2018年 1月 26日(金)、アジアにおいて初めての開催となる『CDO(Chief Digital/Data Officer)Summit Tokyo 2018』が開催されました。(参照:CDO Summit http://cdosummit.com/)
先進的にCDO職を設置している企業の取り組み事例とともに、2017年10月25日にカナダにて開催された『CDO Summit Toronto』の取材レポート、海外CDOのインタビュー紹介・解説、パネルディスカッションなど、今後日本におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるうえでのヒントや示唆 、そして、CDOの役割や重要性を確認できる一日となりました。この日の講演やパネルディスカッションの講演録から、CDOが持つ可能性をご一読ください。
開催日:2018年 1月 26日(金)
主催:一般社団法人CDO Club Japan
協力:CDO Club Global
企画・運営協力:株式会社ビジネス・フォーラム事務局
プラチナスポンサー:Sansan株式会社
ゴールドスポンサー:トレジャーデータ株式会社、株式会社電通国際情報サービス 、株式会社電通 、
株式会社電通デジタル
展示スポンサー:ヴイエムウェア株式会社
Opening Speech1 |
一般社団法人CDO Club Japan
代表&創立者 加茂 純 氏 |
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Opening Speech2 |
CDO Club
CEO David Mathison 氏 |
海外CDOによる特別講演 |
オンタリオ州 保健医療福祉標準化機構
(Health Standards Organization) Chief Digital Officer Amy Yee 氏 |
CDO Summit Toronto取材レポート&CDOインタビュー紹介・解説 |
<CDOインタビュー6名動画紹介&解説>
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日本企業CDOの現状と変化紹介 |
一般社団法人CDO Club Japan
事務局マネージャー Sansan株式会社 デジタル戦略統括室 室長 柿崎 充 氏 |
Japan CDO of The Year 2017 ファイナリスト報告&授与式 |
選考委員、 ファイナリスト ご登壇
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日本企業CDO 取り組み事例紹介① |
SOMPOホールディングス株式会社
グループCDO 常務執行役員 楢﨑 浩一 氏 |
日本企業CDO 取り組み事例紹介② |
株式会社三菱ケミカルホールディングス
執行役員CDO(最高デジタル責任者) 岩野 和生 氏 |
記念講演 |
日本ロレアル株式会社
チーフデジタルオフィサー(CDO) デジタル統括責任者(デジタルカントリーマネージャー) Japan CDO of the Year 2017受賞者 長瀬 次英 氏 |
パネルディスカッション |
トレジャーデータ株式会社 堀内 健后 氏
一般社団法人CDO Club Japan 柿崎 充 氏
SOMPOホールディングス株式会社 楢﨑 浩一 氏
株式会社三菱ケミカルホールディングス 岩野 和生 氏
日本ロレアル株式会社 長瀬 次英 氏
一橋大学商学研究科 神岡 太郎 氏
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◆Opening Speech 1
デジタルを牽引する人の育成と
ネットワークの構築を
一般社団法人CDO Club Japan 代表&創立者 加茂 純 氏
2018年1月26日、東京・丸の内・JPタワーホール&カンファレンスにて、一般社団法人CDO Club Japan主催「CDO(Chief Digital/Data Officer)Summit Tokyo 2018」が開催された。CDO Summitは、CDOの世界最大コミュニティである「CDO Club」が展開する大型イベントで、今回が日本・アジア地域での初の開催となる。CDOが集まり、繋がることで生まれる相乗効果への期待。そしてデジタル変革の重要な役割を担うCDOについて、考察を深めるきっかけになればという想いから、今回の開催に至った。イベント冒頭、一般社団法人CDO Club Japanの創立者でありCEOでもある加茂 純氏により、オープニングスピーチが行われた。加茂氏はスピーチで、CDO Club Japan創立への想い、CDOにふさわしい特徴、CDOの必要性などについて語った。
