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CVC Interview vol.2 後編

CVCインタビュー:YJキャピタル株式会社 代表取締役社長 堀新一郎氏 <後編>


・選ばれるベンチャーキャピタルになるために、

 人間的、社会的信頼が必要

・提案するコーポレート・ベンチャー・キャピタルになる

・投資先と本体とのシナジーを生むことがCVCの重要な役割―

 

YJキャピタル株式会社
代表取締役社長 堀 新一郎 氏

圧倒的なパフォーマンスで1号ファンドを成功させ、2号ファンドでも国内トップクラスの規模で運用を行うYJキャピタル株式会社。同社の代表取締役、堀新一郎氏へのインタビュー後編です。今回、樋原准教授は堀氏に、ベンチャーキャピタリストに必要なもの、注目の投資先などを聞きました。

 



 

樋原:堀さんのこれまでのキャリアから見て、ベンチャーキャピタリストに必要なものは何でしょうか?

 

堀:ベンチャーキャピタリストとして必要な要素の99%くらいを占めるのが、起業家を発掘する力、または起業家に声をかけてもらえる力です。その人の持っているネットワーク力、人間力のようなものが非常に大きく影響しますが、まさにそれが必要です。個人商店に近いので、やはり相手から選ばれないといけません。YJ キャピタルに参画させていただいてから意識するようにしたのは、情報を発信することです。情報を発信して、顔と名前と考えていることが世の中に知られていくことが非常に重要です。人的なつながりとは、「堀さん(YJキャピタル)はすごくいいから紹介しますよ」と言ってくれる人がいるかどうかです。ホームページから「投資をしてください」と相談をいただいてから投資に至るケースは、年に1社あるかないか。ですから、こちらから行く、または紹介してもらうことになります。日頃からお互いにお客さんを紹介したり、採用に協力したり、ファイナンスの相談に乗ったり、ヤフーだけではなく競合であってもつなげてあげる。日頃からそのような活動をすることで、人間的、社会的に信頼を得ていくことが非常に重要です。

 

 そうは言っても、投資先の収益性を予測してリターンがいくら出せるのかは見なくてはいけないので、ビジネスデューデリジェンスや財務デューデリジェンスの力も重要です。これは戦略コンサルタント、会計事務所、証券会社、投資銀行などで身につけることができる能力です。それにプラスして法務デューデリジェンスのようなリーガル面の、より専門的な知識も必要になってきました。証券会社や保険会社のようなセールス力も必要です。コンサルティング会社に求められるビジネスを理解する力、分析する力とか。会計事務所で求められる財務や投資収益性の分析の能力、弁護士が持っているような投資契約の知識などなど、さまざまな能力が必要になってきていて、まるで総合格闘技のようになっています。

 

 ここまでは投資するまでの話で、その次には投資後の問題への対応力が求められます。「事業がうまくいかない」「社員がやめました」「来月資金ショートしそうです。どうにかなりませんか」となって「じゃあ今から銀行に行くか」とか。そこはまさに総合格闘技の本番のようです。実質その会社の経営メンバーの立場で、経営をサポートしていくことが求められます。


 

樋原:今、注目している地域や先進的な分野は何があるでしょうか?

 

堀:東南アジアは注目しています。私は東南アジアに駐在していたこともあったので、人脈を持っていました。その人脈やネットワークを使い、私自身が足繁く通いました。東南アジアのマーケットには、アメリカの会社がまだ本格的に参入していません。日本とは物理的な距離と文化的な距離が比較的近いこともあります。東南アジアは、今後のヤフージャパンにとって、中長期的に可能性があるマーケットと考えています。

 

 そしてYJ キャピタルのコーポレートミッションには、事業シナジーとキャピタルゲインがありますが、やるべきことは、本体であるヤフージャパンの中長期の事業開発であると定義しています。ヤフージャパンの事業部では直近の売上・利益を見ることも必要ですし、ある程度は現在の事業との連続性も前提となります。そうなると、仮想通貨、AR、VR、AIなど、先進的な技術分野に思い切った投資ができないということが起きてしまう。そういった分野が立ち上がってから取り組もうとすると手遅れになります。3年後とかを見据えて、今からやっておくべきことは何だろうということを、我々が先行してやっていくという役割を意識しています。

 

