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CDO Summit Tokyo 2018 開催レポート

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CDO Summit Tokyo 2018 -2/4

CDO Summit Toronto取材レポート&CDOインタビュー紹介・解説

 

CDOの『必然性』『必要性』『重要性』を知る!


解説者:一橋大学商学研究科 教授 工学博士  神岡 太郎

一般社団法人CDO Club Japan 理事、広報官  鍋島 勢理

 

 

 

 Amy Yee氏による海外CDOの特別講演に続き、CDOの必然性、必要性、重要性を知ると題し、2017年10月25日に開催されたCDO Summit Torontoに伴い、現地CDOに対して行われたインタビュー動画が紹介された。インタビュー動画の紹介、解説は一般社団法人CDO Club Japan広報官である鍋島 勢理氏が担当。紹介された海外CDOは以下の6名。

 

・オンタリオ州 保健医療福祉標準化機構 (Health Standards Organization)  Chief Digital Officer Amy Yee

・マニュライフ・ファイナンシャル  副社長 Chief Analytics Officer  Cindy Forbes

・オンタリオ州  Chief Digital officer、デジタルガバメント次官  Hillary Hartley

・バンクーバー市  Chief Technology Officer  Jessie Adcock

・ZoomerMedia社  Chief Digital Officer  Omri Tintpulver

・Canadian Film Centre社  Chief Digital Officer Ana Serreno

 

 

鍋島氏による上記6名へのインタビューでは、「CDOの役割」「CDOに必要なスキル」「CDOになって直面した課題」についてのコメント、最後にCDO Summit Tokyo 2018の出席者へのメッセージが語られた。各内容について鍋島氏が短く解説し、最後にCDO Club Japanの顧問を務める一橋大学商学研究科教授工学博士の神岡 太郎氏が講評を述べられた。

鍋島 勢理 氏による解説
「CDOの役割」について

 

 

 執行役、 経営者の視点で会社のベネフィットを上げていくにはどうしていけばいいのか。CEOと一緒に全社的の戦略を練り、ビジョンを作り上げていく点では 非常に重要な役割があると、どなたも述べられています。CDOのレポーティングルートを皆さんにお聞きしたところ、CEOがレポーティングルートという方が多数でした。

 

 加速するデジタル化の動向を社内に提示していく点は、漠然とした悩みや不安を持っている社内の人たちに対して、CDOである私たちが、向かっていく方向性を示していく。そしてそれをCEOと一緒に考えていくことも役割であると述べていました。

 

「CDOに求められるスキル」について

 

CDOに必要なスキルとして、皆さんおっしゃっているのはカルチャーの理解ということです。例えばヘッドハンティングで社外から入った場合、元々在籍していた社員からは、どうしても異色な人材として見られることが多い。ただ、デジタルトランスフォーメーションを組織の中で進めていく上では、やはり社内の人たちとの関係構築が重要で、組織の文化を理解していくことはとても重要です。困難もありますが、関係構築はとても大切だと皆さん述べられています。その上で重要なのが傾聴する力。Hillary Hartley氏はCDOのことをChief Empathy Officerとおっしゃっていました。「エンパシー」、共感する力ですね。社員たちがこれまで何を達成しようとしてきたのか。そして、どういう困難に立ち向かってきたのか。実際に成功したこと。トライしたけれども失敗したこと。そういうことを、耳を傾けて親身になって聞くことがとても重要だと述べています。そして、エンジニアやプログラマーとの共通言語を持つことが、非常に重要だと述べていました。その道のエキスパートになる必要はないが、理解したことをテクノロジーの知識のない人たちにもどうやって伝えるか。どういう言葉を使っていくのか。表現していくのか。そのようなトランスレートする力も重要だと述べていました。

 

「CDOになって直面した課題」について

 

 ここで一つ強調したいことは、アジャイルメソッドの導入というところで、デジタル・ディスラプションが進んでいく速度がとても速いということです。社内で新しいサービスを作っていく速度が、とても間に合わないくらい速く急激であるということ。例えば、会社でも3年計画、5年計画、または10年計画と、プランニングをする機会も多いと思います。計画を作ることはいいのですが、常にアップデートしていかなければいけない。社内において横串で見直していかなければいけない。そういう意味ではアジャイルメソッド。 常に更新していくということが非常に重要であると述べていました。

