2021/11/17 (  水 )

Sales Transformation 2021 開催レポート

Sales Transformation 2021 開催レポート

Sales Transformation 2021

変わる。”営業が生み出す価値”

~新たな顧客価値と営業組織改革・マネジメントの最前線~

主催:株式会社ビジネス・フォーラム事務局

ゴールドスポンサー:株式会社ジャストシステム

シルバースポンサー:株式会社セルム

開催趣旨

本フォーラムでは、激動の新時代を迎えた今、企業が持続的に成長していくために、変化が求められる「営業が生み出す価値」を大きなテーマに考察してまいります。自社とって、顧客にとって、最適な営業モデル・営業組織へと進化していくにはどうすればよいのか。営業領域における有識者の視点や、今まさに営業変革に挑戦されている先進企業の視点から、営業が価値を創出するための条件に迫り、競争時代に打ち勝つためのヒントをご提供いたします。

参加者の属性

≪業種≫
≪部門≫
≪役職≫
 

基調講演【営業×未来】

企業がめざすべき営業の在り方
~価値を生み出す、営業スタイル・組織・マネジメントの要諦~

東京工業大学大学院 特任教授
東北大学未来型医療創造卓越大学院 特任教授
レジェンダコーポレーション 取締役
北澤 孝太郎

「基調講演【営業×未来】」の様子
「基調講演【営業×未来】」の様子

最初に基調講演として北澤孝太郎氏にお話しいただきました。人口減少やインターネットの普及で変化した、ニューノーマル時代の営業の現状と課題、どのように営業部門の変革を進めていくべきかなどについて、語っていただきました。

自分たちがやりたいことを実現する営業に変えていく

今、経済に影響を与える大きな変化が起きています、それは人口減少です。そのため需要が縮小してきたのです。このような時代には賢くならなければいけません。右肩上がりの時代は、皆と同じことをやっていれば自分も上がっていきました。しかし、右肩下がりになってきたときは、皆と同じことをやっていると下がっていきます。例えば終身雇用や年功序列は通用しません。「普通」はリスクなのです。

企業を取り巻く環境も変化しています。インターネットが普及し、お客様自身が簡単に情報を集られるようになりました。取引の主導権はお客様が握っているのです。これまでは、世の中の変化やお客様の希望などを感じながら、それらに応じることで利益を上げ、社会への貢献を考えていました。そのような時代は静かに過ぎていきます。

情報システムも、クラウドを使うなどで安く運用できるようになりました。デジタル人材を内製化して、ビジネスシーンに合わせたアプリケーションをアジャイルに実現していく時代になっています。これからの営業は、DXなどにより効率化できるところは徹底的に効率化して時間や労力を生み出し、お客様や時代、世の中の変化を強く感じながら、自分たちがやりたいことを実現していくことが重要になります。

変革を進めるためのルーティンを定着させる

これからの営業は、勘ではなくデータを使って顧客を育成し、確率を上げ、個人の力量ではなく組織の力量で戦うことが求められます。このような営業部門を作るには、まず核になる営業リーダーを育成することが重要です。リーダーは、効率を徹底的に上げながら、お客様と共感できる言葉を共有し、言葉をお客様へ伝えることができなければいけません。そして、変化を感じ取って後方に伝え、自分たちの製品やサービスに対し影響力を待たなければなりません。

次に必要なことは、やるべきことをやるための時間創出に向けたデジタルツールの導入です。営業がやることとデジタルツールがやることを明確化し、効率化を図ります。さらに、自分たちの思いから立てられる営業戦略と戦術を組織に落とし込み、ルーティン化し、定着させます。自分の思いを持つには、自らに問いを立てる力が必要です。日本の企業では、言われたことをそのままやっていることが多い。何でこうなっているのかを考え、ならばこうしようと考える、イノベーション的な考え方を定着させるルーティンが、非常に重要なのです。

