MENU

CDOフォーラム 2017 開催レポート

HOME > レポート・特集記事 > CDOフォーラム 2017 開催レポート 1/3

CDOフォーラム 2017 開催レポート

 

 

開催日:2017年 7月 14日(金)

主催:株式会社ビジネス・フォーラム事務局

協力:CDO Club CDO Club Japan

ゴールドスポンサー:PwCコンサルティング合同会社

シルバースポンサー:ドーモ株式会社

ブロンズスポンサー:株式会社電通国際情報サービス

 

 

2017年7月14日、「CDO (Chief Digital/Data Officer)フォーラム 2017」を開催しました。CDO Club、CDO Club Japanにご協力いただき初開催となった今回のフォーラムでは、「デジタルトランスフォーメーションを実現するリーダー像」にフォーカスをあて、これからの企業における変革や経営戦略を牽引する上で、期待が高まるCDO (Chief Digital/Data Officer)の役割やミッションを紹介しました。先進的にCDOを設置している企業の事例とともに、この日の講演やパネルディスカッションから、CDOが持つ可能性とリーダー像をご覧ください。

オープニング

一橋大学 商学研究科 教授 工学博士
CDO Club Japan 顧問

神岡 太郎

特別ゲスト講演

参議院議員
(現:文部科学大臣)
林 芳正
来日特別講演

CDO Club
CEO
David Mathison

 

CDO Club Japan
代表&創立者
加茂 純
スポンサー講演

PwCコンサルティング合同会社
パートナー デジタルサービス日本統括
松永 エリック 匡史
事例紹介講演1

日本ロレアル株式会社
チーフデジタルオフィサー(CDO)/
デジタル統括責任者(デジタルカントリーマネージャー)
長瀬 次英
事例紹介講演2

株式会社三菱ケミカルホールディングス
執行役員CDO(最高デジタル責任者)
岩野 和生
事例紹介講演3

株式会社三菱東京UFJ銀行
デジタル企画部 プリンシパルアナリスト 
柴田 誠
CDO リサーチ レポート

CDOリサーチスペシャリスト
PwCコンサルティング合同会社
ストラテジーコンサルティング(Strategy&)パートナー   
唐木 明子
パネルディスカッション

【モデレーター】
CDO Club Japan
代表&創立者
加茂 純

 

【パネリスト】
日本ロレアル株式会社
チーフデジタルオフィサー(CDO)/
デジタル統括責任者(デジタルカントリーマネージャー)
長瀬 次英

 

【パネリスト】
株式会社三菱ケミカルホールディングス
執行役員CDO(最高デジタル責任者)
岩野 和生

 

【パネリスト】
株式会社三菱東京UFJ銀行
デジタル企画部 プリンシパルアナリスト 
柴田 誠

 

【パネリスト】
ドーモ株式会社
クライアントサービス 本部長
大山 忍

 

【パネリスト】
一橋大学 商学研究科 教授 工学博士
CDO Club Japan 顧問

神岡 太郎

オープニング

 

CDOとはなにか
 企業や組織の中でどのような役割を持つのか

一橋大学 商学研究科 教授 工学博士 CDO Club Japan 顧問 神岡 太郎

 

 

 現在、営利非営利問わず、さまざまな組織にとって、デジタルへの対応は避けては通れない道です。デジタル化で組織を活性化したり、顧客やユーザーに最高の体験をもたらすには、これまでのCIOやCMO、CTOではない、デジタル専門のリーダーとしてCDO(Chief Digital Officer)が必要になります。この日のオープニングとして、CDOの定義やその役割などにつき、CDO Club Japanの顧問でもある神岡氏に講演いただきました。

デジタルに対応する組織への転換
組織におけるCDOの必要性

 

「CDOとは、組織におけるデジタルの最高責任者です。企業あるいは政府・自治体などの組織がデジタルに対応する体質改善のための責任者で、今後非常に重要な役割を果たすことになります」と、神岡氏は説明します。CDOには「Chief Data Officer」という意味もあるといわれますが、本講演ではDigitalの視点から語られました。

 

