近年、企業を取り巻く環境は、生成AIなどのテクノロジーの進化、グローバル化の加速、社員の価値観の多様化、そして予期せぬパンデミックといった要因により、かつてないスピードで変化しています。このような激動の時代において、「ヒト」に関する戦略を担うCHRO(最高人事責任者)の役割と求められるスキルは、大きく変遷しており、単なる管理部門の責任者から、経営の一員として企業の持続的な成長と競争優位性を確立するための戦略的パートナー、さらには組織文化やイノベーションを主導するトランスフォーメーションの推進者としての役割を強く求められています。
しかしながら、多くの企業において、CHROがこの本来あるべき戦略的な役割を十分に実行できていないのが現状です。その背景には、日々の煩雑なオペレーション業務に追われ、戦略的な思考や時間確保が困難になっているといった「旧来の業務からの脱却の遅れ」、人事部門が持つデータを経営戦略の意思決定に活用できていない、あるいは経営層との対話が不足しているといった「経営層との目線合わせの不足」、経営戦略、財務、データ分析といった、戦略的な役割を果たすために必要な新たなスキルセットが不足しているといった「必要なスキルのギャップ」などがあげられます。
今回のCHROマネジメント・フォーラムでは、従来の人事責任者を超えたCHROのあるべき姿に着目し、CHROが経営戦略のドライブ役として果たすべき責任、未来の経営を担う人材を戦略的に見極め、育成し、組織の持続性を高めるための具体的な手法、戦略的な人財ポートフォリオ構築、組織カルチャーの変革を通じて、経営目標達成を強力に推進などについて実際の企業のCHROの方々に講演をいただき、基調講演には、人的資本経営の第一人者である学習院大学の守島基博教授に登壇いただき、パネルディスカッションでのモデレーターとあわせてご担当いただきます。



<基調講演>
21世紀の次の25年間で、人事が取り組むべきこと
学習院大学 経済学部経営学科 教授
一橋大学 名誉教授
守島 基博 氏
守島教授は、『今世紀最初の四半世紀にわが国の人材マネジメントは、表面上は大きく変わりました。でも今までの変革は真の意味で、わが国企業の人的資本の活用の仕方に大きな変化をもたらしたのでしょうか。』と疑問を投げかけておられます。その上で、『私は、これらの改革は、人事管理のアプリの改革で、次の25年間、もっと本質的な人事管理のOS(オペレーティングシステム)の改革が必要だと考えています。この講演では、この25年間を振り返るとともに、次の四半世紀、新たに起こりつつある経営環境の変化の下でどのような改革が必要なのかを論じます。』とご説明の上で、講演をいただきました。

参加者の声
- 適所適材という考え方に感心した。
- 人財にはスキルだけでなくモチベーションがあり、モチベーションによって実力発揮度合いが変わってくるという点を改めて大事にしていきたい。
- 基本となる軸をご解説いただき理解ができました。
- カルチャーやパーパスの考え方が整理できた。
- 冒頭に、今の人事課題・キーワードについて、大変端的にお話くださり理解が深まった。
<事例講演1>
コカ・コーラ ボトラーズジャパンにおける人的資本経営を強化する人事戦略
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社
執行役員 CHRO 兼 人事・総務本部長
東 由紀 氏
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社は、「人的資本の強化」を中期経営計画の基盤の一つと位置付けておられ、経営戦略と人事戦略を高度に連動の上で、「人材・組織の強化」によるパフォーマンス向上と、「ウェルビーイングを促進するカルチャー醸成」を両輪として推進し、持続的な企業価値向上を目指しておられます。
講演では、これらを推進されるCHROとしてのリーダーシップを軸に、いかにして経営陣を巻き込み、人事アジェンダを単なる機能別課題ではなく「経営課題」として定着させたのか、その仕組み作りや合意形成のプロセスなど、変革を牽引する具体的な実践論について、お話いただきました。