東京工業大学大学院 特任教授
東北大学未来型医療創造卓越大学院 特任教授
レジェンダコーポレーション 取締役
北澤 孝太郎


1962年京都市生まれ。1985年神戸大学経営学部卒業後、株式会社リクルート入社。20年に渡り、通信、採用・教育、大学やスクール広報などの分野で常に営業の最前線で活躍。採用・教育事業の大手営業責任者、大学やスクール広報事業の中部関西地区責任者を担当後、2005年日本テレコム(現ソフトバンク)に転身。執行役員法人営業本部長、音声事業本部長などを歴任。その後、モバイルコンビニ株式会社社長、丸善株式会社執行役員、フライシュマン・ヒラード・ジャパン株式会社 VPなどを経て、現在に至る。営業幹部(役員や部長)や営業リーダー教育の第一人者であり、営業イノベーションなどの分野でも、研修やコンサル、パーソナルコーチなどに多くの実績を持つ。特に優れた営業戦略・戦術を導く「北澤モデル」は多くの企業で活用されている。

ゴールドスポンサー講演

営業利益率36%超の企業が実践する営業手法
~データの活用と、合理性を追求した営業活動の概要~

株式会社ジャストシステム
ソリューションストラテジー事業部
企画マーケティンググループ エキスパート
松木 俊之

「ゴールドスポンサー講演」の様子
「ゴールドスポンサー講演」の様子

2番目に、ゴールドスポンサー講演として、ジャストシステムの松木俊之氏にご講演いただきました。営業利益率36%超の企業を実現するにあたり、ジャストシステムが実践してきた営業手法の4つのポイントを説明していただきました。

数字の明確化と営業マネージャー数の最適化

営業利益率を上げるために重視したことは、いかに1人当たりの付加価値を出すかです。そのための営業手法のポイントは、「変化させる数字を明確にする」、「営業マネージャーは必要という常識を疑う」、「営業のやり方を個人任せにしない」、「無意識的怠慢を減らす」の4つです。

1つめの「変化させる数字を明確にする」とは、業績を伸ばすために、業績に関わるどの数字から変えていくのかを決めて施策を考えることです。営業の成果は最終的に売上という数字で現れます。売上を構成する要素には、量、確率、単価、期間があります。それぞれの数字を伸ばすために、仮説を立て、データを活用して調査、検証し、一つ一つを丁寧に変えていきました。

2つめの「営業マネージャーは必要という常識を疑う」とは、営業マネージャーをできるだけ少なくすることです。売上への直接貢献比率が低くなる営業マネージャーをできるだけ置かない方が、組織としての売上が最大化される傾向にありました。自律的に動け、高いスキルを持ち、営業マネジメントが不要な、営業のプロ集団を作ることに注力しています。営業マネージャーの仕事はそういう営業組織の育成です。

営業の仕組み化と無意識的怠慢の削減

3つ目の「営業のやり方を個人任せにしない」とは、属人化しやすい営業行為を、個人任せにせずに仕組み化することです。商談実施の前と後にミーティングを行います。ミーティングでは、自分で考える営業を育てることに主眼を置いています。行き当たりばったりで商談をするのではなく、何をしに行くのか、商談シナリオを事前に自分で立て、そのシナリオが正しかったかどうかを上長がチェックします。営業のマニュアル化も行っています。マニュアル化で必要な要素は、提案ストーリー、差別化、訴求ポイント、フェーズ構成、商談構成などです。そしてマニュアルは、トップセールスのやり方ではなく、全員が徹底してできる内容でなければいけません。

4つめの「無意識的怠慢を減らす」とは、何もしていない移動の時間を減らすことです。個人では怠慢と思ってはいないが、売上貢献、成果貢献の視点で見たときに、結果的に怠慢になってしまう行為を意識します。具体的には、社外に出る日、社内にいる日を分け、時間単位、1日単位の活動の質、効率化を進めて全体の質を向上させました。これらのポイントを10年ほど続けることで、1人当たりの付加価値を上げ、営業利益率36%超の企業を実現しました。

