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CDO Summit Tokyo 2018 開催レポート

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CDO Summit Tokyo 2018 -4/4

パネルディスカッション

 

  CDO(Chief Digital / Data Officer)が、
 デジタル変革を推進するために必要なこと


トレジャーデータ株式会社 マーケティング担当ディレクター  堀内 健后

一般社団法人CDO Club Japan 事務局マネージャー Sansan株式会社 デジタル戦略統括室 室長  柿崎 充

SOMPOホールディングス株式会社  グループCDO 常務執行役員  楢﨑 浩一

株式会社三菱ケミカルホールディングス  執行役員CDO(最高デジタル責任者)  岩野 和生

日本ロレアル株式会社  チーフデジタルオフィサー(CDO)
デジタル統括責任者(デジタルカントリーマネージャー)  長瀬 次英

【モデレーター】 一橋大学商学研究科 教授 工学博士  神岡 太郎

 

 

 

 CDO Summit Tokyo 2018の最後には「CDOが、デジタル変革を推進するために必要なこと」と題したパネルディスカッションが行われた。パネルディスカッションでは、講演を行った楢﨑氏、岩野氏、長瀬氏、柿崎氏に加え、トレジャーデータ株式会社 マーケティング担当ディレクター 堀内 健后氏の5名がパネリストとして登壇。モデレーターは、神岡 太郎教授が勤めた。モデレーター、パネリストの簡単な自己紹介の後、ディスカッションが開始された。

 

デジタルが破壊的な力を持っている時代に、
企業はどうやって生きていけばいいのか

 

神岡: 1番めのテーマです。デジタルが破壊的な力を持っている時代に、企業はどう生きていけばいいのか?今の時代をどう見ているのかを、まずはお伺いしたいと思います。

 

楢﨑: 一言で言うと、我々CDO自身をも含めて何が起こるか、どうなるかわからない。スピードがどんどん上がってきていて、未来が見えない。それなら何をしたらいいのかというと非常に簡単で、スタンスを小さくとって、変化にアジャイルに対応する。これを会社の上から下まで、全社員のDNAに移植する。これに尽きると思います。それが正解かどうか分からないですが、少なくとも自分がディスラプトされないためには、唯一守らなければいけないルールなのかなと思います。

 

岩野: 将来は企業という形の組織形態がなくなると私は思っています。社会的機能の分解が起きて、その再構成という形でシステムが作り変えられる。今の企業がどう生きていけばいいのかと言うと、機能分解した時に一番強いものを持っていないと、たぶん生き残れないでしょう。それを鍛えておかなければいけないと思います。

 

長瀬: やはりその会社、ブランドの特長を伸ばす。強みを伸ばすしかないということです。あと、友達をたくさん作る。一人で全てをやったら崩壊します。そういう大きなマインドセットの変革に、ロレアルは直面したんじゃないかと思っています。

 

堀内: ビジネスを分かって、デジタルテクノロジーを理解している人たちと、CDOの皆さんがうまくお付き合いいただければ、うまく競争できるんじゃないかと思っています。会社単位の付き合いもそうですし、自分とは全然違う世界だったり、カルチャーを持った人たちとうまく共創していける。また、共に作っていけるようなことができると、変化に強い会社になれるのかなと思っています。

  

 

CDOとして何をしなくてはいけないのか

 

神岡: デジタルによる大きな変化が起きている中で、組織というものは今までとはちょっと違うものになるかもしれません。やはり誰か船頭がいないと、組織や会社は動かないと思います。核になるリーダーとして、CDOは何をしなくてはいけないと思われますか?