日本企業が活性化し、世界に出ていくきっかけに
CDO Club Globalは2011年に設立されました。CDO Club Japanは2017年5月から準備し、11月から会社組織となりましたが、既に海外での経験、事例、課題も含めて、いろいろな知見の積み重ねがあります。CDO Club Japanが、これからも日本企業が活性化し、もっと世界に出ていくという1つのきっかけになればと思っています。
CDO Club Japanの目的、想いとしては、CDOといわれる、デジタルを牽引する専門職の方をできるだけ企業の中で作っていただき、そのチームを作ることです。そして、みんなで話し合いながら、日本企業、日本全体を活性化することを目指しています。
ミッションの1つとして、社内、社外の垣根を越えたCDOのネットワーキングの機会提供があります。そのような意味も含めて、このサミットや研修などを行っていきます。大きなものにCDOサミット、ワークショップ、ラウンドテーブルといわれる上位のいろいろなミーティング。また、人材を育てていくということで、セミナー、フォーラムがあります。他にもプラットフォームの開発、人材のコンサルテーション。CDOといわれるタレント、人材の、1つのハブとして機能していこうと思っています。
CDOにふさわしい人物、5つの素質

実はCDOはチーフデジタルオフィサー、チーフデータオフィサーの2種類があります。データオフィサーはデータに特化する。デジタルオフィサーは新しいビジネスモデル、新しいチャンスをみつけていくということでそれぞれ違った役割があると言われています。
CDOにふさわしい人物の素質は、私は5点あると思います。1つは社内、社外、エコシステムを含めたオーケストレーション、コーディネーションです。新しいビジネスを生み出すために、いろいろな業界とお話ができるという素質。2つめにデジタル技術とビジネスの見識。これは詳しいというよりも、だいたいどういうトレンドで世の中が動いているのか。どういうデジタルトレンドになっているかという見識があること。3つめがイノベーションを導くビジョン。うちの会社としてはどのような方向を目指すかというビジョンを提示できること。4つめが、「ユーザーエクスペリエンス」と言われていますが、お客様視点で新しいビジネスモデルを再構築できること。5つめは、いろいろな企業や業界や組織のカルチャーがありますから、そのカルチャーを理解すること。単にそんなカルチャーは古いからやめようとか、もっと変わるべきだとか言うのではなく、カルチャーをどう理解して尊敬するか。話し合って、社員を含めたみんなの安心感や尊敬を得て、「一緒に変えていきましょう」と言うことができる素質です。いろいろと難しいのですが、海外を見ていますと、だいたいこのような素質が優れている人がCDOになっています。
さまざまなコラボレーションをしながら、
新しい時代を作っていく
CDOがいるとなぜ便利かというと、いろいろな業界を含めて、ユーザー視点、住民視点で変えていきましょうとなった時、各セクターとの間で非常に話が早く進みます。CDOがそれぞれを代表し、ある程度ビジョンやフレームワークや戦略なりを作っていく。いろいろな業界のCDOが、さまざまなコラボレーションをしながら、次の新しい時代を作っていくことが必要だと思っています。
世界全体では、既にさまざまな人がCDOとして活躍されています。日本では今のところ数十人ですが、今年いっぱいで100人まで増やしていきたい。いずれは100人といわずさらに増やし、新しい時代を作っていただきたいと思います。今は第四次産業革命と言われていますが、インターネットの発展から含めて、20年ぶりの大きなチャンスの時です。ブロックチェーンとか AI など、デジタル技術を使って社会全体を変えていくことで、日本もまた世界全体をリードする立場になれるのではないかと私は期待しています。そのような視点で、この組織も含めて皆さんで一緒にやっていきたいと思っています。皆さん、よろしくお願いします。
一般社団法人CDO Club Japan
代表&創立者
加茂 純 氏