株式会社ジャストシステム
ソリューションストラテジー事業部 企画マーケティンググループ エキスパート
松木 俊之


1971年生まれ。2000年ジャストシステムにキャリア入社。前職からトータルして人事7年、営業4年、営業企画・マーケティング15年。BtoB事業のマーケティングとセールスの仕組み作りに従事。直近は「成長型営業支援クラウドサービス JUST.SFA」のプロダクトマーケティングを担当。

特別講演Ⅰ【営業×DX×顧客価値】

日立建機にみる、営業のデジタル変革
~DXで顧客価値を最大化する営業スタイルの実現~

日立建機株式会社
DX推進本部 DX改革統括部 統括部長
龍尾 信哉

「特別講演Ⅰ【営業×DX×顧客価値】」の様子
「特別講演Ⅰ【営業×DX×顧客価値】」の様子

3番目に特別講演Iとして、日立建機の龍尾信哉氏にご講演いただきました。顧客課題解決型の営業へシフトするために日立建機が行ってきた、デジタルを活用した変革の取り組みについて、語っていただきました。

めざす世界観を明示するためのデモンストレーションを作る

日立建機の経営方針は、バリューチェーン全体でお客様の課題解決をサポートしていくことです。この方針実現に向けた業務変革の狙いとしては、お客様の課題解決を最優先にして行動すること。それをCIF(Customer Interest First)と呼んでいます。CIF実現のための業務変革を目標に掲げ、DX推進本部を設立、改革案作成を進めました。

そこで気づいたことが、メンバーによって、持っているイメージや達成すべきと考えるレベルに大きな隔たりがあることです。そのため、アクションに基づく実証を行う方向に切り替えて、DXを推進してきました。その中で大きく2つのことに取り組んでいます。第1に、めざす世界観のイメージ化です。第2に、顧客接点でのCIF行動方法の実証です。

世界観のイメージ化では、実際に紙芝居によるデモンストレーションを作成しました。めざす世界で起こしたいドラマを明示することを目指し、シナリオを作って実際にストーリーのある絵を作成します。アクションの実行にメンバーを巻き込んでいくときに、最初に世界観のデモを見せて理解してもらいます。デモによってアクションの範囲を限定でき、よりスピーディーに実行できるようになっています。

商談のキーとなる情報をリコメンドするアプリケーションを活用

顧客接点でのCIF行動方法の実証では、行動に必要なデータを2クリックで素早く見ることができるアプリケーションを作成しました。営業活動は、営業スタッフの経験、能力によって非常にばらつきが大きいものです。CIF的な商談には様々な情報が必要になりますが、システム等から集めようとしても難しい。データを集めたとしても使い方が分からず、データ集めそのものを途中でやめてしまうケースも多々あります。

そこで、CIF的行動を実践している営業スタッフの、キーとなる行動のいくつかを抽出しました。例えば、お客様の古い機械だけではなく、新しい機械でも稼働状況が高止まりしているものがないかを見ます。それをキーとして会話を進め、工事現場のリソースが足りていないかもしれないと考え、レンタルの商談を進めるといった行動です。アプリでは、このような商談のキーとなる情報をリコメンドしてくれます。実際に営業所の若手に提供して検証したところ、複数のメンバーで複数件の受注を獲得でき、価値があるものと分かりました。実証したことで、本気で展開しようという機運が高まっています。関係する人たちがCIFに向かって本気になったことがまず大きな成果で、これがさらに次の大きな成果につながるものと期待しています。

日立建機株式会社
DX推進本部 DX改革統括部 統括部長
龍尾 信哉


1993年東京理科大学応用数学科卒業。同年、日立製作所入社。業務コンサルティング事業に従事。コンサルティング方法論の開発と、CRM(営業)分野を中心にお客様適用を担当。2006年所属事業部が日立コンサルティングとなり転籍。日立製作所のIT戦略部隊を経て2019年より日立建機。現在、DXによる改革推進を担当。