ここ数年、意識的にITとデジタルを区別して使う傾向が増えてきましたが、そもそもITとデジタルの違いとはなんでしょうか。その問いに対して神岡氏は、「テクノロジーの視点からは、両者はほとんど同じ意味と捉えていいでしょう。ところが、応用や設計の視点から見ると違いがあります」と答えます。たとえば、ITのシステムは、組織が無駄なく効率的に運営されるように、さまざまなことを管理するために設計されます。そこでは、設計者や管理者の視点でシステムが作られるため、システムの構築途中や構築後に仕様を大きく変更するとなると大変です。一方でデジタルのシステムは、初めから世の中の動きに合わせて変更されることを前提に設計されます。なぜなら、利用するユーザーや顧客の視点でシステムを構築するからです。このようにシステムの設計面から考えると、ITとデジタルでは明らかに必要とされるスキルやノウハウが異なっています。「企業は、まず自社にとってデジタルとは何かを明確にする必要があります」

 

そして、デジタルをうまく活用して高い成長を遂げたのが、UberやAirbnbなどといったいわゆる「Digital Disrupter」と呼ばれている企業だと神岡氏は紹介します。「これらの企業は顧客の目線に立ち、従来のタクシーやホテルの概念を超えた新しいビジネスモデルを作ることで、顧客に大きな満足を与えることに成功しました」

 

神岡氏は組織におけるCDOの必要性について、海外の例を挙げ、こう述べました。「もともと企業においては、ITやマーケティングに関わるCIO(Chief Information Officer)やCMO(Chief Marketing Officer)と呼ばれる人たちがデジタルへの対応も担っていました。ところが、組織のあらゆる活動がデジタルに関係することで、たとえばワークスタイルなど働き方にもデジタルへの対応が求められるようになりました。そういったことまでも、CIOやCMOの責任の範疇に含めてしまうことは不可能です。そこで必要になったのが、組織の中でデジタルに関わることを専門に担当するCDOというリーダーです」。企業のみならず、政府や行政に関わるサービスのデジタル化も大きなトピックになっているようで、「すでに世界の政府の24%にCDOがいます」とのこと。

CDOはどういった役割をもつのか
CDOに求められる資質とは

 

 

 神岡氏は、CDOが組織の中で担う役割には、大きく次の3つがあると紹介しています。1つめは、「デジタルを組織の中にどう取り込んでいくかを考えること」。これまでのビジネスプロセスでは、まずビジネス戦略を決めてからIT戦略を決めていました。しかし、デジタルの場合は、Digital Disrupterの成功例に見られるように、ビジネスと一体で戦略を考えなければいけません。デジタルがあるという前提で、サービスを考えるのです。2つめは、「そもそも今の組織やビジネスは、このままのやり方でいいのか、再定義する必要があるのではないかということをデジタルの視点で考える「Digital Transformation」と呼ばれる取り組み」。3つめに神岡氏が挙げたのが、「デジタルに対応する人材の教育や発掘」です。他にも、「外部企業とパートナーシップを結んでデジタルへの対応を促進したり、新ビジネスに取り組むためのエコシステムを構築するといったことも、CDOに求められる能力になる」と説明を加えます。

 

 神岡氏はCDO Club Japanの必要性として、ノウハウを共有する人材同士が交流する場があることは非常に重要だとし、「そういった人たちがチームCDOとして集まって自分たちの組織を活性化したり、顧客や国民、市民に対して、高いレベルのサービスや価値が提供できるような仕組みができればといいと思っています」と今後の抱負を語りました。

一橋大学 商学研究科 教授 工学博士
CDO Club Japan 顧問

神岡 太郎


CMOやDigital Transformationに関心をもつ。国際CIO学会会長、政府情報システム改革検討委員会委員(総務省)、高度ICT利活用人材育成推進会議座長(総務省)、トレーサビリティ・サービス推進協議会座長(国土交通省)を歴任。『マーケティング立国ニッポンへ』(日経BP社)他に論文多数。

特別ゲスト講演

 

デジタル化推進により統計を高度化
 より実効性の高い政策立案へ

参議院議員 (現:文部科学大臣) 林 芳正

 

 