参加者の声
- マーケティング的考え方で人事施策を考える点を見習いたい。
- ビジネスの課題から人事戦略、そして人事施策、と落とし込んでいく流れが印象的でした。経営戦略と人事戦略、も当然ながら、実際のビジネス課題に焦点を当てているところがコカ・コーラBJ社の強みなのかな、と改めて思いました。
- 従来のThe人事でなく、経営戦略とHRの連動に向けて、一つ重要な軸が見えました。
- 戦略的かつ論理的ストーリで説明いただけ、分かりやすかったです。
- 論理的かつとても魅力的に、自社のお取組みについて大変詳しくお話くださり、各施策の詳細をもっと伺いたく思いました。
<協賛講演1>
経営判断を支えるCHROの新たなスタンダードは「カンパニーケア」
株式会社iCARE
健康経営・産業保健コーディネーター
柴田 三智子 氏
人的資本経営の進展や労働安全衛生法改正を背景に、健康管理は個別対応や制度整備にとどまらず、経営が意思決定すべきテーマへと変化しています。本講演では、今回の法改正が人事に何を求めているのかを整理し、「起きてから対応する人事」から「兆しを捉え、経営判断を支える人事」への転換を提示いただき、あわせて、企業が主体となって従業員の健康づくりを仕組み化し、人に関する出来事を経営が判断できる構造へ変える考え方を、iCAREでは、こうした企業主体の健康づくりを「カンパニーケア」と呼び、人事・CHROに求められる新しい考え方として紹介いただきました。

参加者の声
- ウェルビーイングという意味合いが少し見えたようにも思います。
- 従業員の健康管理を個人の問題や福利厚生にとどめず、経営戦略として人事が主体的に「カンパニーケア」を推進する重要性に強く共感しました。
- 健康投資が離職防止や組織成長に不可欠だと理解できました。データに基づく将来リスクの予測やリソース分配など、実践的な視点が大変参考になりました。
<事例講演2>
焦らず地道に。「Global One NOK」に向けたCHRO奮闘記
NOK株式会社
執行役員 グループCHRO
江上 茂樹 氏
日本初のオイルシールメーカーとして創業以来、自動車をはじめ電子機器や一般産業機械など幅広い分野に不可欠な製品を開発・供給し、産業の基盤を担うNOKグループは「Global One NOK」の実現をスローガンに掲げ、改革を推進しグローバルでの成長を目指しておられます。
本講演では、流行の施策に惑わされず、あくまで自社の現在地と課題に向き合う中での「人を起点にした変革」の基盤構築プロセスについて紹介いただき、そしてこれらの成功の鍵は、実は人事部門そのものの変革と、失敗を恐れない「Try & Learn」の繰り返しにあった点、また焦らず地道な歩みで進めた地に足のついた組織変革のリアルな奮闘の様子についても共有いただきました。

参加者の声
- 施策だけでなく、江上さんのお考えが良く分かり良かった。
- グローバル人事のあり方に関心を持っており、とても参考になりました。「つなぐ」というキーワードも印象的で、何を目指しているのかが、良く分かりました。人事として何をするかも大事ですが、人事とはそもそもどういうものか、という考え方にとても賛同しました。
- CHROならではの、力強く熱意に満ちたお話に圧倒されました。
- 非常に共感する内容でした。この先進的なビジョンがどのように組織全体に浸透していくのか楽しみです。
- グローバルなHR戦略の奥深さに触れ、自身の知見をさらに深めていきたいと感じました。
<協賛講演2>
グループ経営戦略の成功の要!”シナジーを最大化する人事戦略とデータ基盤”とは
株式会社カオナビ
エンタープライズビジネス本部 本部長
福田 智規 氏
グループ経営戦略を実現するには、グループ全体での連携や人材の相互活用による「グループシナジー」の最大化がカギを握ります。そのためには、グループを横断した従業員の理解に基づく経営判断が重要であり、グループ全体の人材データの可視化・活用が欠かせません。本講演では、事業会社の枠を超えた適材適所な配置やコミュニケーションの活性化に繋げる「人事戦略」と、それを支える「データ基盤」の在り方について、実践事例を交えて解説いただきました。