神岡 太郎 教授による講評
組織や文化をどうやって変えていくかが本質

 

 

 CDOとは何かというのは、ものすごくバリエーションがあり、いろいろなタイプのCDOがあります。タイトルにしてもバックグラウンドにしても多彩です。バックグラウンドが英文学の人もエンジニアの人もいる。タイトルだってChief Analytics OfficerやChief Data Officer 、Chief Technology Officerもいる。こういう人たちが皆デジタルの問題に関わっている。

 

 その中でひとつだけ共通していることは、「チェンジ」。変えるということです。今のやり方では限界がきていることが共通認識となっています。Transformationが必要だということではないでしょうか。このTransformationも、表面的なビジネスを変えるのではなく、人で言うならば服装を変えるだけではなく体の中まで変えなくてはいけない。皆さん、文化とかマインドセットとかDNAという言葉を使っていらっしゃいましたが、表面的に物事を変えるだけじゃダメだとなってきている。そういうことを変えるエージェント、あるいはリーダーが必要ということです。それがたぶん、CDOの仕事だと思います。テクノロジーは重要ですけれども、それはきっかけに過ぎません。これをうまく使って、組織や文化をどうやって変えていくか。そこが本質だと思います。変化をしないといけない時代に、CDOはものすごく大切な仕事だと思います。皆さんにもご協力いただければと思います。

【解説者】
一般社団法人CDO Club Japan
理事、広報官

鍋島 勢理


青山学院大学卒業後、ロンドン大学大学院にてエネルギー政策を学び、鍋島戦略研究所を設立。現在は外交問題、サイバー攻撃について研究。日本の組織がデジタル化への対応が乗り遅れている現状に危機意識を抱きCDO Club Japan広報官に就任。国内外のCDOとの交流を図り、組織の中でのCDO設置を啓蒙している。オスカープロモーション所属。

 

 

【解説者】
一橋大学商学研究科
教授 工学博士

神岡 太郎


CMOやDigital Transformationに関心をもつ。国際CIO学会会長、政府情報システム改革検討委員会委員(総務省)、高度ICT利活用人材育成推進会議座長(総務省)、トレーサビリティ・サービス推進協議会座長(国土交通省)を歴任。『マーケティング立国ニッポンへ』(日経BP社)他に論文多数。

日本企業CDOの現状と変化紹介

 

日本企業CDO(Chief Digital / Data Officer)の

 現状とデジタル化の進展


一般社団法人CDO Club Japan 事務局マネージャー
Sansan株式会社 デジタル戦略統括室 室長  柿崎 充

 

 

 日本企業のCDOの現状と変化の紹介と題し、CDO Club Japan事務局マネージャーであり、Sansan株式会社デジタル戦略統括室室長である柿崎充氏による講演が行われた。柿崎氏は、日本企業のデジタル変革とCDOの現状、デジタル変革への取り組みなどについて語った。

トップダウンのスピーディな変革の必要性

 

今の日本企業のデジタル化の推進状況の調査結果を見てみたいと思います。デジタル化を推進している企業は比較的多いと言えます。ただ一方で、デジタル化を推進している姿勢はどうかというと、多くの企業が横並び。あるいは同業他社の状況を見て進めるという回答をしています。デジタル化とは企業の変革そのものです。デジタル環境や顧客の変化にどう対応するかという話において、横並びの変革では、対応が遅れて競争に破れるリスクが高まると思います。

 

次に、CDOが日本にどれぐらい設置されているかですが、2016年から年々、倍以上に増えている状況です。今このような動きが広がっているのはなぜか? やはり真のデジタル化を実現するには、トップダウンで自社特有の課題の解決を目的にする必要があるからだと思います。

 

自社のルールを変えずにデジタル化する場合、ツールの導入になってしまうと思います。だから本来の企業の変革を行うというデジタル化とは、ちょっと遠いことをやってしまう。日本企業の多くの担当者が、デジタル化の推進に必要な人数とか人材の質、予算、ITインフラ、部門間の協業体制などについて、不十分であると感じています。

中央集権型から分散型へ

 

 