特別講演Ⅱ【営業×働き甲斐×デジタル】

中外製薬における、新たな時代の営業スタイル
~MR/デジタルのベストミックスと人財育成~

中外製薬株式会社 執行役員 営業本部長
日高 伸二

「特別講演Ⅱ【営業×働き甲斐×デジタル】」の様子
「特別講演Ⅱ【営業×働き甲斐×デジタル】」の様子

4番目の講演は中外製薬、日高伸二氏による特別講演IIです。変化する顧客へのデジタルを活用したアプローチや情報提供方法、営業人財育成とマネージャーの役割についてお話しいただきました。

MRとデジタルの融合をめざす

製薬業の営業職であるMR(Medical Representatives)は、顧客である医師との対面の営業活動を基本にしていました。しかしコロナ禍で対面は激減し、デジタルが主流となりました。そのため、MRを中心とした人員削減や、全国の営業所、オフィスの削減を行う会社も増えています。中外製薬は2030年に向けた新規成長戦略中の成長基盤の1つにデジタルを掲げています。バリューチェーンの効率化に限らず、顧客アプローチ、顧客のタッチポイントにおけるイノベーションを起こすためにもデジタルの活用を考えています。

その実践として、顧客ごとに異なる専門性の高いニーズと製品特性を見極めたチャンネルの使い分けの効率化のために、MR活動とデジタルの融合を進めてきました。融合の方法は4つあります。1つ目は、MRとデジタルを同時に活用するやり方。2つ目は、まずMRから医師に情報を提供し、先生方がデジタルで確認し、最後にまたMRと医師が話し合うやり方。3つめは、最初はデジタルで幅広く情報提供し、ニーズがある先生方をピックアップしてMRが訪問するやり方。4つめは、デジタルオンリーのやり方です。めざすのは、デジタルへの置き換えではなく、MRとデジタルの融合です。デジタルはこれからも進化しますが、変わらないMRの存在価値も必ずあります。

MRの働き方改革に重要なマネージャーの力量

働き方改革というと残業時間削減の話になりますが、やりがいを上げることこそが働き方改革です。MRのやりがいは、顧客である医師から頼られる存在になることです。そうなるには顧客ニーズの把握。すなわち顧客の本音を聞く力と解決力の2つが重要になります。さらに言えば、MRを育成するマネージャーの力量が重要です。

中外製薬ではMRのスキル評価と実戦でのスキルの応用に取り組み始めています。スキル評価では、聴く力、解決力にフォーカスし、ロールプレイングを行って評価しています。全国同じ視点、評価方法で、延べ約1500名のMRを評価してきました。MRの成長の鍵を握るマネージャーを鍛えていくことは一番大きな課題で、OJT強化研修を実施しています。希望者対象でやっているにも関わらず、ほぼ全てのマネージャーが参加し、どうやってMRを鍛えていくのか、課題感を持って取り組んできました。

国内の医薬品市場における営業を取り巻く環境は大変厳しく、変化も非常に激しくなっています。デジタル時代になってもMRの存在意義は不変で、絶対不可欠な存在です。今後さらにデジタルと優れたMRの融合が求められると考えています。

中外製薬株式会社
執行役員 営業本部長
日高 伸二


1987年 京都薬科大学薬学科卒業。同年 日本ロシュ株式会社入社。MR、本社プロジェクト、営業マネジャーを経験。2002年 中外製薬統合後、がん製品プロダクトマネジャーおよびがん領域グループマネジャーを経て09年オンコロジー製品政策部長。11年 オンコロジーユニット長。14年 執行役員 プライマリーユニット長。18年 執行役員 メディカルアフェアーズ本部長。20年 執行役員 営業本部長。

