我々は独自のアルゴリズムを用いて、数千から数万の各点を6000万次元という非常に高精細な精度で可視化します。ビッグデータ解析をする際は、これくらいの精度がないと正確な結果が出ません。過去に似たような解析を経験された方も多いかと思いますが、結果から知見を得られなかったことは多いのではないでしょうか。その要因の多くは精度が出ていないからです。我々は、高い精度を出すことで、結果をどう表現したらいいかということを粛々と行ってきました。

 

人間は、何か情報を理解するとき、テキストに落とし込んでから理解することが多いですが、これは逐次処理しかできません。一方、「見ること」はその逆で、パッと見て全体像が感覚的にわかりますが、やはり理解するためには一度テキストに変換しなければなりません。であれば、それらを組み合わせて、「テキストを見ること」ができるようにすれば、素早く全体像を掴むことができ、しかも内容が理解できます。これが情報を1枚の絵にまとめる“可視化”という考え方です。

 

 では、このような俯瞰解析手法を用いて何ができるかについて簡単にご紹介します。人のネットワークを解析することで、誰が重要人物かわかります。またこれを応用して、魅力的なスタートアップを発掘したい場合には、世界中のスタートアップのデータベースを解析して、狙うべきスタートアップを探し出すことも可能にします。

未来の製品やサービスは、長い視点で俯瞰して組み立てていく

 

 

 我々は、お客様が未来の製品やサービスとしてどういうものを作ったらいいかということを、エビデンスに基づいて組み立てていくお手伝いをしています。お客様から頂くお題としては、「2030年までに何を作ったらいいのか?」十数年後にゴールを置く課題が非常に多いです。でも我々はまず、「その先の2050年まで見るべきではないですか?」とお答えしています。その上で、一旦割り戻して2030年を見ましょうと提案します。そうすると必ず、「その時私は会社にいないから」「そこまで求められてはいないから」という応えが返ってきます。しかし、今我々に必要なのは、長い視点で物事を考え、そして今何をするのか、ということだと思っています。

 

 では、実際はどのようにやっていくのか。まずは現実をきちんと見ることです。足元にある既存技術をしっかりと見るのです。大企業の場合はこれが「穴ぼこ」だらけなので、その穴にチャンスがないかということをまず探ります。次に、事業を3つに分けて考えていきます。1つめが先進事業、2つめが創造事業、3つめが未来事業です。先進事業は、ある意味、既存事業の応用事業です。今取り組んでいる事業をそのまま少し横展開をした時、どういう事業ができるかということです。続いて創造事業は、現在自分たちが持っている製品の技術、あるいは製品を作るための技術を利用して新たな事業を興すということです。

 

 最後に、未来事業とは、今使っている製品の技術や方法論は一切使わず、会社としてチャレンジしがいのあるテーマのことを言います。つまりそこにマイルストーンを置いて向かっていくことで、2030年頃に副次効果が出る可能性があるという事業のことです。こういったテーマは実はあらゆるジャンルで存在していて、それを作れるか作れないかがとても重要だと思っています。例えば自分たちが今取り組んでいる事業があり、それを支えている重要なテクノロジーがあるとします。しかし、さらにもう一段掘り下げてみると要素技術が存在していて、その要素技術は全く異なる分野の事業でも使われていることがあります。そうすると、一見サービスレベルで見ると大きなギャップがあったり、全く関係ないと思ったりするような事業にも手が届くかもしれません。そして、これを俯瞰図で見るとより明確になります。「自分たちのやっているのはここだ」、「そこには地下水脈があって共通項の技術が根を張っている」、「もしかすると自分たちはこっちの領域まで手が届くかもしれない」、ということに気づきます。もちろん戦略は必要なので、自分たちで研究開発をして進むのか、アライアンスを組んでそこへ行くのか、それは戦略や考え方次第ですが、少なくとも自分たちの対象領域が広がるのです。このような考え方・手法は、新事業戦略を考えるのに役立つと思います。

VALUENEX株式会社
代表取締役CEO

中村 達生


埼玉県出身。1991年、早稲田大学大学院理工学研究科機械工学分野を修了後、三菱総合研究所に入社。コンサルティングに従事。可視化アルゴリズムや俯瞰解析ソフトウェアを開発し、知財調査・ビッグデータ・予測分析分野にてソリューションを展開。1994年から1998年まで東京大学工学部助手として勤務。三菱総研に復職後、2005年に工学博士を取得。2006年に膨大な情報を解析的に取り扱うことの必要性と意義を訴えてVALUENEX株式会社を設立、代表取締役CEOに就任(現任)。2014年2月米国カリフォルニア州メンロパークに現地法人を設立、CEOに就任(現任)。1年のうち約半分を海外にて活動。現在、早稲田大学理工学術院非常勤講師も務める。

特別対談セッション【大手企業×スタートアップの戦略的連携】

 

三井化学 × rimOnO の連携が起こす
 イノベーション
 ~ 戦略的連携を実現する、仕組みづくり ~

 