 昨今、GDP(国内総生産)などの統計が、社会の急速な変化を把握し切れていないとの指摘があります。デジタル化推進も含めて統計を高度化し、より実効性の高い政策立案に役立てるために何をなすべきか。自由民主党政務調査会の新経済指標検討プロジェクトチームは、こうした問題意識のもとに協議を重ね、今年5月に提言をまとめました。特別ゲスト講演では、提言の内容について同チーム座長の林氏に講演いただきました。

デジタル化で集計作業前倒し
統計精度の向上に民間のビッグデータ活用も

 

 

 同チームが取りまとめた提言の柱は、「統計手法の改善」「新たな統計基準の整備」「GDPを補完する指標の検討」「統計作成・活用基盤の構築」の4つです。

 

 1つ目の「統計手法の改善」については、経済実態をより的確にとらえるための策を検討しました。林氏は、四半期ごとに出すGDP速報値について「一次速報でプラスだった数値が、二次速報ではマイナスに変わる場合もあります」と指摘。数値に差が出てしまう原因として、GDPに影響を与える財務省の「法人企業統計調査」の集計が一次速報のあとになるためだとして、「デジタル化などにより、一次速報に間に合わせられる可能性はあるのではないでしょうか」と作業を前倒しできるとの考えを示しました。

 

 GDPは、この法人企業統計調査を含むさまざまな調査結果を加工・編集してとりまとめています。林氏は「これら各調査の改善により、GDPの精度はさらに高められる」と主張します。たとえば、家計調査では、国の調査に加えて、民間企業が持つ顧客のビッグデータなど新たなデータ源の活用により、精度の向上が期待できるといいます。

 

「スポーツや文化、レジャーといったサービス分野の統計に関しては整備が遅れている」と林氏。「たとえば映画館の売上データはあるが、ネット上の動画サイトなどでコンテンツそのものが生み出す収益の統計はない」と述べ、サービス分野に関する基礎的なデータの収集に力を入れて実態を把握する必要があるとしました。

今後求められるのは「コーディネーター」
データ関連人材の育成を強化へ

 

 

「新たな統計基準の整備」では、GDPなどを計算する際の国際基準、SNA(System of National Accounts)の改定が行われる際には、国として積極的に参画すべきだと主張します。「我々の知らないところで決められた基準をそのまま受け入れるのではなく、我が国の経済の実像を国際基準に常に反映していこうということです」

 

 SNAの国内版であるJSNAの次回改定時には、欧米と同じく、映画やアニメといった娯楽作品の原本(オリジナル)への支出を、GDPの構成要素である投資に含めるべきだといった内容も、提言に盛り込まれました。林氏は「原本にどれだけのお金を投入したか、細かく把握する統計が整備されていない。基準に入れるだけではなく、数字としてしっかり把握する仕組みが必要」とも指摘しました。

 

「GDPを補完する指標の検討」の説明で、林氏は「年収が1千万円を超えると、それ以上に年収が増えても幸福感はあまり上がらないとも言われています。GDPの豊かさがイコール幸せとは限らないのかもしれません」と問題を提起。暮らしの11分野(住宅、収入、雇用、共同体、教育、環境、ガバナンス、医療、生活の満足度、安全、ワークライフバランス)で豊かさを比較できるOECD(経済協力開発機構)の指標「Better Life Index(BLI:より良い暮らし指標)」を紹介するとともに、「GDPだけに頼って政策全般を立案するのはリスキーだということで、これの日本版を作ってはどうかと提言しました」と述べました。

 

 最後の「統計作成・活用基盤の構築」では、ここ10年で、農林水産統計職員が85%減少するなど、国の統計関係職員は約6割減少し、統計を支える基盤が脆弱化していると指摘。今後は、CDOを含むデータ関連の専門家を増やす必要があると説くとともに、「データの収集自体はアウトソーシングも可能。これから必要な人材は、集めてきたデータを加工・分析して政策提言につなげるという、いわばコーディネーター的な役割の人」と、求められる人材像を示しました。

 

 林氏によると、現在、統計に関連する大学の学部は、滋賀大学データサイエンス学部のみ。「今後は、各大学でのデータサイエンスを専門とする学部やコースの設置を促進するとともに、工学部など他の理系学部でも統計の基礎的なリテラシーが習得できるような教育を進めるよう提言しました」と述べ、教育の重要性を指摘して講演を締めくくりました。

参議院議員

(現:文部科学大臣)