参加者の声
- コンサル領域は答えと結果を出すことが目的かと思いますが、私の中ではその前の問いをもう少し深めてみようと思います。
- グループ横断で人材データを一元化し、個社最適から全体最適へ導く重要性がよく理解できました。システムを活用した適材適所の実現に大変共感しました。
- 形骸化しがちなMVVを評価や育成などの人事施策に組み込み、社員の行動変容へ繋げる仕組みづくりが非常に参考になりました。自社でも実践したい視点です。
<事例講演3>
“ひとの力の最大化”に向けた人財戦略
株式会社三越伊勢丹ホールディングス
執行役員CHRO 兼 株式会社三越伊勢丹 執行役員 人事部長
嘉納 亜紀子 氏
三越伊勢丹グループは、持続的な成長を遂げるための核心的要素として、「ひとの力(人的資本)」の最大化を掲げておられます。
2023年度に制定された新たなグループ企業理念では、ミッションに「こころ動かす、ひとの力で。」を据え、人財戦略の重点テーマとして「”ひとの力”の最大化」を推進されています。
本講演では、経営戦略と人財戦略を連動させながら、個々の最大限のポテンシャルをいかに引き出していくのか、具体的には、社員一人ひとりが自らのキャリアを主体的に描く「自律的なキャリア形成」をどう支援するか、また個人の志向と企業の成長をいかにマッチングさせるか、その仕組みづくりのポイントについてご説明いただきました。 さらに、それらの施策を支える基盤として、心理的安全性を高め、組織の壁を越えた共創を生む「対話文化」の醸成についても深掘りいただきました。

参加者の声
- 百貨店の人事の大変さを理解することができた。
- スペシャリスト、ゼネラリストの概念が変わるような思いがしました。
- 非常に具体的に分かりやすい説明で勉強になりました。スキルセットの考え方は特に参考になりました。
- 東様同様に、自社の経営戦略への深いご理解に基づく人財戦略は大変論理的かつ魅力的で、唯一無二の企業文化への理解も深まりました。
- 経営戦略との連動性を踏まえた人事戦略を伺えて大変有意義な内容でした。
<パネルディスカッション>
これからの企業経営とCHRO
モデレーター
学習院大学 経済学部経営学科 教授 一橋大学 名誉教授
守島 基博 氏
パネリスト
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社 執行役員 CHRO 兼 人事・総務本部長
東 由紀 氏
パネリスト
株式会社三越伊勢丹ホールディングス 執行役員CHRO 兼 株式会社三越伊勢丹 執行役員 人事部長
嘉納 亜紀子 氏
パネリスト
株式会社リンクアンドモチベーション 特任執行役員
冨樫 智昭 氏
- これからの企業経営に求められる人事の進化
- これからの企業経営でCHROに求められる役割・CHROの要件




参加者の声
- 専門性を組み合わせて価値を生み出す人材の有用性が大事と理解できた。
- パネルディスカッションについては、経営戦略との整合性やその1歩先を行く人事戦略、事業現場と結びついた各種人事施策により、社員エンゲージメントを高めるマーケティング機能を強化していくというコンセプトはとても参考になりそうです。
- HRを経営戦略と一体で考えるには何が必要か、という問い、課題が少し見えました。
- 議論に化学反応があり、多くの気付きをもらった。スーパーゼネラリストが今後の顧客ニーズの多様化には最も大切なスキルセットになる可能性もあるという点は非常に大きなパラダイムシフトな学びであった。
- ひと言も聞き漏らしてはならない。興味深くぜひ自社についても深く考えてみたいキーワード満載のパネルディスカッションで、大変勉強かつ刺激を受けました。ありがとうございました。

ゴールド協賛
企画者からの御礼
株式会社ビジネス・フォーラム事務局
企画担当 迫田
この度は「CHROマネジメント・フォーラム2026」のご視聴をいただき、またショートレポート記事をお読みいただき、誠にありがとうございました。
昨今、多くの場において、人的資本経営の重要性が話題にあがる中で、特に大きく変化を続けるCHROの役割と求められるスキルに着目し、ご講演者の皆様の力をお借りする形で、対外的に弊社としてのメッセージを発したい思いから、弊社主催という形で、企画・開催をさせていただきました。多くの企業において、経営と最高人事責任者が一体となり、持続的な「ヒト」の価値の創出に向けた、強い経営戦略を構築していくことは永遠の課題であると認識しております。そのための一助として、当フォーラムの内容が、皆様のビジネスに少しでもお役に立てていただけますと幸いです。
ビジネス・フォーラム事務局では、これからも様々なテーマで皆様に関心いただき、課題解決につながるフォーラムを企画し、情報発信してまいります。お役に立てる機会がありましたら、是非、ご参加いただきますようお願いします。
改めて、この度は「CHROマネジメント・フォーラム2026」にご参加いただき、また初期の段階から企画に賛同いただき、ご協力をいただいた、ご講演者様、協賛各社の皆様へ心より御礼申し上げます。
どうぞ、今後ともよろしくお願いいたします。