三井化学株式会社 常務執行役員 研究開発本部長  福田 伸

                            ×

株式会社rimOnO 代表取締役社長(元経済産業省 官僚)  伊藤 慎介

 

 

 

 日本初の布製超小型モビリティの開発に取り組む、2014年設立のベンチャー企業、rimOnO。積極的なオープンイノベーション活動を進め、研究開発部門の改革に取り組む、大手素材メーカーの三井化学。両社は、2015年3月から共同のプロジェクトを行っている。大手企業とベンチャー企業の連携においては、世の中の成功事例も少ない中、上手く機能させる仕組みとそのポイントとはいかなるものか。三井化学 研究開発本部長の福田氏と、rimOnO 代表取締役の伊藤氏による対談で、それぞれの視点から、率直な意見と互いへの本音が語られた。

出会い、そして、熱量が一致して共同プロジェクトがスタート

 

 

 

福田:研究開発や新規事業については、「顧客起点のイノベーション」と「ソリューション力の強化」という2つを行おうとしています。rimOnOさんとの取り組みも、この2点の推進という視点から入っています。従来は、素材を提供して使って頂くだけでした。20世紀は新素材の時代で、用途はあまり考えなくても新しいものを作ればよかったのです。しかし今は、材料を作っていればいいという時代ではなくなってきています。ソリューション力を高めて材料の使い方まで提案する、そういう取り組みをしたいと考えています。そして、その実現にはコミュニケーションが必要です。従来であれば、営業担当が物性表を持っていって、「こんな素材があります」と見せればだいたい終わりでした。営業担当も研究担当も、お客様とのコミュニケーションが少なかったのです。しかし今回のような取り組みは、大企業だけではやりづらいのです。オープンイノベーションの形で、いろいろな外の力、ベンチャーの力を借りてやることになります。rimOnOさんに出会って、ではどうやろうかと共同で始めさせていただいたのも、このような背景からです。

 

伊藤:私は経済産業省に15年勤務して、自動車、IT、航空機など、様々な産業分野を担当してきました。そして、役所の立場からオープンイノベーションを推進してきた経験があります。今は電気自動車のベンチャー企業を経営していますが、経産省で最初に電気自動車に取り組むことになったときは、まだ自動車にリチウムイオン電池が採用されるかどうかという初期の段階でした。良い電池ができないと、電気自動車も燃料電池車もハイブリッド車も性能向上できないということで、開発目標を制定し国家プロジェクトを立ち上げました。騒音も排ガスも出ない電気自動車で、ライフスタイルを変えるような街づくりをもっと提案できたら、という思いがありました。

しかし、政府主導でオープンイノベーションを進めていくと、結果として数多くの会社が参加したとしても、皆さんが同じ熱量で参加しているかというとそうでもない。他社が参加しているからうちも手を挙げなくては、みたいな会社もあります。結果として予算の消化のために何となくプロジェクトを続けている形になっていって、そもそも仕掛けた私も人事異動になってしまう。このままではうまくいかないとの考えから、自らがリスクを取ってプレイヤーとして取り組むべきと思い辞職して起業したのが経緯です。

弊社が起業したのは2014年の9月ですが、プロジェクトに協力していただいている全社とも、起業した9月以降に出会っています。三井化学さんとの出会いは2015年3月です。当時、東京都が運営する神田のインキュベーション施設にオフィスがあり、雑居ビルにある古びた会議室に巨大企業である三井化学の研究者の方が自ら足を運んでくださりました。そのことだけでも驚くべきことですが、研究所からたくさんの材料サンプルを持ち込んでいただき、「こういう材料が新しいクルマに使えませんか」と提案してくださったところからスタートしています。

双方が全く新しいモノづくりにチャレンジできる、
Win-Winの関係性

 

 

伊藤:どうして三井化学さんは、我々と共同プロジェクトをやってくださったのでしょうか?

 

福田:先ほど申し上げたとおり、まず、素材メーカーとして素材を売っているだけでいいのだろうかという思いがあったからです。当面はいいけれど、モノを作って実際に使ってもらえるような形にすることをしないといけない、このままではいけない、と考えました。そうすると、一緒にそれをやっていただけるパートナーが必要になってきます。その時偶然rimOnOさんを知って、「まずは行ってみようじゃないか、話を聞こう」、そして「どうせ行くならいろいろなものを持っていこう」となったわけです。これはよく言われる話ですが、研究所から外に出ると何をしていいかわからない、どんな素材をどんな所に使っていいかわからない、ということがあります。もっと、どのように使えばどういうメリットがあるか、という「考えるモノづくり」をしようと。そういうマインドを育てることを、rimOnOさんにお手伝いいただいている。我々にとってこのプロジェクトはそういう位置づけなのです。

 

