2018/09/19 (  水 )

CMO Forum 2017 開催レポート

CMO Forum 2017 開催レポート

 

2017年9月12日、東京・JA共済ビル カンファレンスホールで『CMO Forum 2017』を開催しました(主催:株式会社ビジネス・フォーラム事務局)。4回目となる今回は「CMOが創る、顧客と企業の新たな接点のデザイン」がテーマです。多様化する『顧客接点』と複雑化する『顧客ニーズ』に、CMO(Chief Marketing Officer:最高マーケティング責任者)は、いかに役割を担うべきか。この日の講演やパネルディスカッションの模様を紹介します。

Main Sponsor Session :最適な“顧客接点”を創り出す、“AI活用と顧客理解”

顧客を知り、顧客の期待を超える、優れた体験を提供するためのマーケティングプラットフォーム~AI・機械学習・ディープラーニングで顧客嗜好・タイミング・行動を予測する~

株式会社アクティブコア 代表取締役社長  山田 賢治

 

 

マーケティングにAIを活用、顧客への効果的なアプローチを実現

 AI(人工知能)が急速に進化する中、マーケティング領域でAIを活用しようという動きが出始めている。企業のマーケティングを支援するアクティブコア代表取締役社長の山田賢治氏が、各企業に蓄積された顧客データをAIの活用により、顧客の嗜好に合わせ、適切なタイミングで効果的なアプローチを実現することで、よりよい顧客接点を創り出すためのポイントを語った。

コンバージョン(成約)率が1%程度から6.6%に向上

 

 

 AI(人工知能)が急速に進化しています。先進的な企業では、このAIをマーケティング領域に活用しようという動きが始まっています。機械学習とは確率・統計モデルに基づくパターン認識のことです。与えられたデータからいくつかのパターンを認識・学習し、未知のデータを分類・予測します。機械が予測した結果を正解と比較し、その誤差からモデルを更新していきます。よく使われるアルゴリズムの1つがニューラルネットワークです。AIの多くはニューラルネットワークを使っています。ディープラーニングもAIの手法の1つです。ディープラーニングはニューラルネットワークを幾層も重ね、データを学習して特徴を自動的に抽出します。これがAIにおけるブレークスルーとなり、予測精度は大幅に向上しました。

 

 マーケティング領域で進んでいるのは、企業が構築してきたプライベートDMP(データマネジメントプラットフォーム)に格納している顧客データ、広告データ、Web行動履歴、売り上げデータなどを分析・可視化し、ターゲット顧客を抽出して広告を掲示したり、メールやアプリで情報を配信したりレコメンドするプロセスに、機械学習やディープラーニングを取り入れたりする取組みです。そうすることで顧客の理解を深め、最適な顧客接点を創り出そうという試みが始まっています。

 

 

 当社が手掛けている事例を幾つかご紹介します。1つは19,000人ほどのデータの中から、購買・コンバージョン(成約)しそうな顧客を予測し自動でセグメントする取組みです。Web行動履歴から資料請求につながる特徴を自動学習して学習モデルを作り上げ、学習を重ねてセグメントの精度を向上します。このモデルをBtoBの販促に活用したところ、送信したメールの開封率は54.7%に達し、コンバージョン率(資料請求)は通常1.0~1.2%のところ6.6%まで向上しました。

 

 メールの配信時間の最適化も図っています。多くの場合、メールは配信後、数時間以内に開封されますが、それ以外の時間で開封する顧客もいます。メールを開封した時間、クリックしてウェブサイトにアクセスした時間、コンバージョンした時間などから顧客を自動分類。機械学習により配信時間を最適化します。従来12時に一斉配信していたものを1時間刻みにして個別配信したところ、開封率は19.1%から29.7%に上がりました。メールの開封率が上がればアクセス率、コンバージョン率も上がります。その結果をまた学習して次回以降の配信をさらに最適化しています。

AIは顧客の嗜好をあぶり出すのに有効なツール

 

 

 レコメンドの最適化も進めています。レコメンドは性別、年齢、居住地、閲覧履歴、購入履歴など様々な要素が関係します。このレコメンドエンジンにディープラーニングを組み込んだアルゴリズムを実装しました。ディープラーニングで購入に相関の高い特徴量を自動で抽出してレコメンドする商品を発見します。その結果、マッチング率(レコメンド予測と実際に購入した実績データを比較)は従来の64.3%から78.0%に、コンバージョン率(レコメンド表示のリンクを実際にクリックしたユーザが該当商品を購入)は2.3%から2.8%に向上しました。

 

 ABテストの自動化にも取り組んでいます。メール配信のABテストを自動化した事例を紹介します。 メール配信の対象ユーザの20%にABテストを実施して、その結果を統計モデルからどちらが効果があったかを自動で判定します。残りの80%に効果が高い方のメールを送信します。この一連の作業をAIで自動化します。 これまでテスト、検証後に改善し、実行していた作業を1サイクルでテスト、検証、実行と完結させることができます。

 

顧客接点に合わせたアプローチも自動化する取り組みを進めています。
ウェブサイトを閲覧後に店舗で購入するという事例も増えてきています。行動履歴データを分析し、メールやLINEで販促を行い、店舗に誘導するなど顧客接点の最適化を図っています。

 

 機械学習・ディープラーニングを活用したプラットフォームを構築する上でのポイントは、第1にデータを顧客軸で整備・統合し、すぐに取り出せるようにすること、第2に学習モデルを複数持ち、最適なモデルを選択できるようにすること、第3に顧客の嗜好やタイミングに合わせることです。マーケティング領域においてAIは今後、画像認識、音声処理、データ分析・予測、自然言語処理と複数のディープラーニングの出力を統合して予測していくようになると考えています。顧客の嗜好、志向、思考は一人ひとり異なります。タイミング、興味・関心、ステータスなどをあぶり出していく上でAIは大きな役割を果たすものと考えています。


株式会社アクティブコア
代表取締役社長
山田 賢治


パッケージベンダーにて顧客サポート・開発部門に従事。データベースカーネルの開発、海外勤務を経験後、 データウエアハウス(DWH)事業の立ち上げ、BIシステムの導入・設計・開発に携わる。大手企業のDWH提案・設計・開発・構築を担当。インターネット系ベンチャーの技術部長を経て 2005年にアクティブコアを設立、代表取締役社長に就任。アクティブコアの経営全般および全製品のエンジン設計・開発を担当。特許技術発明者。

下記リンク先より、株式会社アクティブコアのe-bookをダウンロードしていただけます。

e-book:
「顧客タイミングとステータスに合わせたマーケティングとオートメーション」

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