東京大学理学部情報科学科卒、米イリノイ大学大学院アーバナシャンペーン校コンピュータサイエンス学科AI専攻修士。電通に入社し、インテル、マイクロソフト、アップルコンピュータ(当時)の日本進出と事業拡大戦略を担当し「インテル入ってる」「Intel Inside」グローバルキャンペーン戦略を成功させる。電通退社後はセコイアキャピタルにて、Googleを生み出したマイケル・モリッツ氏、LinkedInを生み出したマーク・クワミ氏、Facebookを生み出したマーク・アンドリーセン氏らから投資を受け、シリコンバレーで米Harmonic Communicationsを創業し、アジアパシフィック地域統括担当副社長、日本支社長に就く。PwCコンサルティング戦略部門ディレクターに就任後、マーケティングエクセレンスグループを創設し代表になる。立教大学ビジネススクール兼任講師(マーケティング、ブランド戦略、CSR)、CMOワールドワイドの設立者兼代表取締役。著書に『CMOマーケティング最高責任者』『刺さる広告』『企業の遺伝子は進化する』『インドビジネスのルール』『P&G 伝説のGMOが教えてくれたマーケティングに大切なこと』など多数ある。2017年11月一般社団法人CDOClub Japan代表理事就任。
◆Opening Speech 2
デジタルを牽引する人を手助けすることが目的
CDO Club CEO David Mathison 氏
CDO Club Japan 加茂氏に続き、CDO ClubのCEOであるDavid Mathison氏のオープニングスピーチが行われた。Mathison氏は、CDO Clubの目標、CDO Clubが今後進めていくプロジェクトなどについて語った。
グローバルにコミュニティを広げてきた

CDO Clubは2011年にスタートしました。CDO Clubをスタートさせた目的は、デジタルを牽引する皆さんの仕事をしやすくするためということがあります。ですから、私たちはCDOだけではないということです。皆さんの仕事の中にデジタルトランスフォーメーションやデータ主導型の文化といったことが含まれていれば、CIO、CMOであってもぜひ入会していただきたいと思います。
CDO Clubはグローバルに広がって参りました。アメリカからスタートし、ヨーロッパへ。そしてオーストラリアへ広がり、この数年間でアジアまで広がっています。そのように広がりを見せるなかで、私たちが何をやっているかですが、私たちの目標は皆様の仕事がやりやすくなるように手助けすることです。コミュニティを広げていき、その中に皆さん全員が入っていただきたいと思っています。これは決して簡単なことではありません。ですから、何かのツールを提供したいと考えています。
新しいプラットフォームの提供
私たちは世界中のCDO、CDO Clubのメンバーに調査を行い、その結果から、やはり皆さんが助けを必要としていることがわかりました。これに対応するため、これからの6カ月間で新たなプラットフォームを段階的にスタートさせていきます。
まずバージョン1として、3つのコンポーネントが含まれたダッシュボードを提供したいと考えています。コンポーネントの1つめは、コミュニケーションツールで、チームとのコミュニケーション、またはベンダーとのコミュニケーションを行えるツールです。2つめが、簡単にコラボレーションをできるようにするコラボレーションツール。そして3つめがプロジェクト管理になります。ロードマップは分かっていて、成果物も分かっている。タスクに財務的なリソースや人的リソースなどを追加して、成果物をデッドラインに提供できるようにします。
バージョン2は、ブロックチェーンです。CDOはチーフデジタルオフィサーですから、ブロックチェーンにおいて競争力をつけていかなければいけません。私は、これからの5年、10年で、インターネット2.0ともいえる非常に大きな変化が起きると思っています。あと数年でブロックチェーンは、よりシンプルで、より堅牢で、よりスケーラビリティが上がっているでしょう。もし、今ブロックチェーンを見ていない、またはスマートコントラクトや分散型のアプリをやっていないと、おそらく皆さんは生き残れないと思います。よりエキサイティングなインターネットがこれから実現されるので、私たちはそれに対応するために CDOの手助けをしたいと考えています。
私たちは3月にアルファ・ローンチをロンドンで行います。そしてベータ・ローンチはニューヨークのCDO Summitで4月に行います。そして最終的なプロダクトのローンチは6月にサンフランシスコのイベントで行うことになります。これらを楽しみにしていただければと思います。日本にご招待いただき、ありがとうございました。
CDO Club
CEO
David Mathison 氏
◆海外CDOによる特別講演
組織が先に進むため、