林 芳正


1961年生まれ。元農林水産大臣、元内閣府経済財政政策担当大臣、元防衛大臣。東京大学法学部卒。三井物産等で勤務後、渡米。米上院ウイリアム・ロス議員の下、マンスフィールド法案等を手がける。ハーバード大学ケネディ行政大学院修了。1995年の参議院議員選挙(山口)で初当選、現在4期目。2012年自民党総裁選挙に出馬。著書に『国会議員の仕事』(中央新書・共著)など。

来日特別講演

 

CDO Clubの活動と役割
 日本企業へのアドバイス

CDO Club CEO David Mathison 氏
CDO Club Japan 代表&創立者 加茂 純 氏

 

 

 

 近年、欧米では急速にCDOが注目され、その人数も増加しています。グローバルなビジネス視点からの示唆とともに、CDO Clubの活動と役割、日本企業へのアドバイスについて、CDOフォーラムにご協力いただいている、CDO ClubのCEOであるMathison氏とCDO Club Japanの代表&創立者である加茂氏に講演いただきました。

欧米に遅れることのないようCDO Club Japanを設立し
アジアでの主導を目指す

 

 講演の冒頭では、Mathisonが立ち上げたCDO Clubの経緯などにつき、加茂氏が紹介しました。Mathison氏は2010年頃に世の中でCDOが必要とされていることを認識し、2012年にニューヨークでCDO Clubを設立しました。CDO Clubは現在、世界各地でCDO Summitを開催するなどして、CDOの支援を行っています。

 

 次は、今年5月に設立された、CDO Club Japanの設立の経緯についての紹介です。じつは、日本におけるCDO Clubの設立には、時期尚早という意見もありました。しかし、現在CDO Club Japanの顧問となっている一橋大学商学研究科の神岡太郎教授のアドバイスを受けるなどした加茂氏が、世界に遅れることはできないとの思いでMathison氏の説得などに当たりました。

 

 CDO Club Japanの最初の目標は、CDOの育成、社外パートナーとの協力が必要なCDOがパートナーと出会う場の提供です。2018年1月26日には日本で最初のCDO Summitを開催し、以後年2回のペースで開催するといいます。そして、CDO Club Japanが主導してアジアへの展開を図り、2018年8月にはシンガポール、その後は香港などにおいてCDO Clubを設立することを目指しています。

破壊的な経済からの企業防衛のために
世界で必要とされているCDO

 

 

 CDO Club の創立者であるMathison氏はCDOについて語る場合、以下の3つのポイントがあると言います。

 一つは「今世界中でCDOが増えている」ということです。昨年には、同氏が把握しているだけでも、CDOの人数は2,000人を超えています。次は「CDOからCEOになる人が増えている」ということです。ここ数年で100人以上のCDOがCEOに昇進しました。そして最後は「Chief Digital Officerの重要度がChief Data Officerと同じくらいに増している」ということです。Chief Digital Officerはオンライン経済の主役となっています。この傾向は、企業だけでなく政府や州政府、各自治体でも同様で、さらには、米国だけでなくヨーロッパやアジアなど、どの国や地域においても起こっています。

 

 Mathison氏は、今CDOが必要とされている主な理由として以下を挙げました。

 

「旧来の経済に破壊を起こしているシェアリングエコノミーにおいては、新しい企業が破壊行為を行っているのではなく、個人の力が破壊行為を行っています」。例えば、TV業界を苦境に陥らせた原因にYouTubeが挙げられますが、そのコンテンツは企業が作っているのではなく、私たち個人が作っています。そして、YouTubeが収益を上げています。これは他のビジネスにおいても同様です。「このような破壊的な経済から企業を防衛するためにCDOの力が必要なのです」

 

 

 

 また、2008年に国際金融危機が原因となり、危機管理などのための要員としてChief Data Officerが爆発的に増えました。現在、Chief Digital Officerは約2,000人、Chief Data Officerも約2,000人ですが、Chief Digital Officerは今後2~3倍に増えると見込んでいます。

 