 この部分は2つの軸で考えていて、1つはマーケット、もう1つがテクノロジーです。マーケットは、中国やアフリカやインドなどいろいろある中で、実現可能性と今後の成長性という意味で東南アジアをピックアップしています。テクノロジーでは、サイバーセキュリティ、 AI、 VR、 AR、ブロックチェーン、IoT などに注目しています。主戦場は北米とイスラエルで、YJテックファンドはこういったテクノロジー領域の攻略を目指して立ち上げられました。


 

樋原:最後にコーポレート・ベンチャー・キャピタルを目指す方にメッセージをお願いします。

 

堀:「コーポレート・ベンチャー・キャピタルをどのようにやっていくか」「あるべき姿」といったテーマで、この2年くらいの間にイベントでお話しする機会がたくさんありました。そういうテーマをずっと考えてきて明確に出た結論は、シナジーとキャピタルゲインは両方やらなくてはいけないということです。

 

 社内からイノベーションがなかなか生まれないという背景から、コーポレート・ベンチャー・キャピタルが生まれています。コーポレート・ベンチャー・キャピタルが投資した先と本体とのシナジーがないと、イノベーションになりません。投資するだけではなく提案も必要なのです。そこをつないで実績を積み上げていくことが重要ですし、それを期待されていると感じています。大企業のコーポレート・ベンチャー・キャピタルだと、シナジーは事業部に任せてしまい、投資をしてしまったらあとは知らないということが多い。私も叱られました。「今まで紹介してきたじゃないですか。つないできましたよ」と反論したら、「堀はつなぐことしかやってない」と言われ、「もっとやるんですか?」と聞いたら「もっと提案して欲しい。頭出しだけじゃなく、事業部がスタートアップとどういう取り組みをしたいのか考え、提案するところまでやりきって欲しい」と。なるほどそうだな、やっていなかったなと思いました。確かに投資しかしていなかったんです。つなぐことが私の役割と勘違いしていたと思います。

 

 そして、今まではインターネット業界とか投資経験のある人でやってきたのですが、もう少し総合格闘技的なところで、コンサル出身者だったり、商社出身者だったり。大企業の人たちを動かし、ヤフーを動かしていける人。事業創造できる人。そういうメンバーにYJキャピタルに参加してもらって日本一のコーポレート・ベンチャー・キャピタルを作っていきたいなと考えています。

 

貴重なお話をありがとうございました。

YJキャピタル株式会社 代表取締役社長 堀 新一郎

慶應義塾大学(SFC)卒業後、フューチャーシステムコンサルティング株式会社(現フューチャーアーキテクト株式会社)を経て、 株式会社ドリームインキュベータ(DI)にて経営コンサルティング及び投資活動に従事。 2007年よりDIのベトナム法人立ち上げのため、ホーチミン市に赴任。 ベトナム現地企業向け投資を行う50億円のファンドのソーシング及びバリューアップに携わり、 5年半に亘るベトナム駐在を終え2012年に帰国。 2013年よりヤフー株式会社に入社しM&A業務に従事。2013年7月よりYJキャピタルへ参画。 2015年1月COO就任、2016年11月より現職。アクセラレータープログラムCode Republic共同代表及び、ソフトバンクのグループ内新規事業開発・投資会社である SBイノベンチャー株式会社取締役兼務。


 

 

 


インタビューアー:
樋原 伸彦

1988年東京大学教養学部教養学科(国際関係論)卒業、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。世界銀行コンサルタント、通商産業省通商産業研究所(現・経済産業省経済産業研究所)客員研究員、米コロンビア大学ビジネススクール日本経済経営研究所助手、カナダ・サスカチュワン大学ビジネススクール助教授、立命館大学経営学部准教授を経て、2011年から現職。米コロンビア大学大学院でPh.D.(経済学)を取得。専門はファイナンスとイノベーション、特にベンチャーキャピタル、コーポレート・ベンチャー・キャピタル、エコシステムなど。


担当:
ビジネス・フォーラム事務局 プロデューサー 山本 沙紀

立命館大学にてベンチャーファイナンスを専攻。サービス系ベンチャー企業を経て2013年ビジネス・フォーラム事務局に入社。New Business Creation Forum企画考案・企画者。他、人事系・製造業など幅広く企画を担当。