伊藤:うちのデザイナーやエンジニアは、自動車業界で使用実績のある材料や部材を使って新しい自動車や自動車部品を作るという経験はありましたが、材料そのものからチャレンジできる機会はなかったようです。rimOnOからすると、材料のレベルから挑戦できるということ自体が面白いことでした。三井化学さんの研究者の方々とのミーティングの場に行くと、「これはこういう風に使えませんか」、「これをここに使うのはどうですか」みたいなご提案が沢山あり、会議が非常にクリエイティブであり、「次の展示会までに試作品を作ってみませんか」など具体的な出口を目指すものになっていて、非常に面白かったです。作りたての試作品を宅配便で送ると壊れてしまうリスクがあるとのことで、わざわざ研究所の方が事務所に自ら持参していただいたこともありました。そこまでやってくださるという、「熱意」や「スピード感」に非常に感銘を受けました。そういう意味で三井化学さんは社内がすごくベンチャー的なのかなと感じました。

 

福田:他の大手企業の中にも、そういうマインドを持っている方は結構いらっしゃると思います。ただ、どうしても大きなマネージメントの中で仕事をすると、それをやることは難しいということがあるかもしれません。やはり1つは、「このままじゃいけない」ということと、もう1つは、それを「許容していく文化」。この2点がないと、どうしてもできないのかなと思います。当然、大きな会社は大きなマネージメントで動きますから、大きな製品に取り組む場合と、こういった取り組みの部分のマネージメントをどう分けるか。マネージメントの問題も多分にあるなと思っています。

互いが化学反応を起こし、そして連鎖反応へ
イノベーションの鍵は、「やりたい人に、いかに火をつけるか」

 

 

伊藤:三井化学さんと話をしていると、「それなら別の部署が開発している材料を使えないか聞いてみます」とか、「あのブースに展示されている材料で今度試作品をつくってみませんか」とか、自ら提案して頂くことが数多くあり、どんどん新しいことに挑戦しやすい文化が整っていて非常に羨ましいなと思います。スーパーマンが1人いて、その人が全部やる、みたいなイノベーションもあるのでしょうが、そのやり方だとスーパーマンがいなくなったら全て終わってしまう。もちろん三井化学さんにもスーパーマンがいっぱいいらっしゃると思うのですが、「スーパーマンじゃなくてもやれる」みたいな文化もあるように感じています。実はそういう文化こそ日本の大手企業が学ぶべきではないかと思うのですけれども、実際にはどのようにして文化を形成されているのでしょうか?

 

福田:非常に褒めていただいているのですが、社内的には実際かなり縦割りで、それが課題になっています。意外と研究所の中でも隣でやっていることを知りません。どうやって新しいことをやるかというと、残念ながら100%行き渡るのは難しいところがあります。そうすると、平等文化ではなく、「できる人、やりたい人を集めて、その人たちにいかに火をつけるか」。それに尽きるかなと思います。そういう意味で、rimOnOには着火剤になっていただいています。やりたい人は、いったん火がつくと、別に言われなくてもコミュニケーションをとるようになります。「人材的なもの」と、「いかに火をつけるか」。そういう活動が、一つのキーになっているのかなと思います。

 

伊藤:化学反応は励起状態(エネルギーが高い状態)にならなければ起きない。基底状態(エネルギーが低い状態)の人にオープンイノベーションをやれと言っても何も起きないと思います。やはり「励起している状態をどう作り出すか」ということがすごく大事だと思います。そして、励起された人たちが繋がっていくと、どんどん連鎖反応が起きていくのではないかと思います。研究者の方々が直接お客さんと触れ合う機会ができることによって、その方自身の中でも化学反応が起きているのではないでしょうか。BtoBの会社であってもBtoCの会社であっても、最終的には自分自身が消費者で、家族も友人もみんな消費者なので、消費者目線をちゃんと持てること自体がすごく大事であるような気がします。

 

福田:ある意味、自分の固定観念を捨てて、世の中を広く見てみる。それにより、お客様が困っていることをどうやったら解決できるのかというのを真剣に考える。そういうことなのだと思います。

三井化学株式会社
常務執行役員 研究開発本部長

福田 伸


1986年北海道大学工学研究科原子工学博士課程修了後、同研究科にて助手として勤務。その後、日産自動車株式会社宇宙航空事業部勤務を経て、1992年三井化学株式会社(当時三井東圧化学)に入社。マテリアルサイエンス研究所GL、複合技術開発部長、新材料研究センター長を歴任。2012年より新規事業創出を担当する環境・エネルギー事業推進室長、次世代事業開発室長を経て、2017年より常務執行役員・研究開発本部長。

 

株式会社rimOnO
代表取締役社長 (元経済産業省 官僚)

伊藤 慎介


1999年に通商産業省(現 経済産業省)に入省。自動車課では次世代自動車用蓄電池の技術開発プロジェクト設立、情報経済課ではスマートハウス、日本版スマートグリッドの国家プロジェクト設立、航空機武器宇宙産業課では国産ジェット機の国家プロジェクトに従事するなどの経験を経て、2014年7月に経済産業省を退官。同年9月に株式会社rimOnOを設立。2016年5月に布製ボディの超小型電気自動車”rimOnO Prototype 01”を発表。現在もオープンイノベーション型で開発を進めている。