 Mathison氏は、CDOに関連する役職として、デジタルの改革を担当するChief Digital Officer、データの管理を担当するChief Data Officerのほかに、Chief Analytics Officerを挙げます。「Chief Analytics Officerは、データの解析を牽引する役割を担います。この3つの役職が社会を牽引する立場となるのです」。そして、「デジタルは戦略であり、ITに留まるものではない」というマッキンゼーの言葉を紹介しました。

 

 このあとMathison氏は、日本の企業におけるCDOの数がごくわずかであると述べるとともに、米国を中心とした有名企業数十社のCDOの氏名と顔写真を紹介しました。ここで紹介されたCDOの所属企業や氏名などは、CDO Clubのウェブサイトで紹介されています。

 

CDO Club
CEO

David Mathison


Mathison is the world’s leading authority on Chief Digital and Data Officers, and has been quoted recently by American Banker, CIO.com, CIO Journal, CIO-UK, CMS Wire, CNBC, Computer Weekly, Computerworld, Deloitte, Diginomica, EdTech Magazine, eMarketer, FedTech Magazine, FierceCIO, Financial Times, Forbes, Guardian, Huffington Post, I-CIO, McKinsey & Company, Media Post, MIT Sloan Management Review, VentureBeat, Wall Street Journal, and ZDNet, among others.He was previously founder and Managing Director of the Digital Media practice at Chadick Ellig, a premiere executive search consultancy named by Business Week as “one of the world’s most influential headhunters”.Mathison’s book, BE THE MEDIA, was featured by the AP in the NY Times after he pre-sold over 5,000 copies in 11 days via his web site, Twitter, and Facebook.He has given keynote presentations everywhere from Columbia University to the United Nations (3 times in 2010), from Austin, TX (SXSW) and Amsterdam, Holland to Zagreb, Croatia.From 1999-2001 he was founder and CEO of the Kinecta Corporation where he raised $30 million in under 2 years. Kinecta was acquired and is now part of Oracle (NASDAQ: ORCL).From 1994-1999 Mathison was Vice President with Thomson Reuters, the world’s largest news agency, where he pioneered online content syndication.Mathison earned his Masters degree from Columbia University in 1995

 

CDO Club Japan
代表&創立者

加茂 純


東京大学理学部情報科学科卒。イリノイ大学大学院コンピュータサイエンス学科AI専攻修士。電通に入社し、インテル、マイクロソフト、アップルコンピュータの日本進出と事業拡大戦略を担当。電通USA ロスアンゼルス支社にてデジタルコミュニケーションズラボを創設、チーフストラテジスト就任。電通退社後は、米HarmonicCommunications社を創業しアジアパシフィック地域統括担当副社長。PwCコンサルティング戦略部門ディレクターに就任し、マーケティングエクセレンスグループを創設し代表となる。2007年にCMOワールドワイド株式会社を設立し代表取締役に就任。2015年、PwCコンサルティングのアドバイザーに就任。

スポンサー講演

 

デジタル変革の潮流と
 企業が今後取り組むべき論点

PwCコンサルティング合同会社 パートナー デジタルサービス日本統括 松永エリック 匡史 氏

 

 

 

 経営戦略の策定から実行まで総合的なコンサルティングサービスを提供するPwCコンサルティング合同会社は、世界157カ国、22万人以上を有するPwCグローバルネットワークの幅広い専門性やナレッジを活用することにより、複雑化する経営課題の解決をグローバルレベルで支援する企業です。日本でのデジタルサービスを統括する松永氏は、もともと専門教育を受けたプロの音楽家であり、かつコンサルティング業界でも豊富な経験を持っています。ここでは、デジタル変革に対して企業が取り組むべき論点について講演いただきました。

非連続的な変化が
イノベーションをクリエイトする

 

 CDO Club創立者Mathison氏の講演を受け、信念が確信に変わったと話を切り出しました。Mathison氏によれば、CDOの機能を最初に行使した企業は音楽配信サービスのNapsterであり、最初のCDO採用はMTVであると語った部分です。松永氏によれば、これはCDOの本質的な機能が”イノベーション”にあることを意味していると語りました。Napsterは、音楽コンテンツの権利に対しての革命であり、MTVは音楽の聴き方そのものに対する大革命でした。しかしここで注目すべきは、NapsterもMTVも、最新のテクノロジーを駆使したサービスではなく、本質的なイノベーションを既存の技術で実現した事例であると。つまり、イノベーション=技術ではないという点が重要であると力説しました。