 

楢﨑: まさに人類未曾有の大変革というか、大嵐の中で船から揺り落とされて全員が溺れそうになっているというのが、たぶん今のほぼ全員の感覚だろうと思っています。では CDOは何をする人かというと、「こっちのほうが陸だぞ」とか「こっちには救命ボートがあるぞ」と言って、荒波の中で旗を出す。大嵐の海で「こっちに来ると命が助かるぞ」みたいに。自分も苦しみながら旗手になり、先導役になる。そういうけっこう苦しい仕事がCDOなのかなと思います。

 

岩野: 私たちは社内で「水先案内人になります」と言っているんです。そういう意味では、水先案内人として信頼してもらい、すごく研ぎ澄まされた方向感覚を持つことがキーになるだろうと思っています。

 

長瀬: 全く同意見です。唯一付け足すと、そういう人たちを増やすことも重要だと思っています。増やすには同じ経験をさせないといけないと思っていて、そこが一番大変なところじゃないかと思います。旗振り役は何をするかというと、ディレクションとフレームワークを作ります。救命具といった道具もありますし、どっちに泳げばいいのかという方向、それに泳ぐテクニックもあります。それらを一緒に経験しながら、最終的に我々が楽をするような方向で進めていくのがいいんじゃないかなと思っています。

 

柿崎: 3人のお話を聞いて勉強になりました。組織横断とか横串とおっしゃっていたので、そこが大事かなと思っています。CDOによって組織横断を実現していくことは大事だと思います。

CDOに必要なこと、CDOのイメージを変える

 

神岡: CDOには、今までのやり方にこだわらない、ある種の嗅覚といったものが必要と思うのですが、どうでしょうか?

 

岩野: 確かにそうだと思います。そして、一人じゃ何もできないということですね。CDOはコミュニティーで働く仲間が喜びを感じる場を作る、みたいなところがあるんじゃないかと。そしてその人たちが次の世代を作っていく。私が人を採用する時の条件があります。それは、1番目にまず優秀であること。2番目に志が高いこと。3番目は人柄がいいこと。この3つがあると、いいチームができるなという感覚があります。大組織の中でも、中学生の運動部みたいな感じだと思います。そういう厳しいけれども小さく、楽しくて仕方がないチームがいくつかできていく感じになるんじゃないかと思っています。

 

長瀬: 成果を出すスピードは重要だと思っています。リザルトドリブンなのは共通してあると思います。ただ単にビジョンだけを語っているのではなく、実はものすごく数字にストイックであること。僕は少なくともそうです。リザルトアウトプット、目に見える形で出すということもテクニックとしてあります。デジタルに関わっている以上、そういうものは確実にあると思います。

 

楢﨑: 物事を知っている奴をいかに多く知っているか。顔の世界なんです。大企業も基本は一緒だと思います。社内で、あいつら面白くてすごく楽しいことをやっているなと思わせる。スモールスタート、スモールサクセスで、「デジタルって少しわかりかけてきた。そして楽しい。もっと話をしろ。もっといろいろ見せろ」となる。そこに尽きるのかなと思います。

 

柿崎: 抵抗されるとうれしくなってしまうみたいなところがあって、抵抗されるものじゃないと新しいものをやっている気がしないというところがありますね。だから何かマーケティングをやると、営業から言われるんです。抵抗されるから少しへこむ。「それがいいんだ。抵抗されているんだから、何か新しいことに取り組んでいる」と思ったほうがいいということでやっています。

 

堀内: 変化の時代にデジタルがものすごく重要だから、そのデジタルというところにフィーチャーされているようですけれども。皆さんのお話を聞いていると、新しいビジネスとか、変化を起こしていくのにチームが必要というのは共通して変わらないのだなと今思いました。

 

長瀬: ひとつ言えるとすれば、CDOはすごく泥臭いですよね。人間臭いというか。ネットワークが重要ですし、結局、人と人とのビジネスなので、人間力が相当問われます。それを持っている人は、自然に人に好かれます。見た目で好かれることもけっこう重要だなと、CDOになってみてわかったところです。

 

神岡: デジタルは敵ではなく、人間的な側面が大きいということですね。ITにはちょっと暗いイメージがあると思いますが、実はデジタルは明るいんだ、という印象を会社の中に植え付けることがけっこう重要でしょうか?その辺はうまくいっていますか?デジタルはどういう印象を持たれているのでしょうか?