持てる力を最大限に使うまとめ役
オンタリオ州 保健医療福祉標準化機構(Health Standards Organization)
Chief Digital Officer Amy Yee 氏
2名のオープニングスピーチが終わり、続いて海外CDOの特別講演として、オンタリオ州保健医療福祉標準化機構CDOであるAmy Yee氏が登壇した。Yee氏は講演で、CDOとは何か、CDOに必要なことについて語った。
変革をもたらし、デジタルというパワーを使う代理人

日本でお話をしていてもよく聞かれた質問ですが、CDOとはどう定義をしたらいいでしょうか? CDOとは何なのでしょうか? 私の答えはこうです。 CDO とは変革をもたらすための代理人であり、ファシリテーターであり、そして擁護者であると。組織がさらに先へ進んで行くために、デジタルをうまく使って、プロセス、人、提案など、持てる力を最大限に使うまとめ役。また、そういったスキルを持っている人たちのチームを引っ張っていくのがCDOだと思っています。
デジタルトランスフォーメーションには、デジタルというパワーを最大限に使うことが非常に大切です。CDOはそのためのエージェント、代理人です。そして代理人は力です。誰かを代理し、そこからさらに前に進め、まとめていく。CDOは力を権限委譲という形でいただいて先に進める者。そして自分の力で先に進める者。最終的に CDOは、力を持って他のエグゼクティブの方々もさらに推進していくようなサポーターにならなければいけません。
そしてCDOは、ファシリテーターでもあります。つまり、他の組織が何を言っているのかを聞き、何が今起こっているのかを理解する。その上で、他の人たちをサポートする。どういったミーティングでもファシリテーターになり、変化の兆しをキャッチし、我先にと先導していかないといけない。そして、最後には擁護者でないといけません。別の言い方をすれば、コミュニケーターでなければいけない。聞いてくれる方々を想像し、人々に聞いてもらわないといけません。そして、理解していただくのです。
CDOには何が必要か
この2年ぐらい、インダストリー4.0ということで、テクノロジーのスピードやスケールは、これまで見たことがないようなものがあります。どのようにしてこのような技術の変革を、自分たちの組織に受け入れることができるのか。何が起こっているのか、ぜひ考えていただきたい。「将来どういう状況になっているか」ということを考え、「そのためには何が必要か」を考えるのです。CDO、CIO、またはCEO、CMOのどの立場の方でもいいのですが、何が必要でしょうか?
それを考え、もし皆さんが組織の中でそれについての資料などを作ろうとしていらっしゃるとしたら、その人はまず直感が強くなくてはいけません。問題に深く関わっていかなければいけない。ナビゲーターです。これは政治的なことではなく、組織の中でいろいろ動かなければいけないということです。技術的な面も知らなければいけません。それからいろいろ曖昧なところも受け入れていかなければいけません。だから強い直感を持っているというのは非常に重要です。
それから既存の枠を超えた考え方ができるということ。さらには、技術とか人とかを新しい形で見ることができるということ。そして、いろいろな立場の人を認識して助けることができるということが必要になります。また、技術の経験も必要です。エキスパートではなくてもいいのですが、技術の人たちと話ができなければいけません。そしてそれを技術には直接かかわりのない人に説明したり、理解を深めることをしたりしなければいけません。可能性を見ることができるという能力も必要になります。どのようにすれば技術を新しい形で導入できるか、新しい方法論についても理解をしている必要があります。
そしてコミュニケーション、共感です。オンタリオではチーフデジタルオフィサーが、チーフエンパシーオフィサーとも呼ばれていて、共感する力を持つことは重要です。さらに、皆さんのまわりの人たちでコミュニケーションすること。それから人を動かして行動させることができるかどうかです。
CDOが1人で全部をできるわけではありません。やはり組織で人々を動かすことが重要です。私は、最初1つのチームでしたが、現在は4つのチームを率いています(リードしています)。縦割りの組織を壊していくこと。これもチーフデジタルオフィサーにとって重要なことなのです。
オンタリオ州 保健医療福祉標準化機構 (Health Standards Organization)
Chief Digital Officer
Amy Yee 氏