シルバースポンサー講演

これからの時代に求められる営業組織のあり方

株式会社セルム 執行役員
吉村 亮太

「シルバースポンサー講演」の様子
「シルバースポンサー講演」の様子

5番目に、シルバースポンサー講演として、セルムの吉村亮太氏にご講演いただきました。これからの時代に求められる営業組織のあり方や、変化を生み出す営業組織を作るポイントについて語っていただきました。

自ら変化を生み出す営業組織を作るための5つのケイパビリティ

これからの時代に求められる営業組織は、自ら変化を生み出し、変化を楽しむ営業組織です。変化が激しく、そのスピードが増す今だからこそ、変化に適応しようと考えるのではなく、変化の先頭に立つことを求められています。

自ら変化を生み出し、変化を楽しむ営業組織を作り出すために、5つのケイパビリティが求められます。1つ目は、明確な方向性と信念を持つリーダーの存在です。ここで言うリーダーとは、役割や立場に関係なく、何をめざすのか、どのような存在でありたいのかを明らかにし、自身の世界観を発信できる人材です。2つ目は、上下間の風通しの良さです。上下間で素直な意見、アイデアを言い合える自由な雰囲気を作ることです。3つ目は失敗に寛容な文化です。たとえチャレンジが失敗に終わっても、周囲から前向きに受け入れられると思える、心理的安全性が高い組織特性が必要です。4つ目は、社内外ネットワークのアクセスの容易さです。より多くのネットワークに簡単にアクセスでき、思考や意思決定において複眼的に考察できる環境です。5つ目は、人材の多様性です。専門性、経験、習慣等の内面的な多様性を混在させた組織体は、変化を起こしやすいと言えます。

組織を作るためのケイパビリティを獲得する3つの方法

変化を生み出し、楽しむ組織を作る5つのケイパビリティを獲得するには、3つの方法があります。1つ目の方法は、明確な方向性と信念を持つ理念型リーダーを育成することです。理念型リーダーに必要な要素は4つあります。経営理念を自分ごと化し、こうしたら良くなるという世界観を持つこと。自身と組織メンバーの内発的動機を高めること。理念を組織に伝導する方法として組織開発の理論とテクニックを知ること。常に可能性に目を向けることです。

2つ目の方法は、上下間の風通しを良くし、失敗に寛容で、個人の価値観や考えを共有し合える組織文化を形成することです。そのために必要なポイントは3つあり、トップの強烈な意思とリーダーシップ、先の先まで考えたシナリオに基づく取り組み、対話を通じたパーセプション(認識)の形成です。

3つ目の方法は、社内外ネットワークへのアクセスの良さと人材の多様性を持ったうえでの、外部人材の積極的活用です。人材ネットワークのプラットフォームを有効活用することで、社内外のネットワークにアクセスしやすくなり、人材の多様性を生み出すことが可能となります。

株式会社セルム
執行役員
吉村 亮太


大阪府生まれ。2001年に神戸学院大学経営学部卒業後、ビジネスコンサルタントに入社、営業管理職として組織変革のコンサルティングサービス及び教育研修サービスの企画営業に従事。医療系のマーケティング・プロモーション会社での新規事業開発責任者を経て、2009年セルムに入社。中部支社長、企画営業部部長を経て現職。本気の人材開発にこだわりをもち、経営リーダーの覚悟を問うプログラムや、研修にとどまらず経営リーダーを輩出する仕組みづくりや育成体系の構築などに携わる。自らもまたクライアント企業の次期経営者のメンターなどを行う。