 

岩野: みんな、ニュースメディアを通して変なイメージを持っちゃっていますね。AIが人間を凌駕するみたいな。「その旗を振る奴が来た」みたいなイメージでCDOは見られているわけです。でもCDOはけっこう泥臭く、相手の話を聞くフェーズから行きます。そうすると何か変わってきます。「こいつら、話せるんだ」みたいな。

 

長瀬: 私の立場だと下に事業部があって各ブランドがあるんですけれども、横串になってCDOをやる人間としては、それらのブランドのビジネスをよく分かってあげなければいけないのは大前提ですね。例えば、「CDOが来た。メディアを全てデジタルに変える」、そんなイメージなんです。でも、そうじゃないんです。ちゃんと相手のビジネスとか本質を捉えて何がいいかを判断することが、けっこう我々人間味のあるCDOとしての役割じゃないかと思っています。

  

 

CDOがうまく機能するような環境、会社とは

 

神岡: ここには CDOになりたいという方もいらっしゃるかと思います。逆にCDOを採用してみたいという立場の方もいらっしゃると思います。CDOは一人では仕事ができないので、CDOがうまく機能するような環境、会社とはどういうものかを考えてみます。会社がこうあったらCDOはもっとうまくいくと思うことについて、ご意見をお願いします。

 

堀内: CDOは新しいことにチャレンジするポジションだと思います。ですから当然、裁量は大きいのが理想だと思います。中途採用で役員クラスが入ることはまだ日本では多くはないので、前提条件はかなり幅を持たせておかないと、やることが3カ月ぐらいで変わってしまうということもあるのではないかと思います。会社が柔軟に変われるということがものすごく重要です。入った後に、こんなはずじゃなかったと言われるのが、たぶん一番不満として多いと思います。

 

長瀬: いろいろサポートがあってこそなので、やはりコミットメントとか、カルチャーとか、いい仲間、人脈によって作ったチーム。そういったところが重要ですね。会社が何をしたいかということ。何をすべきかということ。純粋に真正面からぶつかっていける人と環境が重要ではないかと思います。

 

岩野: やはり夢とか志のところが合っていないとダメですね。社長なりその会社が、社会においてこの会社をどんな存在に持っていきたいのか、自分たちが何を目指しているのかということを徹底的に考えておかなければ、CDOは採用できないと思います。権限委譲や、人を雇う権利とか、チームを作る自由度とか、お金も含めてかなり裁量を与えられたことはラッキーでした。やることは大変なんですけれども、それぐらいの覚悟を持ったうえで迎えられると、採用されたほうも「頑張ろう」となります。

 

楢﨑: 人、物、金、データ、時間という経営資源を、ある所まで使える。または好きなようにやる権限とか。自由度を与えるトップや会社側の度量の深さはあるべきだと思います。

 

神岡: 皆さんありがとうございました。私はチーフデジタルオフィサーは、とてもエキサイティングな役割だと思っています。チーフデータオフィサーも、これからはどんどん重要になってくると思います。ぜひご参加の皆さん、宿題として、今日の話をご自身の組織に置き換えて考えていただければと思います。 長い時間、ありがとうございました。

トレジャーデータ株式会社
マーケティング担当ディレクター

堀内 健后


トレジャーデータの日本法人設立当初の2013年2月より日本の事業展開に従事しており、PRからマーケティング、事業開発まで担当している。トレジャーデータ以前は、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント株式会社(現 日本アイ・ビー・エム株式会社)にて、業務改革、システム改革のプロジェクトに参画。その後、マネックスグループにて、顧客向けWebサービスの企画・開発のプロジェクトマネージャーを担当していた。外資企業から日本企業、大企業からスタートアップ、など幅広い環境で幅広くキャリアを経験している。