 

イノベーションを起こすのに重要なのは、非連続的な発想です。アーティストの非連続的な発想として有名アーティストであるデビッド・ボウイが2002年に“近い将来、音楽は水のように消費される時代が来る”と、現在の音楽配信サービスのフリーミアム時代の到来を直感的に予測した事例をあげました。アーティストは事例ベースの連続的な変化を発想するのではなく、非連続的な直感的な発想からイノベーションを起こし続けるのです。この直感的な発想が、CDOに求められる一番重要なケイパビリティーなのです。

イノベーションを起こす
直感を得意とするミレニアル世代

 

 

「直感的な発想は、ミレニアル世代が得意としている」と松永氏は見解を述べます。本格的なパーソナルコンピユータの時代をApple IIとすると1977年、そして商用インターネットの開始である1987年を背景とし、幼少期からパーソナルコンピュータでインターネットを使える環境にいる事ができた最初の世代(デジタルネイティブとも呼ばれる)をミレニアル世代と呼んでいます。1年単位で厳密に定義する必要はないと思うのですが参考までに、米国ピュー・リサーチ・センターによればミレニアル世代は1981年から1996年に生まれた人々と定義されていますが、だいたい1980年以降に生まれた世代と定義している方が多いようです。要は、物心がついた時からコンピュータとインターネットが普通にあり恐怖感、違和感なく使いこなす世代というわけです。

 

ミレニアル世代は、モノにはお金をかけずサービスにお金をかける、バーチャル世界でのインタラクティブなコミュニケーションを好む、バーチャルでの人とのつながりを重視しリアルだけでは満足できなくバーチャル世界でシェアしないと不安でしかたない、などの特徴に加え、直感的に思ったことを重視し、我々がもつ既存の価値観に縛られることを嫌う傾向があると考えられています。その結果としてミレニアル世代は、日本の典型的なよい学校を出てよい会社に入って安定するという従来の帰属意識がなく、自らの価値観でサービスを生み出し起業したりするのです。ミレニアル世代の出現は大きな出来事であり、現にミレニアル世代から生まれたAirbnbやUberが、既存の業界を脅かしています。

 

 松永氏は、「イノベーションは産業全体で起こしていくのではなく、これからは企業が起こしていかなければいかなくなる。そしてイノベーションを牽引する重要な役割を担うのがCDOであり、この役割はCEOにも求められてきている。事実、Mathison氏によれば2017年には100名クラスでCDOがCEOになっていると言います。これはCEOとCDOの役割がイノベーションをキーワードに急接近している予兆と言えるでしょう。今後は企業にも個性があるようにCDOにもイノベーションを起こすための個性が必要になっています。イノベーションを企業でどう起こしていくか組織的な議論も必要となり、CDOを汎用的な定義付けをすることは非常に難しい。」と語ります。そうした中でPwCのデジタルトランスフォーメーションの事例として、PwCデジタル部門がイノベーションのフレームワークとして取り組んでいるBXT(ビジネス、エクスペリエンス、テクノロジー)についての説明がありました。

BXTは、クリエイティブな発想のチームを中心にエクスペリエンスの担当をし、旧来からPwCの強みであるビジネスと最新テクノロジーと融合させることによってイノベーションを牽引するというものです。PwC全体として取り組んでいるデジタルトランスフォーメーションの中核となるフレームワークで、デジタルチームによりアシュアランス、TAX、ディールズといったコンサルティング以外のPwCにも経営層から変革を仕掛け、PwC全体としてイノベーションの中核となっていく取組です。

最後に、今後はイノベーションや企業変革のキーマンとなるべきCDOがさらに注目されてくるであろうという見通しを示し、講演を締めくくりました。

PwCコンサルティング合同会社
パートナー デジタルサービス日本統括

松永 エリック 匡史


バークリー音学院出身のプロギタリストという異色の経歴を持つアーティストであり、放送から音楽、映画、ゲームから広告まで、幅広くメディア業界の未来をリードするメディア戦略コンサルティングのパイオニア。2017年よりPwCコンサルティングにてデジタルサービス日本統括としてデジタル時代のイノベータとして活動。