 世の中は中央集権型から分散型に変わってきています。例えば今、ブロックチェーンが出てきて大きな変化が起きています。何が変わってきたかというと、今まで絶対的な価値基準は貨幣、お金でした。ブロックチェーンにより、貨幣経済が終焉して、価値そのものを直接取引するようになるとも言われています。ブロックチェーンは別名「分散型台帳」と言われています。実は江戸時代に株仲間という同業の問屋があったのですが、その人たちはお互いの台帳を仲間内で公開しあっていたのです。お互いがお互いを裏切らない仕組みを作っていた。デジタル技術によって人間の根本の部分の何かが変わるというわけではなく、人間の原点回帰へのスピードが上がってきているのかなと思っています。

 

 人、組織とも、同じように中央集権型から分散型へ移行しています。今はスマートフォンとクラウドの全盛時代です。デジタル化の中で、自前主義のIT部門というものは発想を変えないといけないと思います。大手企業の方と話していると、まだこの発想に切り替わっていない方が意外と多い。私は今の社内のシステムをクラウドに全部移行しました。例えばワークプレイスというFacebookの法人版。全社員でこれを使っています。今までの、メールでやり取りしていた時代は1対1で、他の人から見えることがありません。隠したい情報は皆さん、なかなか出さないですよね。メールではそうなってしまう。やりとりをオープンにすることで、組織の自浄作用も働きやすくなったと思います。

 

 デジタルテクノロジーを使えば簡単にやりとりをオープンにできます。まだ完全には移行していませんが、いつでも、どこでも、誰でもつながるような環境を作ろうとしています。具体的な成果としては、機動性が高まり、意思決定のスピードと質が上がっています。会議での意思決定を待つのでは、クローズする意思決定になってしまう。オープンにみんなで情報を共有して、リアルタイムに決定できる環境に持って行っています。みんなで協力してオープンになっていますので、世代を超えて活躍できるようになる。生産性の圧倒的な向上につながることになります。

イノベーションはまず自分が変わること

 

 「イノベーション」とは何でしょうか。イノベーションの語源を調べてみると、最初に「イン」があり、これは自分のことを指します。イノベーションは、何かを変える、組織を変えるということではなく、実は自分を変えることなのです。まずは自分をどう変えるかということを考えていただければと。自分が変わることによって、一人ひとりが変わって、組織が変わって、結果として社会が変わると思います。デジタル変革はCDO が一人でやるものではないですよね。皆さん一人ひとりがデジタル変革に取り組むべきだと思います。

一般社団法人CDO Club Japan
事務局マネージャー
Sansan株式会社
デジタル戦略統括室 室長  

柿崎 充


慶應義塾大学在学中の2000年にベンチャー企業の設立に参加。その後、2003年にベンチャー企業を設立、経営者を経て、2006年外資系コンサルティングファームのプライスウォーターハウスクーパース(旧ベリングポイント)入社。 グローバル経営戦略調査、グループ経営管理態勢構築、金融機関のシステム・セキュリティ監査、内部統制強化支援、IR・統合報告支援などに幅広く従事。 2013年よりSansanに入社し、2016年6月より現職。Sansanでは、入社後は経営管理部のメンバーとして、社内システムのクラウド化などに従事。その後、エンタープライズ領域のマーケティング責任者として、大規模案件を中心とする受注に成功。

Japan CDO of The Year 2017 ファイナリスト報告&授与式

 

Japan CDO of The Year 2017は、
日本ロレアル株式会社
CDO デジタル統括責任者

長瀬 次英 氏に決定!

 

 午後のセッションの最初は、Japan CDO of The Year 2017の発表が行われた。CDO of The Yearは、CDOという役割の認知と普及、及びCDO Clubの活動に貢献した個人を表彰するもので、2012年からアメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、イスラエルなど各地で開催されている。今回が日本で初めての実施となる。

Japan CDO of The Year 2017として、SOMPOホールディングス株式会社 グループCDO 常務執行役員 楢﨑 浩一氏、株式会社三菱ケミカルホールディングス 執行役員CDO 岩野 和生氏、日本ロレアル株式会社 CDO デジタル統括責任者 長瀬 次英氏の、3名のファイナリストが選出された。この3名より、最終選考の結果、長瀬氏がJapan CDO of The Year 2017の栄冠に輝いた。