特別講演Ⅲ【営業×組織改革×マネジメント】

V字回復を実現させた、学研の意識改革
~新たな事業・価値創出と組織の在り方~

株式会社学研ホールディングス 代表取締役社長
宮原 博昭

「特別講演Ⅲ【営業×組織改革×マネジメント】」の様子
「特別講演Ⅲ【営業×組織改革×マネジメント】」の様子

最後に特別講演IIIとして、宮原博昭氏にご講演いただきました。V字回復に向けた学研の取り組み、意識改革、組織の作り方などについて、語っていただきました。

内部環境に応じて進出先を選び事業展開

V字回復した企業は多いのですが、11年連続でという企業は多くはありません。19年連続で減収減益傾向が続いた状態から回復させるために重要だったものは、戦略、戦術、戦闘の構造でした。最初はハードランディングで改革を推し進めようとしましたが、その体力すら残っていなかったので、まずソフトランディングで内部の立て直しを行いました。劇薬はないので一つ一つ積み上げていく流れです。時間をかけて、当時の経営陣と意思疎通を図りました。改革案を10パターンぐらい考え、臨機応変に対応できるようにとスタートしたことでV字回復ができたのです。

学研は、出版、塾、学校、園、介護など、いろいろな事業に進出しているイメージがあるかもしれません。実はそうではなく、内部環境に応じて外部環境を選んで進出しています。1つの軸としては、少子高齢化への対応。つまり義務教育の児童生徒が減り、高齢者が増えていきます。このバランスを考え、医療福祉分野に進出したことが1つ。この医療福祉分野は営業部隊から生まれた新規事業で、まさに営業の価値の創出です。それから、もう1つの軸が教育の海外展開。子供が減っていくので、日本の教育だけにとどまらず、海外に進出していくため、コンテンツの作りも変えてきました。この2つの軸で進めています。どの事業もしっかりと学研のツリーになっているのです。

創業の精神を復活させ既存事業強化、新規事業創設とM&Aを繰り返して成長

次に経営層、リーダー、企業文化、組織作りです。創業精神からの離脱は各会社が抱えている問題ですが、非常に大事です。そこに目をつけ、失われていた創業の精神を復活させ、原点回帰を図りました。既存事業の強化をしつつ、人件費を考えながら新規事業創設を行ってきています。2011年から新規事業公募制度「学研G-1グランプリ」を開始しました。学研グループ全体で事業と人材を育てる取り組みです。

内部組織活性化では、若手・中堅クラスの社員が企業経営の中長期的課題に取り組み、具体的提言を行う擬似役員会「学研ジュニアボード」を開催してきました。新規事業は既存事業の中から生まれているので、人件費を負担できることが非常に大きなメリットです。これに加え、M&Aとのシナジー発揮が継続的な成長の大きな要因となっています。既存事業強化、新規事業創設、そしてM&Aを上手に繰り返して成長するアメーバ組織へと変えているのです。

株式会社学研ホールディングス
代表取締役社長
宮原 博昭


1959年生。広島県呉市出身。防衛大学卒業後、1986年株式会社学習研究社(現学研ホールディングス)入社。2009年同社取締役を経て、2010年より代表取締役社長。日販グループホールディングス株式会社社外取締役、公益財団法人古岡奨学会理事長、一般社団法人日本雑誌協会副理事長などを務める。趣味は野球と飛行機操縦。

Special Thanks for Sponsors!

ゴールドスポンサー

株式会社ジャストシステム

株式会社ジャストシステム

シルバースポンサー

株式会社セルム

株式会社セルム

企画者からの御礼

この度は「Sales Transformation 2021」の開催にあたり、
多くの方々にご視聴を賜り、誠にありがとうございました。

ご協力を賜りましたご講演者、協賛企業、関係者、そしてご参加者の皆様に改めて厚く御礼を申し上げます。

当フォーラムの内容から少しでも多くの気づきやヒントをお持ち帰りいただけていれば、企画者として嬉しい限りでございます。

また、開催後にはご参加の皆様から多くのご要望をいただいており、来年以降も営業に関わる皆様に向けたセミナーを企画予定でございます。乞うご期待くださいませ。

今後もビジネス・フォーラム事務局では、皆様の課題解決へのヒントや新たな気づきを得られる機会を企画し、情報発信を続けて参ります。

株式会社ビジネス・フォーラム事務局
プロデューサー 小林 建斗

※ご講演者様のご所属・お肩書は開催当時のものです。予めご了承くださいませ。